村上さん、こんにちは。
わたしは20歳で社会人になり上京したのですが、1年も経たないうちに仕事を辞めてしまいました。その後半年から1年ほどは仕事もせずにほとんど毎日、実家から車で30分ほどかけて兵庫県の稲美町立図書館に通い、とにかくたくさんの本を読みました。ぐるりと丸い建物でこぢんまりとしていて、とてもかわいらしい図書館です。今ではまた上京して仕事をしており、もう何年も足を運んでいないのですが、たまにあの図書館で読書をすることが恋しくなったり、夢にも出てきます。村上さんは「長らく行ってないけど、また行きたいな」と思う場所はありますでしょうか。
(不安もりそん、男性、30歳、会社員)
無事にまた仕事ができるようになってよかったですね。でも人生には、図書館に逃げ込む時期も必要なのだろうと思います。いつもその場所を胸の中にしまっておかれるといいと思います。いざというときに、そこに逃げ込めます。僕は大学時代に通った名画座をよく思い出します。いつも一人で二本立ての映画を見ていました。お金はないけど、時間だけはいやというほどあって、孤独だけど幸福でした。
村上春樹拝