福井県南部に11基の原発を持つ関西電力が、9基の運転を続ける意向を表明した。東京電力福島第一原発事故を経ても、原発に頼る姿勢が鮮明になった。

 9基のなかには、運転開始から40~38年の高浜1、2号機と美浜3号機が入っている。

 原発事故の後、国は原発の運転期間を原則40年とし、最長20年間、延長できるとした。だがそれは例外として1回だけ、という前提だ。その場合も機器の劣化を確かめる特別点検が必要で、原子力規制委員会の審査に合格しなければならない。

 国が「原発依存度を可能な限り下げる」方針を示すなか、事故前の原発依存率が5割を占めた関電は、とくに存廃の選別努力が求められている。

 そんななかでの「9基稼働」方針は納得できない。

 事故後、火力発電の燃料費がかさんだ影響で、関電は4期連続の赤字になりそうだ。昨年末には電気料金の再値上げを国に申請した。認可されれば全国で2番目に高い水準となる。

 原発を動かしさえすれば、料金は下げられる。そんな経営判断が背後にあるのだろう。

 これでは「3・11」以前の発想と基本的にかわらない。

 福島の事故は、原発に多くの課題をつきつけた。

 福井には関電以外も含めて14基の原発が集中する。同時に緊急事態に陥った時、それぞれを安全に制御することの難しさは、福島事故が示した通りだ。

 全電源喪失の弱点がさらされたことで、テロ対策も厳しく求められる。40年超の運転には、電源ケーブルの難燃化など特別な安全対策が必要で、数千億円かかるとの見方もある。

 関電の各原発の使用済み核燃料の貯蔵プールは、再稼働が続けば数年で満杯になるといわれる。福井県は中間貯蔵施設を県外に設置するよう求めるが、そのめども立っていない。

 原発事故から約4年たつが、関電は原発を動かせばすぐ突き当たるこうした課題に説得力ある解決策を示せていない。

 いずれ電力小売りが完全自由化されたら、関電は利用者に選ばれる立場になる。多様な電源の確保は、生き残るためにも必要な経営努力ではないか。

 各電力会社は、「安定供給」を理由に、原発依存からの脱却を求める声を退けてきた。稼働可能な原子炉を最も多く持つ関電はその筆頭に立っている。

 関西は原発ゼロで迎えた昨夏とこの冬を乗り切りつつある。この際、経営陣は「原発に依存しない」を前提にした経営戦略を本気で練ってはどうか。