社説:軽減税率の協議 年内の法制化を目指せ
毎日新聞 2015年02月11日 02時30分
自民、公明両党が生活必需品の消費税率を低く抑える軽減税率について具体的な協議を始めた。消費増税は、とりわけ低所得者に大きな打撃を与える。国民生活を守るためには、負担軽減策が欠かせない。
税率は2017年4月から10%への引き上げが予定されている。それに合わせて軽減税率を導入できるよう、政府・与党は年内の法制化を目指すべきだ。
両党は軽減税率について「17年度からの導入を目指す」ことで合意している。昨年末の税制改正大綱に明記し、安倍晋三首相も報道機関へのインタビューなどで明言している。
ところが、一貫して導入に積極的な公明党と、税収減や企業の事務負担増につながるとして慎重な自民党との温度差は大きい。肝心な導入時期を巡っても、公明党は「17年4月から」と主張するが、自民党内には「(18年3月までの)17年度中」とする声が根強い。
政府は昨年、低所得者約2400万人に対して1万〜1万5000円の給付金を配布したが、個人消費の底上げにはつながらなかった。やはり、恒久的な対策として軽減税率が必要なのだ。負担軽減が必要と判断した以上、増税と同時に導入するのが筋である。
しかし、残された時間は限られている。財務省は関連法の成立から導入まで1年半程度の準備期間が必要と説明している。逆算すると年内に法制化する必要がある。両党はまず、その認識を共有すべきだ。
制度の具体化にあたっては、どの品目を軽減税率の対象にするかという線引きが最大の焦点になる。両党は昨年、「すべての飲食料品」から「精米のみ」まで8通りの案をまとめた。できるだけ対象を広げたい公明党と、税収減を抑えるために絞り込みたい自民党との溝は大きい。
もっとも、軽減対象は食料品に限られるわけではないだろう。消費税に相当する付加価値税の先進地である欧州諸国では、「知識」への課税を避けて新聞・雑誌・書籍なども対象にしている。
対象の線引きは、国民生活や社会のあり方にかかわる。国民や関係事業者の声にも十分耳を傾け、公平で納得性の高い議論を重ねてほしい。
減収分を穴埋めする代替財源の問題、個人事業主や企業の経理処理の方法なども検討すべき課題として残されている。
消費税は、高齢化に伴って膨らみ続ける社会保障の財源になる。今後、一段の引き上げは避けられないだろう。生活必需品への税負担を抑える軽減税率の必要性は高まるはずだ。政府・与党には、そんな将来に耐えうる制度設計を期待したい。