←エントランスへはここをクリック   

ヤブヘビ捜査で明らかになる
二階大臣と西松建設
の深い関係

青山貞一 Teiichi Aoyama 17 March 2009

独立系メディア「今日のコラム」


 周知のように、連日連夜、東京地検は大メディアに対して一方的に小沢代表関連の捜査情報をリークしまくってきた。

 政府・自民党は大メディアによるこれらの検察リーク情報のたれ流しを、いわば「情報操作による世論誘導」として看過するだけでなく、利用指摘してきたきらいがある。

 ここで問題となるのは、捜査情報の一方的な垂れ流しである。

 東京地検がリークしなければ、一体誰が漏らしているというのだろうか?

 さらなる問題は、リークされることだけでなく、リークされる捜査情報の信憑性である。

 大マスコミによって顕示される情報が正しいのか、真実なのか、それとも西松側などの一方的な言い分なのか、国民は知るよしもないからだ。

 万が一にも東京地検が故意かつ選択的に捜査情報を垂れ流しているとしたら、それこそ民主主義を揺るがす大問題となる。

.....閑話休題

 裁判員制度がこの春から開始される。

 それに先立ち、改正刑事事件訴訟法をもとに、日本の刑事裁判では公判前整理手続きが援用されている。

 この公判前整理手続きは、警察や検察が捜査・取り調べで得た調書などの情報を公判に先立って被告側弁護士側に提供するものである。その目的は公判時間を短縮化するとされている。

 だが、この「公判前整理手続き」の導入によって大きな問題が起きている。

 その理由は警察、検察から被告側弁護士に提供される取り調べなどの情報は、弁護士以外、たとえばメディアはもとより支援者、研究者など第三者に実質提供されないことにある。

 私が一昨年関与した横浜市内で起きた刑事事件でも、警察、検察は被告となった学生の弁護士にこそ関連情報を提供したものの、学生にとって親同然の私達には一切それを見ることが出来なかった。

 この事件では、警察や横浜地検のきわめて杜撰な捜査により、まったく無実の学生があやうく冤罪に巻き込まれるところであった。

 幸い、卓越した弁護能力を持った弁護士と公平、公正は判事に巡り会うことができ、初審で無罪を勝ち取り、横浜地検は控訴を断念している。

.....

 私がここで何を言いたいかと言えば、司法当局は上述のように刑事事件において、一方では捜査・取り調べ情報の外部への情報提供や漏洩を法律改正までして制限している。

 にもかかわらず、今回の小沢代表公設秘書逮捕の一件では、司法当局は連日連夜、大メディアに断片的な捜査情報をチョイ出しし続けているのである。

 マスコミはいずれも司法当局から垂れ流される情報によって断定的、一方的な記事やニュースを垂れ流している。これほど理不尽なことはないだろう。

 そもそも、一体誰がどのようにしてリークしているか? 

 まったくもってふざけた話しである。

 その結果、多くの国民は連日連夜、テレビ、新聞などの大メディアが垂れ流す情報によって世論誘導されている。

.....

 ところで、東京地検特捜部は、政府高官、漆間巌官房副長官がオフレコの記者懇談会で話した「捜査が自民党議員に拡大することはない」という発言がそこに参加していた大メディアの記者らによって外部に漏れた。

 その結果、国民はやっぱりこの時期の小沢代表公設第一秘書逮捕は、「政権交代つぶしのデキレース的国策捜査」だったかと思うようになっている。当然のことだ。

 政府、とくに法務大臣は「国策調査」のみならず、司法が時の政権の影響は受けることは絶対ないなどと、打ち消しにやっきとなっている。

 その打ち消しのための窮余の一策であろうか、現職閣僚である和歌山県選出の二階俊博経済産業大臣と二つの政治団体を含む西松建設側との間でのカネのやり取りを捜査しだした。いや東京地検はやらざるを得なくなった。

 その間、大メディア各社の麻生内閣支持率などの世論調査が発表されたが、麻生内閣の支持率はさして伸びず、依然として20%以内に低迷しており、結果として政府・自民党は、まさにやぶをつついてへびを出す、いわゆる「ヤブヘビ」そのものの展開となっている。

 それにしても今回の東京地検の捜査は、さまざまな意味で疑義を感ずる。

.....

