しつらえについて
金沢の文化発信地、東茶屋街。古く文政三年に開設されてから、戦災を免れた歴史的建造物群の中では金沢の芸と茶文化を今も脈々と継承し続けています。その中心地である広見に面して「金澤東山 しつらえ」はございます。シンボルとなる1 本の柳がしなやかに立ち、皆様をお迎え致します。
「金澤東山 しつらえ」は、東山界隈でも唯一残る外装に弁柄塗りを施した建物です。弁柄とは土から取れる成分(酸化鉄)で紅殻、弁柄とも呼ばれ日本の暮らしにも古くから根付いている防虫、 防腐の機能性から家屋の塗りとしても使用されています。
外壁の壁板を張る際に、羽重(はがさね)にした下見板の押縁(おしぶち)として、縦に打ちつける細長い木材を「ささらこ」といいます。裏側には下見板に合わせた刻みをつけ、板に密着するようにしてあります。
外格子には木虫籠(きむすこ)と呼ばれる技法を用いています。細かな格子は細い木を台形に形どっており、外から中は見えにくいが中からは外がよく見える技法が施されています。
のれんをくぐって頂きますと、左手には2F への階段、右には蔵、正面には坪庭。
玄関土間は三和土(たたき)を用いました。三和土とは「敲き土(たたきつち)」の略で、赤土・砂利などに消石灰とにがりを混ぜて練り、塗って敲き固めた素材。三種類の材料を混ぜ合わせることから「三和土」と書きます。一枚板の上がり框にありますのは、茶席の準備が出来たことを知らせるために鳴らす銅鑼。人間国宝・魚住為楽の作品です。砂張(さはり)という銅と錫から作られた素材を、伝統の技で作り上げた銅鑼の音は優雅な余韻を響かせますので、是非お試しください。
二階にあがって頂きますと、箱庭に植えられたノムラモミジがお迎えいたします。その手前には大樋焼作家・大樋年男氏による茶道具をしつらえました。
左官仕上の土壁は、薄紅(うすべに)、真朱(しんしゅ)、黄丹(おうたん)、鴇(とき)、照柿(てりがき)、利休茶(りきゅうちゃ)、花浅葱(はなあさぎ)等十六層に塗り重ねられ、まるで十二単のような艶やかさと華やぎを見る事 ができます。