地方創生を最重要課題に位置付けている安倍政権では、内閣府の「地域活性化推進室」を「地方創生推進室」に改組、職員を2倍の300人にすると報じられた。内閣官房の「まち・ひと・しごと創生本部事務局」には、次官級となる地方創生総括官のポストが新設された。
年末に閣議決定された総合戦略案では、地方の人口の減少に歯止めをかけるため、東京への一極集中を是正し、2020年までに地方での30万人分の若者の雇用の創出や地方勤務者を4万人増やすことなどが掲げられている。
安倍政権の掲げる地方創生政策に効果はあるのだろうか。また、地方経済を見るためのポイントや今後の地方経済の行方について、浜銀総合研究所 エコノミストの遠藤裕基氏に伺った。
地方=弱者?正しい見方とは
地方経済を見るためには、どういったポイントがあるのか。
「地方経済といっても、地域ごとにその様相は異なります。日本経済を見る以上に、構造要因と循環要因に気を付けて見る必要があります。
消費増税の影響で景気が弱い動きとなっている中で、『都市部に比べて地方は苦しい』という言い方をされることがありましたが、人口が急速に減少しているような地域では、もともと経済が弱い動きとなっています。
人口という構造要因と、景気という循環要因をきっちり分けて考えることが必要です」
そのうえで、地方を一括りにして見ることには、問題があるという。
「地方=弱者という視点で見られやすいですが、誰が本当に困っているのか把握する必要があります。
2014年の個人消費の動きを見ると、必ずしも地方が弱いわけでもありません。関東でも消費の落ち込みがみられます。
消費動向を地域別に見ていくと、九州や東北、南関東は弱い動きとなっていますが、北陸や沖縄は底堅い動きを示しています。
地方=弱者というような単純な見方はやや乱暴です。」
こうした地域間格差の問題を正確に把握するために、提言を挙げた。
「地域間比較を月次統計ベースで容易に行うことができるデータベースが整備されていないことから、地域ごとの実情を即座に把握するのが難しいという実態があります。政府が地方創生を掲げるのであれば、統計情報の整備も予算に入れることが望ましいです」
地方への人口の移動は集積のメリットを崩す
政府の掲げる地方創生の政策をどう捉えるか。
「地方創生では、人口減少への歯止めと東京の一極集中を解消し、地方に人口移動を促すという政策が掲げられています。
人口が減っていることにフォーカスする視点は正しいです。ただ、人口増加の恩恵が経済に及ぶまでには時間がかかります。子供が成長して、労働者として経済に貢献するのに少なくとも20年程度の時間が必要だからです。
政策の効果が出るまで、じっくり待つ必要があります」
そのうえで、都市の人口を地方に移すことには警鐘を鳴らした。
「地方の人口減に対する対策として、都市から地方へ人口を移す政策を推し進めて、本当によいのか疑問です。
都市から地方へ人口を移しても、人口の取り合いであり、日本全体みれば、人口は増えていません。
それに、ある特定の地域に人が集まることは経済にとってメリットがあります。
これを集積のメリットといいます。人が多く集まる地域では、多様なサービスが生まれやすいですし、対人コミュニケーションの結果として生産性が高まることも考えられます。
集積のメリットを崩してしまうと、かえって日本の潜在的な成長率が低下してしまう恐れがあります。
人口を増やすことは大事だと思いますが、都市から地方への人口の単純な移動では効果が上がらないと思います」
地方の主要都市への資源の集積を
地方創生の政策には効果があると思うか。
「非常に読みづらいですが、政策の効果をすぐに実感するのは難しいと思います。都市から地方への人口の移動だけでは、椅子取りゲームのような人口の奪い合いで、勝った地域と負けた地域が現れるだけだと考えられます。
日本全体で人口が減っていくことに変わりはなく、そこに変化がなければ経済の持続的な成長は難しいです。」
では、地方創生にはどんな政策が考えられるのだろうか。
「地方経済を活性化させるためには、地方ごとの主要都市、北海道であれば札幌、東北であれば仙台に資源を集中させ、集積のメリットを享受できるような経済構造を構築することが効果的かと思います。
そのうえで、人口減への対応策としては、保育所の整備や男性の育児休暇の取得など、仕事と子育てを無理なく両立できるような支援を整えることが重要だと考えられます。
目的と手段を対応させることが大切です」
地方創生のやり方次第で、日本経済が低迷してしまっては、元も子もない話。単に、人口を地方に移転させる施策をとるだけでは、地域間格差の問題解決には至らないようだ。
インタビュー先:浜銀総合研究所 エコノミスト 遠藤裕基
記事作成:ライター 梅原ゆい
Follow Us