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ブログを書くときに注意すべき著作権

      2015/02/12

これまでもネット上で注意すべき著作権の問題について、バラバラと書いてきましたが、「ブログを書くときに注意すべきこと」という観点で、まとめてみました。

様々なサイトで著作権上の注意点について書かれていますが、ちょっと法的に不正確だったり、逆に正確なんだけどブログの実情を分かってなかったり。。
たぶん、ライトなブログを書いている著作権の専門家って、あまりいないんでしょうね。

一応、著作権業務をやっている弁理士ブロガーとして、ブログ実務的に役立つ観点で、情報をまとめます。

著作権法とは・・みたいな難しい話は、ここでは省きます。ターゲットはあくまでも「法律に詳しくないブロガーさん」ということで。

意識しない著作権侵害で、身を滅ぼさないように。

著作権

ブロガーの法的注意点

まずは注意すべき点について、ざっと列挙します。

  • フリー画像の問題
  • 被写体の権利(写りこみ、肖像権・パブリシティ権)
  • 引用の方法と範囲
  • リンクについて
  • 動画のエンベッド(youtube貼り付け)
  • まとめサイト、バイラルメディア、掲示板コンテンツ
  • 歌詞

うーん、ブログを書くに当たって注意すべき点、結構ありますね。

でもやっぱり、ブログで全世界に情報を発信するというのは、それなりにリスクのある行為です。
ここに挙げたくらいのことは、しっかり押さえておく必要がある。

特に最近は、ネットでのコンプラ意識が高いというか、炎上リスクも高くなっていますし。

上記の項目ごとに、注意点と、簡単な考え方を整理します。

 

フリー画像の問題

まずブログを書くに当たって最初にぶち当たるのが、画像をどこから持ってこようかという点。

別にブログに画像が必須なわけじゃないけど、やっぱりイメージ画像があると無いとでは、見栄えに差がでますよね。

そこで使われるのが、ネットに落ちているいわゆる「フリー画像」。


まず最初に知っておくべきことは、基本的には全ての画像(写真でもイラストでも)に、その写真を撮った人、イラストを描いた人の著作権があるということ。

その著作権者の許諾なく画像を使うことはできない。これが原則です。


あくまでも例外として、許諾がある場合に、許諾の範囲において、使うことができる。
それを使いやすくしてくれているのが、フリー画像を集めた画像集サイト。

しかしフリーという言葉にはちょっと語弊があって、なんでもかんでも自由に無料で使えるわけではありません。
フリーといっても、著作権が存在しないわけではないことに注意が必要です。

あくまで例外ですからね。サイトごとの「規約」を読むというくせはつけないといけない。


特に注意したい規約は、
・個人的な使用はOKだけど商用利用しちゃいけません
・使ってもいいけどクレジットの表記が必須です
・撮影者の許諾は取っているけどモデルの許諾は取ってません
・アダルト・ギャンブル系のサイトでの利用は禁じます
など。

特に、フリー画像だけどクレジットの表記を求めるものは結構あるので、しっかり注意して使用法を守りましょう。
許諾の範囲を超えて、ルール違反で使用するのは著作権侵害となります。


一つ気になるのは「商用利用」について。
いくつかのサイトで、個人的な使用はOKだけど、商用利用をするならライセンスを受けて金を払え、というものあります。

個人が書いているブログって、商用利用なのでしょうか。
多くのブログに、広告が張られていますよね。広告収入がブロガーに入るのかブログサービス運営者に入るのか、その額の規模もブログによって異なりますが、厳密に捉えるとそのブログサイトで収入がある以上は、商用利用だと捉えられる可能性はあります。

しかし、個人的なブログとして利用している以上は、実質的なリスクは少ないでしょうから、ここは個人の責任で使ってしまうことにリスクは少ないと考えています。

無料、商用利用可能、クレジット不要で、比較的安心して使えるのは、
足成ぱたくそ写真ACPhotockなど。


ブログ運営上の注意点としてまとめると

フリー画像について・全ての画像に権利があると思いましょう。
・画像検索などで拾ってきた画像を使うのは危険です。
・商用利用可能でクレジット不要なフリー画像サイトから画像を収集するのが無難です。
・その場合でも、利用規約は必ず一読しましょう。

 

被写体の権利(写りこみ、肖像権・パブリシティ権)

全ての画像に、写真を撮った人やイラストを描いた人の著作権があるのは、上で述べたとおり。

だったら、自分で撮った写真ならどう使ってもいいんですよね?撮影者の許諾さえ取れば、問題ないんですよね?
・・というのは間違い。

画像自体の権利とは別に、写真に写っているもの、つまり被写体にも権利が存在します。

典型的には人物の写真です。
人物の写真であれば、そのモデルさん自身に、写真を勝手に使われない権利が存在します。
有名人であればパブリシティ権、一般人であればプライバシー権や肖像権など。

