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トップ10が収益全体の50%を占める日本のスマホゲーム市場攻略の鍵とは。JOGAが主催した「スマートフォンゲームアプリビジネス最新動向セミナー」のセッションをレポート
本稿では,同セミナーで行われたApp Annie Japan アカウントマネージャー 高尾信栄氏によるセッション「最新データから読み解く、日本ゲームアプリ市場と世界の比較 〜今、あえて国内市場をおさらいする意味とは〜」の模様をお伝えしよう。
セッションの最初のテーマは「日本におけるモバイルゲームの台頭」。日本でスマートフォンの普及率が大きく上昇したのは2013年から2014年と,ほかの先進国に比べて遅かった。しかしその一方では,2014年末に普及率が70%に達する見込みと浸透速度はかなり速い。高尾氏はこれを,「コストパフォーマンスに起因したものだ」と分析し,今後もスマートフォンの普及率は上がり続けるだろうと語る。
すなわち機種変更する場合に,フィーチャーフォンとスマートフォンの価格がほぼ同等だとしたら,多くの人は後者を選ぶ。携帯電話メーカーからしても,大量生産などにより製造原価を抑えられるため,スマートフォンのほうがコストパフォーマンスがいい。
そのようにしてスマートフォンが台頭した結果,日本のモバイルアプリ市場にも変化が起きたという。ゲームやアプリを購入する際にApp StoreやGoogle Playといったアプリストアを利用することが一般的になったことで,それは携帯電話キャリアによる垂直統合型だったビジネスモデルが崩れたのである。高尾氏は,これを「ガラパゴス状態から,ようやく世界の土俵に立てるようになった」と表現した。
また高尾氏は,遊んでみたいゲーム1タイトルのために高価なコンシューマゲーム機を購入するよりも,同じ価格でゲーム以外にも使えるスマートフォンを選ぶように,ゲームユーザーもコストパフォーマンスを意識しているのではないかと指摘。
さらに日本におけるスマートフォンゲームの滞留時間を見ると,男性の61%以上,女性の76%は,1日1時間以内となっている。これについて高尾氏は,「新しいタイプのゲームユーザーは,ソフトを所有するよりも遊びたいときに消費する傾向にある」とし,「Aimingやエイリムなどのタイトルのデータを見ると,この層をうまく取り込めていることが分かる」と解説していた。
続いては「アプリストアの動向」について。2013年12月と2014年12月におけるアプリ市場全体から見たダウンロード数および収益で,ゲームが占める割合はApp StoreもGoogle Playもほぼ横ばい。一方,収益規模で比較すると,App StoreもGoogle Playもダウンロード数が減少して頭打ちともいえる状況にもかかわらず,収益は前年比70%超の伸びとなっていることが分かる。
国ごとのランキングデータを見ると,新興国はゲームダウンロード数で上位にランクインしても,収益ではトップ10から姿を消している。つまり,これらの新興国では無料で遊んでいる層が多いということになる。その一方で,とくにGoogle Playでは日本,米国,韓国も3国が収益の70%を占める状態となっており,存在感が大きいことが分かる。
日本のiOS市場においてはタブレットが非常に弱い。高尾氏によればスマートフォンとタブレットの比率については,「パズル&ドラゴンズ」クラスのヒットタイトルでも,ダウンロード数/収益ともにタブレットは1割未満とのこと。逆にタブレットで健闘しているのは,MMORPGタイトルとのことだった。
ゲームのサブカテゴリ(ジャンル)に関して,日本のApp Storeにおいては,RPGとアクションがダウンロード数で見ても収益で見ても人気であることが分かる。
ジャンルの収益面で高尾氏がとくに注目するのはストラテジー(RTS)だ。コンシューマゲームではそれほど大きなヒット作がなかった日本のRTS分野だが,スマートフォンでは「Clash of Clans」(iOS / Android)などがヒット。BlazeGamesの新作「リトルノア」(iOS / Android)も順調に事前登録者数を伸ばしていることから,今後はRTSを題材としたタイトルのリリースが増加するのではないかと高尾氏は予想していた。
最後のテーマは,「日本攻略に向けて」。日本のスマートフォンゲーム市場において,2013年12月から2014年12月までトップ10に残ることができたのは,「パズル&ドラゴンズ」(iOS / Android)「魔法使いと黒猫のウィズ」(iOS / Android)「LINE」「Clash of Clans」の4つのみとなっている。
その背景には,2014年における上位1000ゲームの合計収益の約61%を,トップ20のゲームによる収益が占めているという状況がある。高尾氏によれば,トップ10だけでも全体の50%になっているとのことで,今後もこの寡占化傾向が続きそうだとのこと。
高尾氏は,こうした状況に対応するためには,主婦や女子高校生といった新しい層のスマートフォンゲームユーザーの接触媒体を的確に把握し,施策を打っていくことが必須であるとする。とくに日本では,アプリストアの説明文とスクリーンショット,そして人目を惹くアイコンをきちんとそろえてから,事前登録やブーストといった段階に入っていくことが重要であると話していた。
ちなみに高尾氏は,動画シェアサービス「Kamcord」に注目しているとのこと。日本ではまだ10タイトルしか対応していないが,海外では300タイトルを超え一般的になってきており,動画再生回数100万回を突破している事例もあるという。
高尾氏は,収益ランキングのトップ10に入るよりも,トップ20〜30に複数タイトルを継続してランクインさせることだが日本市場攻略のキーになると話す。もちろん,トップ10に入るに越したことはないのだが,それでは体力勝負となってしまい,長続きしない可能性が高いとのこと。
さらに高尾氏は,日本攻略の具体的な施策をいくつか挙げた。一つは「キャッチコピーの最適化」。これは「モンスターストライク」(iOS / Android)の「ひっぱりハンティング」のように,プレイから得られる感覚を前面に打ち出すことが効果的だという。
また「継続率アップのキー」は,プッシュ通知開封率向上や離脱者へのカムバックメール,コラボ先の選定といった複数の手法を同時に活用していくことだと語る。とくにコラボ先の選定に関しては,アプリストアのジャンルに表れない細かなユーザーニーズの把握が重要とのことだ。
さらにサードパーティストアへの展開,アニメ/映像作品化,飲食店とのコラボ,クラウド配信といった施策も挙げていた。
最後に高尾氏は,こうしたデータ分析を結果の把握に留まらせず,データの見方を変えたり,複数のデータを組み合わせたりすることで,今後の方向性をいち早く,かつ正しく見極めるために活用してほしいと話し,セッションを締めくくった。
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