東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 政治 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【政治】

「旅券返納 日本の対応異例」 米報道団体など疑問視

 【ワシントン=斉場保伸】イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」が一部を支配するシリアへの渡航を計画していたフリーカメラマン杉本祐一氏(58)に対し、日本政府が旅券の返納を命じた問題で、米国の報道団体には報道の自由の観点から「世界的に見ても異例の対応」との受け止めが広がっている。報道の自由は民主主義社会の根幹にかかわるだけに、米各メディアも一斉に報じ、日本国内で憲法違反の疑いが指摘されている現状を伝えている。

 メディア規制の動きを監視する「国境なき記者団」米国事務所代表のデルフィン・アルゴン氏(30)は「米国でそんなケースは聞いたことがない」と指摘。基本姿勢として「戦争取材に関係する危険性は、ジャーナリスト個人か所属する報道機関が評価するものだからだ」と説明した。

 米人権・報道団体「フリーダムハウス」で報道の自由度の格付けを担当するカリン・カールレーカル部長(42)も、「米英でもこの数カ月に『イスラム国』に人質を殺害されたが、日本政府の取った対応は世界的に見ても極めて異例だ」と指摘。その上で「政府は(国民を)人質に取られたくないだろうが、それでも記者が行くという場合の最後の命の決断は記者がするものだ」と述べ、政府の強力な関与に疑問を呈した。

 ただ人質に取られた場合の政府の役割について、アルゴン氏は「安全に解放するため必要な措置を取る責任がある」との立場。一方のカールレーカル氏は「必ずしも責任があるわけではない」と意見が分かれた。

 米CNNテレビは、東京電で「ジャーナリスト杉本氏は、権利が侵害されたと述べた」と報道。米インターナショナル・ビジネス・タイムズは、コーネル大のアナリーズ・ライルズ教授の「言論の自由を保障する憲法と現実との間には相違がある。だが日本の裁判所は、政府と異なる解釈をすることには消極的だ」との独自の見方を掲載している。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo