長谷川幸洋「ニュースの深層」
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「多様な働き方」を認める企業しか、もはや成長は見込めない

2015年02月13日(金) 長谷川 幸洋
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                                                                                                                 photo Getty Images

なぜ、いま「多様な働き方」が求められているのか。根本的な理由は企業が多様な働き方を認めないと、もはや成長を見込めないからだ。規制改革会議が2月12日午後、霞が関で開いた公開ディスカッションで、そんな実態があきらかになった。

 阪神・大震災から再建した製薬会社のケース

私は規制改革会議委員の1人として司会を務めたが、もっとも印象に残ったのは万協製薬の松浦信男代表取締役社長のプレゼンテーションである。万協製薬の経験は日本企業全般に通じる部分がある。その核心をお伝えしよう。

万協製薬はもともと兵庫県神戸市長田区に本社と工場があったが、1995年1月17日の阪神・淡路大震災で被災し全壊した。翌年、三重県多気郡多気町に移転し、松浦社長の下でゼロから会社を再建した。

「自分がやりたくないことは社員にもさせたくなかった」と語る松浦社長は「社員が生き生きと働ける会社」を目指して、残業時間の削減や有給休暇取得率の向上、職場ローテーション、社員同士の擬似ファミリー制度などユニークな試みと課題に次々と取り組んでいく。

社員同士の食事会や旅行に会社が数万円の補助金を出す擬似ファミリー制度は、社歴が浅い社員の高い離職率を「なんとか低下させたい」という思いで導入した。老若男女、職種も違う4〜5人で班を構成し、みんなで飲んだり遊んだりする。それで仕事もプライベートの悩みも相談できるようにした。

その結果、社員同士のコミュニケーションが高まって2007年に18.3%だった離職率は5年後の12年に4.7%にまで減少した。そんな活動が認められて、14年秋には「子どもと家族・若者応援団表彰」の内閣総理大臣賞を受賞した。

松浦社長が言う。

「移転した多気町には薬や化粧品の仕事に従事した人は1人もいませんでした。田舎の中小企業には性別、年齢、学歴など、いっさい選択できる余裕が初めからなかった。だからこそ『どうすれば社員が楽しく仕事に取り組めるか』を考えた。うちはパートも正社員も区別はありません」

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