 ところで肝心な二階大臣ルートの捜査だが、最初は西松建設OB団体による二階議員の838万円に及ぶ突出したパー券購入の捜査からはじまった。

 はじまったというより、これは西松建設の社長らを逮捕した直後に分かっていたことと推察できる。

 冒頭で述べたように、東京地検の情報操作による世論誘導と思える今までの捜査情報の恣意的なリークが日本中を万円していたが、ここに来てやっとフリーのジャーナリストらによる徹底的な和歌山県内選挙区への現地取材により、二階議員側と西松建設との関係を裏付ける状況証拠が続々と明らかになってきた。

 
職務権限の観点から見れば、小沢代表はあくまで野党の代表に過ぎないが、二階議員は現役の大臣、ことはきわめて重大である。

 日刊ゲンダイなどの現地取材による記事によれば、二階議員は西松建設にパーティー券を買ってもらっただけでない。二階大臣の後援会事務所が何とこともあろうか、西松建設の建設和歌山営業所があるビルと同じビルにあることが分かった。

“二階大臣地元事務所”西松建設と同居していた

 838万円のパーティー券以外に、西松建設からの巨額なウラ献金疑惑が浮上している二階俊博経産相。二階経産相は国会で西松との特別な関係を否定していたが、地元・和歌山では“密接”な関係にある。

 「二階議員の事務所(自民党和歌山第3選挙区支部)と、西松建設の営業所は同じ和歌山市内のビルに同居している。さらに二階議員の“後ろ盾”があったおかげか、西松建設は和歌山県の公共事業も受注しています。昨年4月に開通した和歌山県岩出市と大阪府泉佐野市を結ぶ『泉佐野岩出線』内に建設された『新風吹トンネル』(673メートル)もそのひとつです」(地元事情通)

 西松建設との関係は、建設業界では「東の小沢一郎、西の二階俊博」と呼ばれるほど。 二階経産相が和歌山県議時代に幹部社員と知り合って以来の付き合いで、同じ中大出身ということもあって、逮捕された前社長の国沢幹雄が直接、二階事務所との窓口役をつとめていた。

(取材協力・ジャーナリスト横田一) (日刊ゲンダイ2009年3月9日掲載)

 上の事実ひとつだけを見ても疑義は深まる。

 その後、地元選挙区(和歌山3区)にはあちこちに西松建設がつくった公共の建築物がたくさんあり、それらを地元では“
二階ハウス”と呼んでいることが判明した。その昔、ムネオハウスというのがあったが、二階ハウス”が和歌山県にあるというのだ。 総工費12億円で“二階ハウス”を施工したのも西松建設である。

 和歌山県有田郡広川町は人口8000人にも満たない小さな自治体だが、そこに総工費16億4800円で建てられた豪華な役場庁舎がある。 その自治体では、二階議員の熱心な支援者が実に2代にわたって町長を務めているという。しかもその自治体の庁舎施工がくだんの西松建設とあってはなにおかいわんやではなかろうか!?

 以下の日刊ゲンダイの記事は、二階議員側と西松建設側との関係を示す状況証拠である。現職大臣としての二階議員の立場を考えると、ことは重大である! 

二階の地元選挙区で西松建設がやったこと

 「違法性は認識していない」「資金提供を受けた記憶はない」「詳細を承知しているわけではない」――。

 西松建設の違法献金事件で窮地に立つ二階俊博経産相(70)は、口を開けば「ないない」づくし。だが、西松が二階大臣の地元・和歌山県で受注した公共工事は「あるわ、あるわ」。06年度末までの6年間だけで、受注総額は78億円に上る。

 西松は別表の通り、和歌山県内でコンスタントに公共工事を受注してきた。気になるのは、いずれも二階大臣の選挙区の衆院和歌山3区(御坊市、田辺市、有田郡、日高郡など)に、一極集中していることだ。

 地元関係者が「10億円を超える事業自体が珍しい」と声を揃える地域で、西松は“ビッグプロジェクト”を次々と請け負ってきたのである。

 二階大臣は御防市出身。1983年まで同市選出の県議として、精力的に公共事業誘致に取り組んだ。国政挑戦前に開かれた出陣パーティーでは、江崎真澄元通産相がこんな挨拶を述べていた。

 「県会議員在職中は、二階橋、二階道路、二階構想と、国会議員以上の活躍をしている」

 最近もある御坊市の市議は、二階大臣の公共事業への影響力について、「市町村発注の小さな事業まで“大将”の言うことを聞かされる」と、建設業者からグチを聞かされたという。

