ここから本文です

ニコン利益半減、いったい何があったのか

東洋経済オンライン 2月12日(木)6時0分配信

写真を拡大 写真を拡大

ニコン利益半減、いったい何があったのか

写真を縮小 写真を縮小

ニコン利益半減、いったい何があったのか
主力のカメラ事業は市場縮小で苦戦。半導体露光装置も販売期ズレが響いた(撮影:尾形文繁)

 いい感じに展開していたが、最後にシュートが決まらなかった――。ニコンの牛田一雄社長は2月5日の記者会見の場で、今期2度目の下方修正に対してこうコメントした。

【詳細画像または表】

 ニコンの2015年第3四半期累計(2014年4〜12月)は、売上高が6178億円(前年同期比15.7%減)、営業利益が267億円(同32.1%減)、純利益が167億円(同55.4%減)で着地。これを受けて通期の売上高見通しを前回予想から400億円減の8600億円(前年同期比12.3%減)、営業利益見通しを170億円引き下げて360億円(同42.8%減)とした。

■ カメラと半導体露光装置がダブルで不振

 ニコンは2014年8月にも営業利益予想を630億円から530億円へと100億円引き下げている。前回の修正要因はカメラ事業の不振だったが、今回はそれに加えて半導体露光装置(ステッパー)事業が大幅下方修正の要因となった。

 セグメント別に見ると、市場縮小が続くカメラ事業は第1四半期に営業利益を660億円から580億円へ80億円の下方修正をしたものの、その後は販売計画通りに推移していた。が、14年9月に発売した一眼レフカメラ「D750」に初期不良が発覚して1月の生産を停止した影響と、中国・ヨーロッパの市場停滞が想定以上だったことから、結局、通期事業利益をさらに50億円下方修正し、530億円とした。

 さらに半導体露光装置の販売期ズレも痛手となった。半導体製造装置の1つである半導体露光装置は「世界一精密な装置」と言われ、最高級機種である「ArF液浸」は1台50億円にもなる。そのため、1台売れるか売れないかで業績に与える影響が極めて大きい。

 今2014年度はArF液浸を前年比倍増の18台売る予定だったが、第3四半期が終わって売れたのは僅か1台。第4四半期も挽回の見通しが立たず、売り上げ目標を9台へと下方修正を余儀なくされた。通期の事業売上高も前回予想比マイナス400億円の1700億円、事業利益も同マイナス110億円の80億円へと下げた。牛田社長は「見込んでいた9台のうち4台は来期へ売り上げ計上がズレたが、残りは商談継続中。確実に前進はしているが、新規顧客開拓が形として現れていない」とコメント。当初の見通しの甘さを露呈した。

 通常は増益要因となる円安も今期に関しては効き目薄だったようだ。「ユーロ高は通常どおり増益に効いたが、ロシアのルーブル安による減益が大きかった。ドル高も想定より増益に貢献しなかった」と伊藤純一副社長は述べた。

■ 信用の回復には時間が必要

 厳しい状況が続くニコンの露光装置事業だが、決して悪いことばかりではない。現在、半導体露光装置シェアの8割を占めているのはオランダのASML社だが、ニコンは去年ASML社製品の性能を凌駕する新製品「NSR-S630D」を投入、反転攻勢に出ている。

 新製品の場合、製品テストから売り上げ計上まで半年〜1年程度かかるため、新製品効果が本格的に寄与してくる来2016年3月期期以降はASML社のシェアを奪って成長に転じることありうる。「ニコンとASMLの性能差は用いている方式の違いによるもの。簡単にひっくり返る物ではない」(ニコン広報)。

 だが、底打ちのタイミングがいつになるかについては不透明だ。ここ数年間、会社は楽観的な予想を出しては下方修正を繰り返しており、株式市場からの信用を失いつつある。決算説明会では「毎回目標未達に終わる目標に意味はあるのか」という質問が浴びせられ、2014年6月に発表したばかりの中期経営計画についても「修正の必要があるのではないか」との指摘があった。

 実際、露光装置の新製品が寄与したとしても、カメラ事業は市場の成熟化により今後も縮小が避けられそうもない。中計では来2016年3月期に今期予想比2.5倍となる営業利益900億円目標を掲げているが、非現実的な数字となっている。

渡辺 拓未

最終更新:2月12日(木)9時5分

東洋経済オンライン

 

記事提供社からのご案内(外部サイト)

週刊東洋経済

東洋経済新報社

2015年2月14日号
2月9日発売

定価690円(税込)

[PART1]あなたの家が狙われる
[PART2]あなたの会社が狙われる
巻頭特集:スカイマーク 折れた「叛逆の翼」
深層リポート:楽天 海外事業最後の賭け

PR