スポーツ・科学
サポーター、キーパー論から八百長疑惑まで 「サッカー本大賞2015」受賞作品決定!
2015年2月11日(水)に「サッカー本大賞2015」(主催:カンゼン)受賞作品が発表された。サッカー本大賞は「良質なサッカー書籍が、日本のサッカー文化を豊かにする」というコンセプトの趣旨で2014年に設立された。
同賞は「日本でサッカーがナンバー1スポーツになり、世界に誇れるサッカー文化を築いていくためには、高い志と情熱を持って作られた良質なサッカー書籍がもっともっと多く世に出て、多くの人に読まれて欲しい」という思いが出発点となっている。
2回目となる今回は、ワールドカップイヤーであった2014年にふさわしく、非常に濃度の高い作品の中から受賞作が発表された。
<大賞>
『サポーターをめぐる冒険 Jリーグを初観戦した結果、思わぬことになった』
著:中村慎太郎
出版:ころから
【選考委員評(大武ユキ)】
Jリーグ観戦をきっかけにサポーターになった著者の心情の変化がみずみずしく描かれている。ここまで赤裸々にサポーターのことを書いた本はこれまでになかったように思う。著者がJリーグへの愛情を込めて書いたエポックメイキング的な作品。
<翻訳サッカー本大賞>
『孤高の守護神 ゴールキーパー進化論』
著:ジョナサン・ウィルソン
訳:実川元子
出版:白水社
【選考委員評(幅 允孝)】
単なるサッカーの話ではなく、各国の社会的背景やカルチャーも含めたうえでゴールキーパーを語った驚くほどの濃厚さを秘めた作品。昨今のサッカー界の中でゴールキーパーというポジションの在り方の変化がよくわかる。
<読者賞>
『通訳日記 ザックジャパン1397日の記録』
著:矢野大輔
出版:文藝春秋
【選考委員評(速水健朗)】
W杯後、いったん火が消えたザックジャパンだったが、本書でメモとして描かれたザックジャパンの舞台裏は多くの共感を集めた。代表での4年間を通して、著 者がメモ書きの重要性を認識し、日記の内容はどんどん濃く深くなっていく。本書刊行以後、代表監督の通訳という存在の在り方は大きく変わるはず。
惜しくも大賞を逃した優秀作品には、アギーレの戦術や育成論を取り上げた書籍、なでしこジャパンに注目した書籍などのほか、サッカーと人種差別などのディープなテーマ、八百長問題に対して「なぜそれが起こるのか?」という根本的な仕組みを綿密かつ学術的に明らかにした本など、興味深い本が並ぶ。
<優秀作品>
『アギーレ 言葉の魔術師』
著:小澤一郎
出版:ぱる出版
『礎・清水FCと堀田哲爾が刻んだ日本サッカー五〇年史』
著:梅田明宏
出版:現代書館
『蹴る女 なでしこジャパンのリアル』
著:河崎三行
出版:講談社
『サッカーデータ革命 ロングボールは時代遅れか』
著:クリス・アンダーゼン、デイビッド・サリー
訳:児島 修
出版:辰巳出版
『サッカーと人種差別(文春新書)』
著:陣野俊史
出版:文藝春秋
『Jの新人 Jリーグ新加入170選手の価値 2014』
著:川端暁彦
出版:東邦出版
『フットボールのない週末なんて ヘンリー・ウィンターが案内するイングランドの日常』
著:ヘンリー・ウィンター
訳:山中 忍
出版:ソル・メディア
『マラカナンの悲劇 世界サッカー史上最大の敗北』
著:沢田啓明
出版:新潮社
『あなたの見ている多くの試合に台本が存在する』
著:デクラン・ヒル
訳:山田敏弘
出版:カンゼン
<最終選考を終えた選考委員の声>
選考委員長:佐山一郎氏(作家/編集者)
2回目を迎える今回は、サッカーライティングの将来像についても鋭く問われているような気がしました。読者層が総じて若年化している中で、年齢や性差を 超えた“サッカーを書籍で楽しむ文化”はどのように形づくられるべきなのか。さまざまな可能性と方向性を共に考えていかなければならない時期が来たと感じています。
選考委員:幅 允孝氏(ブックディレクター)
スポーツライティングが今後どうなっていくかわからない中で、多くの人が読みたいと思うものが生まれてくるということが重要だと僕は思います。サッカー本の“定型”から逸脱した、へんてこだけど面白い読み物がどんどん生まれてくれば、サッカー文化の多様性が広がっていくはず。
選考委員:速水健朗氏(ライター/編集者)
今回はいわゆるサッカージャーナリストが試合や戦術、選手について書いたものではなく、それ以外の立場の人がサッカーの外側だったり、周辺で起こる人間模様について書いている作品が多かった印象があります。今後はサッカージャーナリスト以外の人たちが“サッカー”というテーマを取り上げる機会が もっと増えていくことを期待しています。
選考委員:大武ユキ氏(漫画家)
私自身Jサポーターなので、一サッカーファン目線で楽しく選考に参加させていただきました。今回も新たな可能性を感じさせる作品がいくつもありましたが、今後はさらに毛色が違うサッカー本が出てくると面白いのかなと。まだ誰も手をつけていないジャンルがあると思うので、誰もが驚くようなニュータイプの本が出てくるのを楽しみにしています。
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