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【書評】
『テミスの剣』中山七里著
昭和59年、不動産業の夫婦が殺された事件を先輩と一緒に追った若手刑事の渡瀬。彼らが逮捕した青年は法廷で無罪を主張するが、死刑判決が下る。控訴審でも判決は覆らず、青年は獄中で自殺してしまった。ところがその後、渡瀬は犯人が別の人物だった可能性に気づく。
〈虫唾(むしず)が走る。悪党を狩ってきたつもりが、いつの間にか自分が最低の悪党になっているではないか〉。時間軸のジャンプが効果的。刑事の成長譚(たん)であり、罪と罰をめぐる年代記でもあり…。起伏に富み、疾走感抜群。ミステリー的な仕掛けも期待を裏切らない。(文芸春秋・1750円+税)