人口の高齢化が急速に進む日本では、高齢化に即した医療体制の整備が急務だ。人口動態を踏まえれば、一定の地域ごとに、どのような機能を備えた病院がどの程度の数で必要かなどが、ある程度推計できる。それを無視して病院が設置されていれば医療資源の無駄遣いにつながりかねない。
こうした考えに基づいて、厚生労働省は病院の統合や再編を進めようとしている。そのための方策の一つとして、病院版持ち株会社とも言うべき新たな仕組みをつくる予定だ。同省の検討会がこのほど新制度の素案をまとめた。
素案のかなめは「地域医療連携推進法人(仮称)」という新しい法人だ。これが経営の司令塔となり、個々の病院を経営する医療法人などがこの新しい法人にぶら下がる形となる。新法人は一定地域内に必要となる入院ベッド数や医療機能に応じて傘下の病院の再編を進めるという。
だが、新法人によって意味のある病院再編が進むかどうかは疑問だ。新法人と傘下の医療法人の関係が明確でなく、各医療法人が新法人の方針通りに動くかどうか不透明だ。グループ方針と医療法人の行動が一体化するような制度上の担保が必要ではないか。医療法人が新法人傘下に入る利点も明確にしてほしい。
先進各国と比べ日本は人口当たりの入院ベッド数が多いと指摘されてきた。一定地域内に同じような機能を持つ病院が複数存在することも問題視されてきた。地域によっては医師や看護師の不足が顕著で病院の経営格差も大きい。
医療の質を上げるためにも、医療費を抑制するためにも、この状況を打開したい。新法人を核にグループ全体でヒト・モノ・カネ・情報を有効に活用できれば意義は大きい。
医療関係者の中には新法人への警戒感もあるようだが、今のままでは医療機関の共倒れも起こりうる。医療界はむしろ率先し、行政や地域も巻き込んで実効性のある具体案をつくってもらいたい。