人物の写真を使う場合は、より一層の注意が必要です。フリー画像集でも、モデルの許諾が得られているか(モデルリリース済みか)確認しましょう。


また、人物でなくても、写っているもの自体が著作物であれば、その撮影画像を使うにはその著作物の権利者の許諾が必要になります。

例えば、雑誌の記事を写真に撮って使うなど。
外の風景であれば、多少写りこんでいても問題にはなりませんが。


この辺は個人のブログで、どこまでギチギチと注意するかは難しいですが、

被写体の権利について・人物写真には注意する
・自分で写真を撮っても問題はあり得る

 

という点くらいは押さえておきましょう。

 

引用の方法と範囲

続いて重要なのが「引用」です。

全ての画像や文章等のコンテンツには著作権があり、許諾無く利用できないのが原則ですが、
法が認めた例外が「引用」です。

引用に当たる利用方法であれば、他人の著作物(画像や文章など)を許諾なくブログ上で表示することができます。


よく分からないけど、とりあえず出典を示しておけば引用になるんでしょ?
・・というのは違います。


著作物を引用して利用できる要件は
①公表された著作物であること
②その引用が公正な慣行に合致すること
③報道・批評・研究等の引用目的上、正当な範囲であること
の3つです。

この要件を満たさなければ、引用ではなく単なる著作権侵害となってしまいます。

①の公表された著作物であるというのは、そのままですね。
②の公正な慣行に合致しているという要件もあまり難しくなく、不当な改変を行わず、しっかり出典を示しておけば通常は問題ありません。(厳密には出典を示すことは引用の要件ではないのですが)

難しいのは、③の引用の目的上、正当な範囲かどうか。
これは、利用の目的、その方法や態様、利用される著作物の種類や著作権者に及ぼす影響の有無・程度などを総合的に判断されます。

・・と言ってもピンとこないですよね。

 

そこで、これを(Ⅰ)明瞭区分性と(Ⅱ)主従関係という要件で判断することがあります。

(Ⅰ)明瞭区分性は、引用する側とされる側とを明確に区別できるようにしましょうということ。
文章であれば「」で囲ったり、引用マークを使ったり。

(Ⅱ)主従関係は、引用する側のコンテンツが「主」で、引用される側はあくまで「従」ですよ、ということ。
典型的な悪い例は、別のブログの文章を丸っと転載して、それに少しだけ自分のコメントを加える。これは主従が逆転してしまっていますね。

ただし、主従関係は分量だけの問題ではなく、著作物の性質や引用の目的なども考慮されるので、実は判断が難しいことも多いです。
そもそも引用する必然性がないような目的であれば、どんなに分量として少ない利用でも引用とは認められなかったり。

 

ちょっとブログ実務的にまとめます。

まず文章を引用したい場合、

他人の「文章」を引用する方法・引用箇所が分かるように、「」などで囲みましょう。
・出典は示しましょう。(URLは有っても無くても良い)
・引用部分がメインにならないようにしましょう。

 
そんなに難しくないですね。

一方で画像の引用は、ブログにおいて引用と認められる例は限られています。
例えば、下記のような場合です。

他人の「画像」を引用できる場合の例・製品のレビューや批評をするときに、製品画像を表示する
・サービスのレビューや紹介をするときに、サービス画面や会社HPのキャプチャーを表示する
など。

 このような場合は、出所を示しておけばOKでしょう。


逆に引用と言えないのは、単なるイメージ画像として近いものを持ってきた、単なる賑やかしとしての画像、といった目的。
これは小さな画像一つであっても、メインのコンテンツを作るのに必要な目的とは言えないので、正当な範囲内ではないことになります。

 

※少しだけ、正確な法解釈を補足します。読み飛ばしてもOKです。

引用の要件は、様々な捉えられ方、紹介のされ方がされていますが、法律で定められている要件はあくまでも下記3つです。
①公表された著作物であること
②その引用が公正な慣行に合致すること
③報道・批評・研究等の引用目的上、正当な範囲であること

しかしこの要件のままだと判断が難しいため、判例で出された基準が(Ⅰ)明瞭区分性と(Ⅱ)主従関係の2つです。
この2つは、あくまでも判断のメルクマールであって、上記3要件との位置づけもはっきりしていませんし、元々の法律に忠実な3要件に回帰すべきという意見もあります。

また引用の必然性を独立した要件と見る見方もありますが、
これは上記3要件によれば引用の目的上正当な範囲か否か、上記2要件によれば主従関係に含めて検討されるものです。

