PayPalはなぜスタートアップに利用されるのか?
海外ネットショッピングに便利なのは知っていたけど、スタートアップにもGOODだったなんて。
スマホやタブレットPCの先駆者とも言えるPalm Pilot間でお金を移動させる決済サービスのスタートアップとして1998年に生まれたPayPal。まさにスタートアップの先駆けともいえる存在ですが、現在は年間で26兆円(!?)もの取引を行うオンライン決済サービスにまで育ちました。
PayPalといえば、ネットショッピングの支払いの時に利用する決済サービスですよね。僕自身、eBayでバイクのパーツを買ったりSteamでゲームを購入するときにPayPalを使ってきて個人利用するのに便利だなーと感じていたのですが、実はB2Bの分野でもPayPalは利用されているんですよ。実際に1億6200万人のユーザーのうち、ショップやスタートアップなど、中小企業のアカウントもかなりの割合で存在し、さまざまな商取引に活用しているんですって。
決済時にカード情報がお店側に渡らないというメリットから、個人の通販決済で利用するものだと思ってたのですが、むしろ中小企業や起業家らがビジネスで多く利用しているんですね。でも商用利用においてPayPalにはどんなメリットがあるのでしょうか?
そこで日本におけるPayPalのエヴァンジェリストとも言えるPayPal Pte.Ltd.東京支店の杉江知彦さんと、起業前からPayPalを活用してきた株式会社CerevoのCEO岩佐琢磨さんを直撃取材しました。
Cerevoは2007年、Consumer Electronics(家電)をRevolution(革新)するという思いから生まれた、日本を代表するハードウェアスタートアップ。ギズモードも初期のころから追いかけていますが、DMMとタッグを組んで秋葉原に数億円ぶんの造形設備や電子機器設備を集めたDMM.make AKIBAを作ったり、2015年のCESで展示したBluetooth搭載スノボバインディング「SNOW-1」は、Digital Trendsが主催する「Top Tech of CES 2015 award」のSports & Fitness部門を受賞するなど、その勢いはとどまることを知らないんですよ。
ギズモード読者の中でも通販の決済でPayPalを利用した方はいると思いますが、実はその利用法はPayPalのほんの一部。2人の対談を聞くと、PayPalがスタートアップや中小企業に欠かせないツールであり、しいては世界の経済にまで影響を及ぼしかねない、重要なサービスであることがわかりました。それでは早速2人の濃い対談をどうぞ。
スタートアップでもすぐに得られる国際的信用力
岩佐琢磨。株式会社Cerevo(セレボ)代表取締役。
岩佐:スタートアップって、スピードが何よりも重要です。何かやろうと決めて、結果が出るまでの時間を1日短縮できるか3日か、1カ月かでぜんぜん生存確率が違ってくる世界。ぶっちゃけスピードで負けたらスタートアップは何で勝つんですかと。
で、僕らは製品開発時に中国のベンダーから部品を調達しています。例えば部品代が10個で3ドルくらい、送料30ドルのバネを1日でも早く入手して組み込んで使ってみたかったりするわけです。試してみてダメだと感じたら、また10個3ドル送料30ドルの、違った仕様のバネを買うんですよ。そのときベンダーとはチャットでやりとりしていて、「金さえ払えばいつでも送ってやる」と言われるんですね。「じゃあ今すぐ払うから今日の便で発送してよ」「えー」「できるでしょいけるでしょ」と。このシーンで、国際的な信用力があり、多くの人・企業がアカウントを持っているPayPalが欠かせないんです。
中国に限らず東南アジアの方たちって、文化もあるのですが本当にストイック。たとえ3,000円くらいのものでもお金が振り込まれるまで一切動かないんですよ。だから銀行振込だと送られてくるまでの時間がかかりすぎる。でもPayPalは決済後リアルタイムで相手のPayPal口座で入金が確認できるので、即日発送もお願いできるんですよ。
ギズ:開発の段階からPayPalは重要なツール・サービスなんですね。
岩佐:めちゃくちゃ重要ですね。
杉江:Eメールだけで簡単にオンライン決済ができる請求書ツール(eメールペイメント)っていうサービスなんですが、請求書をEメールの形で相手に送ると、メールの中にあるリンクをクリックするだけで決済できます。また逆に相手に支払うだけなら、PayPalのアカウントを持っていなくてもその場でぱっと作ってしまえば使える機能で、なおかつ着金がリアルタイムなんですよね。
オンライン決済をもっともカンタンにしたといえるのがかんたん請求書ツール。請求書メール内に決済リンクが入っているので、クリック・タップ1つで支払ってもらえる。
岩佐:これが、このリアルタイムというのがめちゃめちゃ大事なんですよ!
杉江:金融のスタビリティがない国との取引ですと特に効果を発揮しますね。
岩佐:ネットやっている人でメールを持っていない人はいない。「このサンプルくれ。いくらだ。いつ発送だ」といった5行くらいやりとりして、メールアドレスを教えるだけで決済の段階にまで入れる。メールというごくごく普通のシステムとの親和性が高くていいなーと感じていますね。
杉江:銀行振り込みしか受け付けていなくて、小売りのように月に何千件も決済があるところならECサイトを作る意味もありますけど、サンプルを送るとか、サービスを提供するとかいった場合は必要ないですからね。
岩佐:価格が決まっているならまだしも、毎回注文するものが違ってくるし。「ちょっと色を変えてくれ」「じゃあ+2ドルね」「袋もつけてくれよ」「じゃあ+3ドル」「10個買うからまけてくれ」という交渉もやりますし。
そして彼らはキャッシュオンを求めるけど僕らは月末決済のほうが嬉しいんですよ。スタートアップはたいてい1日でも遅く支払いたいと思ってる。クレジットカード払いが普及していない国の企業とのやりとりだと、彼らは銀行振込を求めてきますが、ここで現実としてクレジットカード払いができるPayPalが使えるんです。こっちは即金で送っていないのに(カード支払いは月末や翌月頭だったりする)、相手は即金で受け取れる(PayPal支払いはリアルタイムで着金する)ので、互いにものすごくメリットがあるビジネスができるんですね。
お金の運用がもっと自由に