「牢獄の中でも希望、だけど会いたくて…」イスラム国拘束の米女性死亡
オバマ米大統領は10日、声明を発表し、過激派組織「イスラム国」に拘束されていた米国人女性ケーラ・ミュラーさん(26)が死亡したと判断したことを明らかにした。米高官によると、ミュラーさんの家族に対する同組織からの情報を分析した結果の判断だったという。一方、ミュラーさんが生前に家族宛てに送った手紙が公表された。心配をかけまいとする気丈な文面の中に、家族に会いたいと願う気持ちがにじんでいた。
みんなのことを考えると涙が止まりません―。ミュラーさんの手紙には家族への愛、自分が置かれた状況などが1枚のノート紙にびっしりとつづられていた。
家族によると、手紙が書かれたのは昨年春。どのような経路で届いたかは明らかにしていない。手紙には「安全な場所にいます。危害も加えられずに健康です。敬意をもって親切に扱われています」と拘束中も元気でいることを伝え、解放交渉で疲弊しないでほしいと家族を思いやった。
その一方で、家族で行ったキャンプなどの思い出に触れ「離れて10年になるかと思うほど、みんなと会えないのが寂しい」と記し、手紙を書くと涙が出てくると吐露。それでも「私は自分と闘っています。気落ちしないし、どんなに長い時間がかかっても負けません」とつづった。末尾には「どうか心配しないで、私のように祈り続けてください。神様が私たちをもうすぐ会わせてくれるはずです」と結ばれている。
アーネスト米大統領報道官は10日の記者会見で、先週末にミュラーさんの家族にイスラム国から新たな連絡があり、その情報を分析した結果、ミュラーさんは死亡したとの判断に至ったと説明した。死因や死亡日時は特定できていないという。米CBSテレビ(電子版)は、写真が添付された電子メールが送られてきたと報じた。イスラム国はシリア北部ラッカ郊外で拘束していたミュラーさんが、ヨルダン軍の空爆によって死亡したとの声明をインターネット上に出していた。
米政府の判断を受け、この日、ミュラーさんの両親は「一人娘を失い悲嘆に暮れている」と声明を出した。両親は「彼女は自由や正義、平和を必要としている人たちに若い人生をささげた。私たちは誇りに思う」などと記した。
ミュラーさんは米アリゾナ州の大学を卒業後、2012年にトルコに移り、シリア国境付近で難民の子供たちに美術などを教えていた。13年8月、国際緊急医療援助団体「国境なき医師団(MSF)」が運営するシリア北部アレッポの病院を出た後に拘束された。