米軍基地建設のための作業が強行されている沖縄県名護市辺野古で、海上保安庁などの抗議する県民らに対する暴力まがいの行為がやまない。警備の名の下で、人々に危害を加えるのは許されない。
 
 米軍普天間飛行場(宜野湾市)移設のため、防衛省沖縄防衛局が海底調査再開に向けた作業を再開した辺野古沖では連日、カヌーの抗議団が繰り出し、作業を監視している。海保はその行動を制するように、カヌーを転覆させたり、潮の流れの速い外洋に引っ張っていって放り出したりした。命綱のパドルを取り上げて海に放り投げた、とカヌー隊は訴える。
 
 抗議団の訴えに海保は「やっていない」と否定した。しかし、女性カメラマンの抗議船に乗り込み、女性に馬乗りになった写真が先月二十三日、地元の琉球新報に掲載されて「安全確保のための適切な警備」と説明を変えた。
 
 基地予定地に隣接する米軍キャンプ・シュワブのゲート前でも、作業車両を止めようとする県民らが警官らともみ合いになり、けが人が続出。翁長雄志(おながたけし)県知事が県警と海保に対し、抗議する県民の安全に配慮してと申し入れた。
 
 翁長氏は、二〇一三年十二月の仲井真弘多前知事による埋め立て「承認」に法的瑕疵(かし)がなかったかどうかを検証する有識者の「第三者委員会」を今月発足させた。結果公表は七月以降になる見通しだ。
 
 翁長氏は瑕疵の有無にかかわらず、辺野古に新基地は造らせないと明言する。しかし、検証が遅れる分だけ、基地建設に向けた既成事実が積み上げられてしまいかねない。それが県民の心配だ。今もブイなどを固定するコンクリートが湾内のサンゴ礁を傷つけている。検証を急いでほしい。
 
 辺野古沖に新たな基地を建設する「県内移設」。それを拒む沖縄県民の意思は選挙結果でも示されて強固になった。安倍内閣は県民の思いに配慮し、せめて、第三者委が検証を終えるまでは作業を中止すべきだ。
 
 米軍キャンプ・シュワブのゲート前には今、県外からも大勢が駆けつけ抗議の声を上げている。カンパも寄せられている。辺野古での闘いはこうした県外の支援にも支えられている。
 
 県内の基地機能を集約し、耐用年数二百年ともいわれる新たな施設が造られれば、沖縄は半永久的に基地の島となってしまう。沖縄の基地の問題を沖縄の人々だけに任せず、日本全体の問題として考えていくべきだ。
 
 
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