夏目漱石、福沢諭吉の造語といわれる単語はたくさんあります。
夏目漱石と福澤諭吉が生んだ造語 : 2chコピペ保存道場
833 名前: ジョウシュウアズマギク(東京都)[sage] 投稿日:2009/07/15(水) 12:23:47.06 ID:d9x1Jzvk
夏目漱石が生んだ造語
「新陳代謝」、「反射」、「無意識」、「価値」、「電力」、「肩がこる」、「電光石火」
「ひどい」、「浪漫(ロマン)」、「沢山」、「兎に角(とにかく)」、「価値」
福澤諭吉が生んだ造語
「自由」、「経済」、「演説」、「討論」、「競争」、「文明開化」、「共和政治」
、「版権」、「抑圧」、「健康」、「楽園」、「鉄道」、「尚商」
http://2chcopipe.com/archives/51257709.html
コメントでは「ところで、夏目漱石は『価値』を二個も生み出したのか」「価値が二つあるけど?」とツッコまれていました。「大事なことなので二回言いました」みたいな感じで、価値があるから二回書いたのかも。
あと、「夏目漱石はもっとあったような気がする」というコメントがあったように、夏目漱石の造語の多さは特に有名です。造語の神様のような扱いになっています。
ただ、「造語でもないような」「造語、っつか欧米諸国からの新しいモノやコトを上手く表せたのが夏目漱石と福沢諭吉なのかも」とあったように、造語という言い方をするとおかしいでしょうか?
検索すると「創訳」という言葉があり、「ああ、そんな言葉があるのか!」と思いましたが、「創訳」で検索してもあまり例がないです。ややこしいですが、「創訳」が正真正銘の「造語」なのかも。
念のために「造語」を辞書で検索。
デジタル大辞泉の解説 コトバンク
ぞう‐ご 〔ザウ‐〕 【造語】
[名](スル)新語をつくること。既存の語を組み合わせるなどして新しい意味の言葉をつくること。また、その言葉。「新しい概念を表す言葉として―する」「明治期の―」
大辞林 第三版の解説
ぞうご【造語】
( 名 ) スル
新しい言葉を作り出すこと。既成の語の転用・複合や擬音・擬態などにより,新語を作ること。 「 -力」
「海外の概念に対応する訳語を作る」といったことには、特に触れられていませんね。ただ、まあ、適当な語がないですので、一般的にはやはり「造語」と言って良いと思います。
訳語のための造語が多かった人としては、無名の人ですが過去に
志筑忠雄(中野柳圃)についても書いています(初期の投稿なのですごい短いですが)。ただ、やはり夏目漱石らの方がずっと知られています。
ところが、この夏目漱石の造語と言われているものはほとんど嘘だ…と指摘しているページがありました。今探すとまだ残っていますね。
これも漱石の造語ではない「肩が凝る」 - くうざん本を見る 2008-04-03
「肩がこる」である。日本国語大辞典では近代の用例しか載せないが、江戸時代のものがある。(中略)
安永頃の作品だから、漱石の生まれる90年ほど前。「肩が凝る」と「肩のつかへ」が出来るわけである。
http://d.hatena.ne.jp/kuzan/20080403/1206971739
テレビへの慨嘆・「漱石が作った!?」 - くうざん本を見る 2007-01-06
で、夏目漱石が新しい言葉を考え出したのだ、と。「新陳代謝」がそうだ、という。(中略)
辞典に載っている用例で漱石のがいちばん古いのだろうか、と思って『日本国語大辞典』を引いてみると、1876年の『改正増補物理大成』に見えることが分かる。この年、夏目金之助は数えで十歳。(中略)
リンク元に、サーチエンジンで「夏目漱石・新陳代謝」としたものがあったので覗いてみたら、「沢山」まで、漱石の造語だとしていたらしいことがわかった。「沢山」と書いて「たくさん」と読むのは室町時代からある。「流石:さすが」も同様。
「経済」。「経国済民・経世済民」の意味でなく、金銭面の意味でも、江戸時代からある。
「価値」。『日本国語大辞典』初版では漱石の例が古く、誰かがこれを元に、「漱石が作った」と考えたのかも知れないが、「かちょく」を見よともなっていて、こちらを見ると、古くから有ることが分かる。さらに、第二版を見ると「かち」に1878年の用例がある。
「電力」。まさか!! これも『日本国語大辞典』初版の用例を勘違いしたものだろう。第二版では、1877年の「米欧回覧実記」の用例が上がっている。
『日本国語大辞典』初版の用例の与えた影響は大なるものかな、と、「新陳代謝」も初版で引いてみたら、島村抱月の例もあるが、これはなぜ無視されたのだろう。
福沢諭吉やら、夏目漱石やら、なんでもかんでも、ある個人の功績にしてしまうのは、やめて欲しい。
http://d.hatena.ne.jp/kuzan/20070106/1168086774
この方はいくつも書かれていて詳しく、論文もしたためているそうです。最後は福沢諭吉もセットで否定されていますね。
この福沢諭吉のWikipediaにはありませんが、夏目漱石の
Wikipediaでも、言及があります。
造語
「新陳代謝」、「反射」、「無意識」、「価値」、「電力」、「肩が凝る」等は夏目漱石の造語であると言われているが、実際には漱石よりも古い用例がある。一例としては、漱石が「肩が凝る」という言葉を作ったとする説があるが、18世紀末頃からの歌舞伎、滑稽本に用例が見られる。
夏目漱石は権威を嫌っていましたが、時が経って権威化された漱石の元に功績が集められているのは皮肉な気もします。
なお、Wikipediaでは"学術的に「漱石の造語」であると言える言葉はまだ一語も確認されていない"とさんざんなことを書いています。しかし、続けて"「浪漫」については『教育と文芸』中に「適当の訳字がないために私が作って浪漫主義として置きました」との記述がある"としていました。
実は「浪漫主義」については先程のページでも触れられていました。というか、さっきのブログさんが元ネタかもしれませんね。
また、現在全く使われていないものの、「低徊趣味」(世俗を忘れ、人生をゆったりと眺めようとすること)もWikipediaでは漱石が作ったと書かれていました。
福沢諭吉の方が少ないので、こちらも検索してちょっと追加。
演説(2005.01.11) 岩本・石谷研究室 東京工業大学 資源化学研究所 有機資源部門
九感長庵22で「演説」という訳語は福沢諭吉が作ったものと書いた(「三田演説館」2003.06.12)。ところが、どうも違うようだ。井上ひさしの「ニホン語日記2」を読んでいて以下の文章に出くわした。
『一般に「演説」は福沢諭吉の造語と信じられているようであるが、事実はそうではないようである。幕末の長崎で「演舌(えんぜつ)」という言葉がむやみにはやっていた。それを諭吉がスピーチの意味を付けて転用したのである。』
http://www.res.titech.ac.jp/~organic/dabunn/kyuukann3/37.htm
ただ、意味を加えたというのが本当なら、造語の一種と言って良いでしょうね。以下では、さらに別の方が作ったという単語の話がでてきています。
井上によると、新造語の名人は森鴎外だという。「詩情」、「空想」、「民謡」、「女優」、「男優」、「長編小説」、「短編小説」などはすべて鴎外の造語であるという。ちなみに「浪漫主義」は漱石、「微苦笑」は久米正雄、「慕情」は高見順、「小説」は逍遙だそうだ。
こういった単語の初出を調べるのはなかなか骨が折れそうですが、おもしろい話でもあるでしょうね。
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