しかし、感覚的に分かりやすいこともあって、引用の必然性を独立した要件として紹介するものも多いようです。

また、出所の明示義務は、引用の要件(32条)というよりは、48条により義務付けられるものです。


・・法的な正確性は少し置いておいて、
ブログ実務的に、分かりやすく要件をざっくりまとめると

引用の要件(ざっくり版)・公表されたコンテンツであること
・引用する必然性があること(報道、批評・レビュー、紹介など)
・主従関係(引用がメインにならないように)
・明瞭区別性(引用部分を明確に)
・出所表示(出典を示す)
の5つです。

 

リンクについて

リンクを張ることで、なにか直接的に著作権を侵害することはありません。
表記しているのは単なるURLとしての文字列ですからね。

昔はディープリンクや直リンクのマナーの問題もあったようですが、最近は聞きません。これは法的問題と言うよりはマナーの問題。


ただし、児童ポルノ動画であったり、明らかに著作権侵害と分かる違法アップロード動画へのリンクは、話が別。

このようなリンクは、違法行為の幇助として、法的責任が問われる可能性があります。

とはいっても、個人のブログが摘発される可能性は極めて低いです。
でもまあ、法的リスク+マナーの問題として、明らかな違法コンテンツと分かるところへのリンク・紹介は控えたほうが無難ですね。

リンクの注意点明らかな違法コンテンツを紹介するリンクは控える

 

動画のエンベッド(youtube貼り付け)

ブログにyoutube等の動画を貼り付けることができます。

これはタグ・コードによる埋め込みで、エンベッドとも言われます。
ブログのサイト自体で動画を再生することができ、アクセスが流出することもないですし、非常に便利。

これってぱっと見は、ブログサイト上で動画が再生できるため、複製権侵害とか公衆送信権侵害といった、著作権上の問題が気になります。

しかし、動画のエンベッドは、行為としては単にURL等のコードをブログに記載しているだけ。動画コンテンツを自分のサーバに複製しているわけでもないし、再生(送信)もyoutubeのサーバから行われます。

行為としてはリンクと同一視されるため、著作権上の問題は発生しません。
ただし貼り付ける動画が明らかな違法コンテンツであれば、リンクの件と同様の問題はあります。

なお、動画中にJASRAC管理音源が流れていて、ブログでの広告収入がある場合、JASRACから文句を言われる可能性は0ではないですが、多分気にしなくて大丈夫。

動画のエンベッド(youtube貼り付け)・動画のエンベッドはリンクと同じ。
・違法コンテンツの貼り付けはしない。

 

まとめサイト、バイラルメディア、掲示板コンテンツ

まとめサイトやバイラルメディアの問題ですが、丸パクりが駄目なのは論じるまでもないとして、どこまでがOKなのか。これは突き詰めれば引用の範囲か否かという問題に帰着します。

引用の所で紹介した考え方に沿って、やり過ぎないように気をつけましょう。

また、2ch等のコンテンツをまとめ等に利用する場合。これは結構複雑です。2chに書かれたものの著作権者は誰かという、難しい問題をはらみます。

これは厳密な要件や判断指針を挙げることは難しいのですが、これまでに培われた文化がありますので、空気を読みながら使用する分には、個人責任のもと、ある程度OKかなと考えています。

まとめサイト、バイラルメディア、掲示板コンテンツ・パクリはダメ、絶対。
・引用の範囲で紹介する。出所も示して。
・掲示板コンテンツは空気を読んで。

 

歌詞

ブログで歌詞を記載することについて。

歌詞の全文や大部分を許諾なく表示することは、著作権侵害になります。
しかし、ブログサービスによっては、利用者に代わって包括ライセンスを受けており、適法に歌詞を表示することができます。

・アメーバブログ
・Seesaaブログ
・textream
・Yahoo!知恵袋
・Yahoo!ブログ
・ライブドアブログ
などです。


それ以外のブログサービスを利用している場合は、引用の範囲内でのみ、歌詞を表示することができます。

1フレーズくらいの表示と、それへの批評コメント等、といった感じですね。

歌詞・歌詞の表示可否は、使用するブログサービスによる。
・ライセンスが無い場合は、引用の範囲で。

 

その他

後は、自分でブログに書く内容自体が、
・不当に他人の誹謗中傷をしたり、名誉毀損やプライバシー侵害とならないように
・自分が所属する企業等の秘密情報を書かないように
注意しましょう。

 

ずらーっと、注意点を書いていきました。

こんなにたくさん気にしていられない、という声もありそうですが、でもやっぱり最低限のルールは頭に入れてもらって、その上で楽しくブログを書いてください!

 - ブログ, 著作権

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