自治体の避難計画 多くの課題も2月12日 4時10分
福井県にある高浜原子力発電所3号機と4号機について、原子力規制委員会は、再稼働の前提となる審査に合格したことを示す審査書を12日に正式に決定します。
東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、原発事故に備えた防災計画を作るよう義務づけられる自治体は、それまでの「原発から10キロ圏」から「おおむね30キロ圏」に広げられました。
高浜原発から30キロ圏には、福井県と京都府、それに滋賀県の3つの府県の合わせて12の市と町が入り、その地域の住民はおよそ18万3000人に上ります。
これらの地域では、重大な原発事故が起きた場合、避難が必要になるおそれがあり、各自治体は避難計画をまとめていますが、多くの課題が指摘されています。
福井県
福井県は、避難の際、住民の衣服や車などに放射性物質が付着しているかどうかを調べるスクリーニング検査を行う場所の候補として県内外の28か所を示していますが、検査に当たる人員や機材がどれだけ必要かは検討中だということです。
また、住民が暮らす避難所をどう運営するかや、食料や医薬品をどこがどれだけ備蓄するかなどについて、受け入れ先の自治体と具体的な協議が進んでいないのが実情です。
国は、原発が立地する福井県高浜町などに内閣府の担当者を派遣して支援を行っていますが、避難計画そのものについて審査は行わない方針で、実効性ある計画が立てられるかどうかは各自治体に委ねられています。
京都府
京都府には、高浜原発から30キロ圏内の住民のおよそ70%に当たる12万8000人が住んでいます。
高浜原発から最も近いところでおよそ3キロの距離に位置する舞鶴市では、去年12月、原発が立地していない都府県では初めて、甲状腺被ばくを防ぐヨウ素剤の住民への配布が始まりました。
国の指針は、住民にあらかじめヨウ素剤を配る地域を原発からおおむね5キロ圏内としていますが、舞鶴市は最大で9キロ離れた地域を含む600人余りを対象に配ることにしています。
京都府は、風向きによって、西方向に逃げる場合と南方向に逃げる場合を想定し、ほかの府県を含めどの自治体に避難するかを決め、避難先の具体的な施設もほぼ内定しています。
そして、スクリーニング検査を行う場所も府内のおよそ10か所に設ける予定ですが、実際に事故が起きた場合は京都府の住民だけでなく、福井県からも多くの人が京都府を通って避難すると予想され、スクリーニングの箇所が足りなくなるおそれがあるということです。
また、30キロ圏には病院や高齢者施設もありますが、入院患者や入所者がどういう方法で避難するかは決まっていません。
さらに、高齢者施設の入所者をどの施設が受け入れるかについて、京都府はそのときの状況に応じて検討するとしていて、混乱が予想されます。
滋賀県
滋賀県は、避難計画を策定する範囲を、福井県にある各原発から最大で40キロ余りの地域まで広げ、対象となるおよそ5万7000人が、滋賀県南部や大阪府、それに和歌山県に避難する計画をまとめています。
大きな課題となるのは、各原発に近い滋賀県高島市から南に逃げる場合に使う主な幹線道路が2本の国道しかないことです。
滋賀県は深刻な渋滞を避けるため、住民はまず地域の体育館などに集合し、その後、マイカーではなくバスで移動することにしていますが、自力で動くのが難しいお年寄りや障害者が集合場所にどのように向かうかは決まっていません。
また、バスの車両と運転手をどれだけ確保できるかも見通しが立たず、滋賀県は今後、バス会社などと協議を進めたいとしています。