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“武勇伝”嘘の代償、テレビの苦境象徴 看板キャスター「半年間停職」処分

SankeiBiz 2月12日(木)10時8分配信

 2003年のイラク戦争取材時の武勇伝が事実と異なっていたことが判明し、出演自粛を表明していた米NBCテレビの看板ニュースキャスター、ブライアン・ウィリアムズ氏(55)について、NBCは10日、ウィリアムズ氏を半年間、無給の停職処分にしたと発表した。米ではNBCのような3大ネットワークのニュースキャスターに「政治家の発言以上に正直さや正確さが期待されている」(米ニュースサイト、デイリー・ビースト)だけに、ウィリアムズ氏に対する社会的な反発は強い。一方で、速報ニュースの主役の座をネットに奪われつつあるテレビ報道の苦境を象徴する出来事ととらえる見方も出ている。

 NBCは10日夜、デボラ・ターネス社長が処分決定に関する声明を発表し、虚偽の武勇伝を披露したことに報道に携わる人間として問題があったとの認識を示した。声明では、親会社NBCユニバーサルのスティーブ・バーク最高経営責任者(CEO)が「NBCのニュースに対する数百万人の米国人の信頼を損ねる許し難い行為」と激しい怒りを表明した。

 米FOXテレビや英BBC放送(いずれも電子版)などによると、ウィリアムズ氏は1月30日夕放送の自身のニュース番組「ナイトリー・ニュース」で、03年のイラク戦争取材中、乗っていたヘリコプターが地上からの砲撃で破損、砂漠に緊急着陸したという武勇伝を披露した。

 ウィリアムズ氏はこの武勇伝を13年、米CBSの深夜のトーク番組「レイト・ショー・ウィズ・デイヴィッド・レターマン」でも紹介していたが、このヘリの搭乗員が米軍の準機関紙「星条旗新聞」に対し、ウィリアムズ氏は乗っておらず、1時間後に別のヘリで墜落現場に到着したと証言した。

 ウィリアムズ氏は2月4日のナイトリー・ニュースで「12年前の出来事で記憶違いをしていた。嘘を言うつもりはなかった。実際は後続のヘリに乗っていた。謝りたい」と虚偽発言を認めて謝罪。7日には数日間の出演自粛を表明したが、視聴者からの反発は収まらなかった。

 1970年8月に放送を開始したナイトリー・ニュースは平均視聴者数約930万人で、同時間帯のニュースでは1番の人気を誇ってきた。その看板番組の司会を2004年から務めるウィリアムズ氏は、年収1000万ドル(約12億円)という全米屈指の著名キャスターだ。しかし、ウィリアムズ氏が虚偽発言を謝罪した4日以降、ナイトリー・ニュースは視聴者数であっさり他局に抜かれた。

 そのうえウィリアムズ氏には、05年8月に米南部を襲ったハリケーン・カトリーナの報道でも虚偽発言の可能性が浮上している。翌06年のインタビューで、ウィリアムズ氏はニューオーリンズ市中心部のフレンチ・クオーターで複数の遺体が流されているところを見たと答えたが、地元ホテル幹部は米紙ワシントン・ポストにそうした事実はなかったと否定した。

 看板キャスターの虚偽発言とその波紋は、テレビ報道の転換点につながるとみる欧米メディアもある。5日付の英BBC(電子版)は、ネットの影響で米3大ネットワークの夜の番組の視聴者数は1985年の4800万人から2013年には2450万人にほぼ半減したと説明したうえで、今回の虚偽発言をテレビ報道やキャスターの権威失墜を示す典型的な事例と位置づけ、こう締めくくった。「これは羅針盤を失ったキャスターの物語であり、現代メディアの寓話である」(SANKEI EXPRESS)

最終更新:2月12日(木)12時4分

SankeiBiz

 

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