STAP論文:主要著者、誰も実質処分受けず
毎日新聞 2015年02月10日 21時07分(最終更新 02月10日 23時17分)
「生物学の常識を覆す成果」と発表されてから約1年。今や「世界3大研究不正」とも言われるSTAP細胞論文問題は、主要著者が誰も実質的な処分を受けない幕引きとなった。理化学研究所が10日発表した懲戒委員会の結果では、規定に基づく懲戒処分は発生・再生科学総合研究センター(CDB、当時)のトップを退いた竹市雅俊特別顧問の「けん責」のみ。一方、野依良治理事長ら役員への処分はなく、この日は姿も現さなかった。
◇責任追及、中途半端
「(退職しており)本来なら処分対象ではないが、関係者の相対的な責任を評価する必要があった」
文部科学省で処分結果を発表した理研の堤精史人事部長は、小保方(おぼかた)晴子・元研究員を「懲戒解雇相当」、若山照彦・山梨大教授を「出勤停止相当」と判断した理由を説明した。既に退職した小保方氏への具体的なペナルティーは何もない。山梨大によると、若山氏は同大の発生工学研究センター長を引責辞任する意向を示した一方、「教育と研究に全力で取り組むことで責任を全う」するとのコメントを発表、今後の研究に意欲を示した。
研究不正の調査終了前に当事者が退職し、処分できなくなるケースは過去にも多い。昨年12月に調査の最終報告がまとまった東京大分子細胞研究室を巡る論文不正では、不正認定された教員6人全員が退職。退職金を受け取り、別の大学の教授に就いた人もいた。調査に1年3カ月かかっていた。
職にとどまる人と退職者の間で不公平感が生じる研究不正の処分について、佐倉統(おさむ)東大教授(科学技術社会論)は「理研は、最初から全面的な調査をしなかったことや、検証実験に時間をかけた問題があった。調査を迅速化する工夫が必要だ」と指摘する。