 「二階さんが西松と接点を持ったのは、県議時代のこと。西松が地元でダム工事を請け負って以来の付き合いと聞いています。西松の和歌山営業所と、二階さんの事務所は市内の同じビルに入っていた。逮捕された西松の国沢幹雄前社長とも中央大の同期生で親しい仲でした」(政界関係者)

 西松はダミー団体を通じて、二階派と二階個人のパーティー券約868万円分を購入。二階大臣の資金管理団体「新政経研究会」にも、95〜98年に計3回、総額780万円の献金を送っていた。

 二階大臣の政党支部には、西松が企業献金隠しのために社員ら計60人の名義で計300万円を毎年振り込んだり、直接、巨額の裏金を渡したとの一部報道もある。

 西松マネーと地元公共事業の受注に因果関係はあるのか。地検特捜部の徹底捜査が待たれる。

【西松建設の和歌山県内での受注工事】

◇着工年/発注者/工事名/請負代金

◆02年3月/日本道路公団/湯浅御坊道路(御坊市―有田郡)川辺第1トンネル避難坑/11億6373万円

◆03年2月/旧龍神村(田辺市)/旧国民宿舎「季楽里 龍神」整備建築/9億6000万円

◆03年5月/有田郡広川町/町道柳渕石塚線道路改良/4億2219万円

◆04年3月/和歌山県/泉佐野岩出線新風吹トンネル/6億1695万円

◆04年4月/社保庁和歌山社保事務局/社保紀南総合病院建て替え(4期)建築(田辺市)/9億4500万円

◆04年5月/日高郡印南町/印南小学校校舎大規模改造/2億100万円

◆04年6月/日高郡日高町/志賀保育所増改築/2億540万円

◆04年10月/御坊市外7カ町村病院経営事務組合/国保日高総合病院救急手術室棟増築/16億9000万円

◆06年3月/有田郡旧吉備町/藤並保育所改築/5億1500万円

◆06年9月/国交省近畿地方整備局/紀の川築港地区堤防強化/10億5165万円

(日刊ゲンダイ2009年3月11日掲載) 
2009年03月14日10時00分 / 提供:ゲンダイネット

 さらに、ここにきて、やっとのことで一般紙も二階大臣の疑惑、疑義を本格的に追い始めた。以下は東京新聞の3月16日の記事である。

二階氏地盤で8割受注 西松、和歌山の工事
東京新聞 2009年3月16日 朝刊

 準大手ゼネコン西松建設の巨額献金事件で、同社が和歌山県内で受注した公共工事のうち約八割が、二階俊博経済産業相の地盤である衆院和歌山3区内に集中していることが分かった。二階氏が代表を務める自民党二階派の政治団体「新しい波」は、同社のダミーの政治団体に八百三十八万円分のパーティー券を購入してもらっており、両者の密接な関係が浮き彫りになった。

 西松の工事経歴書によると、二〇〇二年以降、同社が和歌山県内で受注した公共工事は十一件、受注高は計約七十八億円。このうち和歌山3区内が九件、計約六十一億円を占めている。

 内訳は、御坊市外五ケ町村病院経営事務組合発注の「国保日高総合病院救急・手術室棟増改築工事」(〇四年十月着工)を十六億九千万円、旧龍神村発注の「龍神村総合交流施設拠点整備建築工事」(〇三年二月着工)を九億六千万円でそれぞれ単独受注。

 共同事業体(JV)では日本道路公団発注の「湯浅御坊道路川辺第一トンネル避難坑工事」(〇二年三月着工)、社会保険庁和歌山社会保険事務局発注の「旧社会保険紀南総合病院建替工事(四期)建築工事」(〇四年四月着工)を受注し、西松の請負額はそれぞれ約十一億六千万円、約九億五千万円だった。

 このほか、地元自治体発注の町道改良工事や保育所改築工事、校舎改造工事など億単位の公共工事を〇三−〇五年に次々と単独受注していた。

 政治資金収支報告書によると、西松のOBが代表を務めた実体のない政治団体「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」は〇四−〇六年、新しい波のパーティー券八百三十八万円分を購入している。

 東京地検特捜部は今後、政界に流れた西松の資金の流れを解明するために、二階氏側を含め自民党の政治団体側からも事情聴取する方針を固めている。


  「国策捜査」と揶揄、批判されてきた東京地検特捜部だが、ここに来て政界に流れた西松の資金の流れを解明せざるを得なくなった。 まさに東京地検は「やぶへび」状況に追い込まれている。