ロシアと欧州の間に位置するウクライナでの戦火の拡大は、世界の安全を脅かしている。新たな合意を、実効性ある和平体制への一歩とすべきだ。

 ドイツ、フランス、ロシアとウクライナの4カ国首脳が会談し、ウクライナ東部での政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘について、今月15日から停戦に入ることなどで合意した。

 約16時間の徹夜の協議をへた合意と共同声明は、ウクライナの主権と領土保全を尊重しつつ、東部の自治権を拡大することなどをうたっている。

 これらの多くは、昨秋の停戦合意に盛り込まれながら、実現されずにきたものだ。今回も、詳細については意見の違いが残されており、本当に履行されるか不安は尽きない。

 しかし、紛争による死者は約5500人に達し、最近の戦闘で急増している。まず停戦を最優先し、今度こそ合意の実現に全力で当たってもらいたい。

 それには、まずロシアの責任が大きい。東部地域へのロシア軍の展開や親ロシア派への武器供与が米欧から批判されていたが、ほとんど改善されないまま今回の事態を招いた。

 ロシアが相変わらず合意の実行に誠意を見せないならば、国際社会は経済制裁の強化で対応せざるをえない。それは、国内経済が苦境にあるロシアにとって、さらなる打撃となる。

 米政府が示唆するウクライナ政府軍への武器供与も現実味を帯びてこよう。そうなれば米国とロシアの「代理戦争」の性格を帯び、世界の安全を不安定化させる。ロシアは本気で強硬策を転換するべきだ。

 ウクライナ政府にも、姿勢を改める重い責務がある。

 現在の政権を握る親欧米派勢力は、1年前の政変で親ロシア派のヤヌコビッチ前大統領を退陣させた。だが、その際に勢力の一部が暴力に訴えたうえ、さらにロシア語系住民の権利を制限する措置をとったことで、東部の住民の反発を招いた。

 その後もウクライナ政府は、武力による制圧に傾きがちで、東部の不信を解く努力が十分だったとは言えない。東部住民との共生をめざす対話に今度こそ真剣に取り組む必要がある。

 もとより不振だったウクライナ経済は破綻(はたん)の瀬戸際にある。国際通貨基金(IMF)はきのう、多額の金融支援を発表したが、そうした援助を生かすためにも国内の安定が欠かせない。

 今回の合意の意味はきわめて重い。不毛な紛争に終止符を打てるよう、国際社会全体で合意の実現を支えたい。