日本・製造業:広がる国内回帰 円安で逆輸入製品採算悪化

毎日新聞 2015年02月12日 07時30分(最終更新 02月12日 11時43分)

広がる国内回帰
広がる国内回帰

 ◇工場新設などの大規模投資には及び腰

 積極的な海外展開を進めてきた日本の製造業大手が、国内生産回帰に動き出した。円安の定着で、国内から輸出しても一定の利益を見込めるほか、海外から逆輸入している製品の採算が悪化しているためだ。ただ海外生産を取りやめるわけではなく、工場新設などの大規模投資には及び腰。日本国内での「ものづくり」が本格的に復活するかは見通せない。

 「現地で造り切れない分は、日本(の工場の生産設備)をできるだけ使う。日本の『ものづくり』をブラッシュアップしたい」。日産自動車の生産部門を統括する西川(さいかわ)広人代表取締役チーフ・コンペティティブ(競争力)・オフィサー(CCO)は9日、記者団に「国内回帰」の狙いを説明した。

 為替変動による業績への影響を抑えるため、日産は消費地に近い地域で生産する「地産地消」を徹底してきた。2010年には、円高への対応力を高めようと、量産小型車「マーチ」の追浜工場(神奈川県横須賀市)の生産を停止。タイ製マーチの日本への逆輸入に踏み切った。日本に関しては事実上、地産地消の例外を作ったことになる。14年の海外生産比率は83%と大手自動車の中で最も高い。

 ところが、昨年以降、景気回復に沸く米国ではSUV(スポーツタイプ多目的車)「ローグ」(日本名エクストレイル)などが好調で、生産が追いつかなくなっているという。このため現在、年90万台の国内生産を、17年度までに110万台に引き上げ、北米工場を補完する方針だ。カルロス・ゴーン社長は「1ドル=75円なら米国で造っただろう」と話し、円安基調が決め手となった。

 キヤノンは今後3年をメドに、現在4割程度の国内生産比率を6割程度に増やす。プリンターや複合機などの新製品を出すタイミングで、順次国内生産に切り替える。田中稔三(としぞう)副社長は「超円高が是正され、海外での人件費も上がってきた。日本で造るチャンスだ」と説明する。

 製造業大手が、海外生産を本格化させたのは、00年ごろから。円高の進行で、日本から輸出した製品の現地価格が割高となり、競争力が低下。日本国内の人件費が、アジア諸国に比べて高いことも、中国や東南アジアに生産拠点を移す動機となった。

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