ソニーは12日、スマートフォン(スマホ)を持たなくても運動中に音楽などを楽しめるイヤホン型のウエアラブル機器を3月7日に発売すると発表した。米アップルが新規参入する一方、米グーグルがメガネ型の「グーグルグラス」の個人向け販売を中止するなど、どこまで市場が広がるか未知数な要素がある。しかし、ソニーは多様な商品を矢継ぎ早に投入、市場創出に力を入れる。
「オーディオ技術と、最新のセンシングやソフトウエア技術を融合させ、新しいスポーツ体験を提供する」。会見したソニーマーケティング・プロダクツマーケティング部の植松孝文氏は新商品の特徴をこう語った。
3月に発売する「スマートB―トレーナー」はランニング時の心拍数や走行ルートなどのデータを記録できる。目標より心拍数が低い場合、内蔵した音楽からテンポの速い曲を自動的に選曲し、走るペースを速めるよう促す機能を盛り込んだ。マラソン解説者のアドバイスも聞けるようにし、一緒に走っているような感覚でトレーニングできる。データ記録や音楽再生機能が一体で内蔵されており、ランニング時にスマホを携帯する必要がない。
重さ約43グラムの本体には心拍や加速度、全地球測位システム(GPS)など6種類のセンサーを内蔵し、心拍数や消費カロリー、走行距離、走行ペースなど11種類の走行データを計測・記録できる。内蔵メモリーは16ギガ(ギガは10億)バイトで最大約3900曲の楽曲を取り込める。電池の駆動時間は約5.5時間になる。オープン価格だが、店頭想定は2万7000円前後を見込む。
トレーニングを終えた後、ブルートゥース経由でスマホにデータを送信する。専用アプリで累積データをみてトレーニングのプラン作りに役立てられる。アシックスもトレーニング用アプリを提供する。
ソニーはスマートBトレーナーのほか、腕時計型やリストバンド型をすでに発売。メガネ型やゴーグルに簡単に取り外しできる脱着型も近く発売する。平井一夫社長は「消費者に何が最も響くかはわからない段階だけに、今は様々な挑戦の時期だ」という。腕、目、耳といったウエアラブル機器を取り付けられる体の部位に多彩な製品を送り出す「全方位作戦」で市場をけん引する考えだ。
米アップルが今春に腕時計型の「アップルウオッチ」を発売するほか、韓国・サムスン電子やLG電子はスマホと連携する腕時計型の販売を始めた。セイコーエプソンもメガネ型や腕時計型を商品化するなど、業界の垣根を越えた参入が相次ぐ。これまでのウエアラブル機器は運動中の心拍数や脈拍などを測る「活動量計」と呼ばれる機器が中心だった。ターゲットも肥満や運動不足を気にする中年男性が主だった。
最近では機能を増やす一方、ファッション性も高めたことで「平日でも混雑し、20~30代の若者の姿が目立ってきた」(ビックカメラ渋谷東口店)という。ビックカメラやヤマダ電機など、専用の販売スペースを設ける量販店も出てきた。
野村総合研究所は2020年に国内ウエアラブル機器市場は14年比約13倍の556万台に達すると予測する。ただ、米グーグルが隠し撮りに使われるなどプライバシーの侵害にあたるとの指摘を受け、メガネ型の「グーグルグラス」の個人向け販売を中止した。乱戦状態の中、積極的に商品展開するソニーがどう市場をけん引していくか。ウエアラブル普及のカギになりそうだ。
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