「ここにはあなたの知らないパナソニックがある」。これは2カ月前、日本の経営者がよく読む雑誌に載った広告だ。「自然よりも野菜に快適な家」というタイトルの下に「酷暑、梅雨、暴風雨…自然はいつも農作物に最適な環境を提供するわけではない」という説明が続く。電機メーカーの広告だとは信じられない。
パナソニックは、創業96年目の2014年、農業分野に本格進出したようだ。パナソニックが打ち出した商品は、ビニールハウス内の光や水、風を細かく管理するソリューションだ。このソリューションを活用すれば、ホウレンソウを年に8回も収穫できる。従来のビニールハウスでは、収穫できるのはよくて4-6回だった。パナソニックによると、天候に関係なくホウレンソウを作り、生産量を最大で2倍に増やせるという。
日本の製造業の末端現場を報道する「日経ものづくり」に載った特集記事は、さらに刺激的だった。東芝は昨年9月、横須賀で新工場の操業を始めた。農薬を使わず、人体に有害な菌を取り除いた野菜を大量生産する工場だ。かつてはフロッピーディスクを送り出していた工場建屋の4階を改造し、植物工場を作った。温度・湿度・二酸化炭素の調整には、半導体の工程のクリーンルーム管理技術をそのまま活用している。半導体技術と農業の融合だ。
東芝は、パナソニックよりも一歩先を進んだ。工場で作ったさまざまな野菜を長さ4センチに切りそろえ、テークアウトコーヒーの容器に入れた。新商品は、日本でちょうど人気を集めているサラダカフェやコンビニに供給される。生産過程に土は存在しない。半導体を作っていたころと同様、雑菌が入り込む隙もない。農薬を使う必要もない。きれいな状態で成長した野菜なので、水で洗う必要もない。消費者は、好みのドレッシングをかけるだけですぐに食べられるのだ。
農業に製造業の技術が深く関わるケースは、いくらでもある。トヨタ自動車は「ジャスト・イン・タイム」というトヨタの生産方式をコメ作りに導入した。苗代に種もみをまくことから始まり、田植えを経て収穫に至るまで、全ての過程を自動車作りのように管理する。その結果、資材費は25%、人件費は5%削減できた。
日本でも、大企業が農業に進出する動きに反発がないわけではない。日本政府が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を推進する中、非常に頭の痛い障害の一つになっているのが農産物の開放問題だ。農業者団体は開放反対デモを繰り広げた。だが農業者は高齢化し、農村では若者が減っている。その一方で休耕田の面積は増えている。新技術開発に投資がなされるはずもなく、資本力も低い。