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外債投資と為替ヘッジの円相場への影響

なぜ、機関投資家は為替ヘッジをしたくなるのか

日本は世界で有数の低金利の国だ。日本より名目金利が低い国(地域)はスイス、ドイツ(ごく最近そうなった)などほんのわずかである。

そうした国では通常、海外のより高い金利を得て資金運用の利回りを高めたいとの誘因が働く。なかでも保険会社(特に生保)などには取りわけ傾向が強い。

 

日本の10年金利が0.3%台の現在、米国なら2%弱、オセアニア通貨ならさらに高い金利が見込める現状を考えると、外債は一見魅力的に見える。

 

ただし、注意しなければならないのは、(当然のことではあるが)こうした一見有利に見える外債の金利は外貨(たとえばドル)ベースで支払われることだ。そのため、当然為替リスクが存在する。

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機関投資家の運用資金源は多くの部分が円建てである。分かりやすく生命保険会社の運用を例に挙げると、生保の運用資金は個人(契約者)から集める生命保険である。これは(国内市場が大きいため)ほとんど円建てである。

この生命保険(の契約金)は、生保にとって運用資金源であり、将来保険の受取人に対して返さなくてはならない長期の負債だ。

この負債を高い利回りで運用することが、生命保険会社の利益にとって決定的に重要である。調達した負債(生命保険契約)よりも高い利回りで運用できれば、その差額が利益になる。負債コストを(無リスクの)国債の利子率が上回る世界では、金融機関の運用は簡単だ。

 

だが、日本国内の低金利による運用環境の厳しさは冒頭の通り。

そこで海外の金利に頼りたくなるのだが、外債は外貨建て、詳細返さなければならない負債(保険金)は円建てである。円高になれば、投資資金が目減りして、負債が返せなくなる(損失を被る)。

 

ただでさえ、あくまで理論上(金利平価説)であるが、高金利通貨の為替レートは減価しやすいとされている(円高になりやすい)。実際は市場の力学で決まるわけだけど

 

本来は、調達した負債(運用資金源)と運用資産は同一の通貨であれば、為替リスクを取らずにすみ、運用が楽である。

 

なんとか、為替リスクを取らずに、外債により海外の金利を享受できないか。

そのために、存在するのがヘッジ付外債だ。

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ヘッジ付外債の特徴

以下、米国(米国債、米ドル)を例に述べる

ヘッジ付外債は、米国債に投資しつつ、為替市場で米ドルを売却(日本円を購入)という取引を行うことで為替リスクを回避する。

為替が円高に振れても、(ドル建て)米国債の価値は毀損しても、米ドルを売却したポジションから利益が出るため、為替リスクなし、ということだ。

 

若干細かい説明になるが、ヘッジ付外債は、ヘッジを行わない外債(オープン外債)に比べ、(為替市場の変動が無ければ)収益性が劣ることが普通だ。

それは、米ドルの売却(円の購入)というポジションを保有するには、日米の短期金利差分のコスト(金利)を支払わなければならないからだ。そのため、日米の短期金利が米国の方が高い状況下では、その差額分を米国債のリターンから減じたものが、ヘッジ付外債の(想定)リターンとなる(この辺は金利の期間構造の話などを簡略化して書いているため、ざっくりながして下さい)。

 

それでも、為替リスクを排除して、少しでも日本と金利との比較し高いリターンを得られる可能性があるヘッジ付外債は、機関投資家の主要な投資対象の一つである。

 

 

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ヘッジ付外債は円相場に影響が、金利上昇局面だと・・・

ヘッジ付き外債投資は、米国債購入のためのドル買いとヘッジのドル売りがセットのため、為替相場に影響を与えない。

 

ただし、このヘッジは為替リスクをヘッジするのみだ。そのため金利の変動はヘッジできていない。
現在の米金利は上昇局面にあると見なされている。2015年度中にはFEDが政策金利の引き上げを図る確率はかなり高いだろう。そうした環境下では一般的にヘッジ付外債は、有利な商品とは言えなくなる。金利の上昇は債券価格の下落を意味するため、為替では損失が発生しなくても、債券価格で負けることになる。

 

一方で、ヘッジを行わない外債のリターンの性質は、ヘッジ付外債とはだいぶ違う。米金利が上昇する局面では、米ドルが上昇しやすくなるため、債券単価の下落を為替の利益が補う可能性が高まるからだ。

金利上昇による債券単価の下落と為替の利益、どちらが大きいかという議論は、投資する債券の年限によって異なる。年限(正確にデュレーション)が短ければ為替の影響が大きく、長くなればなるほど債券単価の影響が大きくなる。

しかし、確実に言えることは、ヘッジ付外債よりも金利の上昇には耐性(為替が補ってくれる)があるということだ。

そのため、機関投資家がヘッジなしの外債投資を拡大する傾向が見られ、円相場の円安要因の一つになると見られている。