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BOOM BOOM SATELLITESに学ぶ、クリエイターの心構え
インタビュー・テキスト:矢島由佳子 撮影:豊島望(2015/02/09)
1997年にヨーロッパでデビューしてから18年間、ストイックに自分たちの表現力を磨きながら、一切の妥協を許さずに作品作りを続けてきたBOOM BOOM SATELLITES。前回のインタビュー記事では、2年ぶりのアルバムとなる『SHINE LIKE A BILLION SUNS』の制作期間中に襲った病との闘いによる孤独や絶望から、希望を手にして美しき傑作を完成させるまでのドキュメンタリーをお伝えした。「妥協を許さない作品作り」をしているのは、もちろんBOOM BOOM SATELLITESに限らず、どんなジャンルのアーティストも同じだろう。しかし、彼らの制作において特徴的なことは、二人が共に重ねてきた人生経験からこそ生まれるサウンドや情景を、なにひとつとして削ぎ落すことなく作品に落とし込むために、プロデューサーやエンジニアなど他の誰の力も借りずにパッケージングしていることである。
プライベートスタジオにこもりながら二人きりで完成させた『SHINE LIKE A BILLION SUNS』は、2月4日に世に放たれた時点から、川島と中野のものだけではなく、聴いたあなたのものになる。彼らが描いた希望や救いがより多くの「あなた」のものになるよう、二人は様々な企てを実施。ひとつは、若手クリエイターを発掘する目的も含まれた『リミックスコンテスト』『VJコンテスト』の開催。もうひとつは、篠崎恵美、宮崎真一朗、與座巧、関根正悟、redjuice、RIBBONESIAという6人の気鋭クリエイターが、アルバム収録曲の世界観を表現した『カバーアートプロジェクト』。今回は、その6人にBOOM BOOM SATELLITESの世界観からどのようなインスピレーションを受けたかを訊いたが、どのコメントからも、川島と中野のストイックな精神力と創造力に感化され、普段の自分たちの表現の枠を超える力を発揮しようとしている様がうかがえる。前回のインタビューで中野が述べた、「一瞬で消えてなくなってしまう儚いエンターテイメントではなく、もっと人の人生に深く刺さっていくことがやりたい」という発言が象徴する彼らの姿勢に、6人のクリエイターたちからの視点も交えながら迫っていく。
BOOM BOOM SATELLITES(ぶん ぶん さてらいつ)
1990年、中野雅之と川島道行によって結成。エレクトロニックとロックの要素を取り入れながら、新しい道の音楽を想像し続ける日本屈指のクリエイターユニット。1997年、ヨーロッパでデビュー。UK音楽誌『Melody Maker』は、「The Chemical Brothers、The Prodigy以来の衝撃!」と報じたことをはじめ、多くのメディアに大絶賛される。2004年には映画『APPLESEED』の音楽を担当、その後もリュック・ベッソン監督の映画『YAMAKASI』やクリストファー・ノーラン監督『ダークナイト』で楽曲が起用されるなど、多くのクリエーターから愛され続けている。2015年2月4日、9枚目のアルバム『SHINE LIKE A BILLION SUNS』がリリース。
BOOM BOOM SATELLITES OFFICIAL SITE
他のエンジニアの方に振ったときに、「なんでこうなったんだろうな」とか「あんまり曲の意図が伝わってないのかな」とか、重要なことが削ぎ落されてしまったように思ってしまって。(中野)
―BOOM BOOM SATELLITES(以下、BBS)は、楽曲制作からレコーディング、そしてミキシングまで、お二人だけでやる制作方法をとられていますが、そもそも二人だけで制作を完結させたい理由を訊かせてもらえますか?
中野:あいだに1人誰かを通すだけで、自分がイメージしているものを実現するのが難しくなってくることがあって。だから「あとはもう工場でCDをプレスするだけです」っていう工程まで、自分たちでやりたいんです。
―でも、あいだに人が入った方が、客観的な意見やプラスアルファのアイデアが入ってよりいいものになる、っていう考え方ももちろんありますよね。
中野:そっちの方が一般的ですよね。もちろんそういうことが世の中にたくさん存在しているのも理解はしていますし、経験もあるんですけど……うまくいったことがないんですよね。
川島:そうだね。
中野:特にミックスを他のエンジニアの方に振ったときに、「なんでこうなったんだろうな」とか「あんまり曲の意図が伝わってないのかな」とか、重要なことが削ぎ落されてしまったように思ってしまって、結局全部自分でやり直すことになったこともあって。
―お二人の頭の中で完成形がはっきりイメージできているからこそ、それを具現化する作業の中には他者を要さないということでしょうか。
中野:昨日、過去のミュージックビデオを見返してたんですよ。“NINE”とか、僕が編集に関わったものの方が圧倒的にいいと思ってしまったんですよね(笑)。面倒くさいくらいにスタッフに注文を出したり、自分で映像を編集したりしたミュージックビデオに関しては、すごく気持ちよく見れたんですけど、そこまでの人間関係を築けていない人とやった作品や、時間切れで納品してしまった作品に関しては、本当に目を向けられなかったんです。
―ミュージックビデオも自らディレクションされてるんですね。
中野:ミュージックビデオって「プロモーションビデオ」とも言う通り、昔は単なるプロモーションツールだと思っていて、どこか自分の手から離れてしまっているものだという感覚があったんですけど、そうじゃなくて残るものだと気づいてからは、すごく面倒くさい人だと思われてもいいから、徹底的に口を出すようになったんです。でも、自分は映像の専門家じゃないから、付き合ってくれるスタッフにも迷惑をかけないように、コンテとかもすごく頑張って描きました。そうしたら「中野さんがやるって言うなら」って、みんな頑張ってくれたんですよね。
周りの人たちが言ってくれる「今回の作品もすごくよかったですよ」とか、そういう言葉に甘んじることなく、自分のハードルをずっと上げてやってきて、それを実現してきていると思う。(川島)
―川島さんは、結成から25年間、「作品作り」に対して妥協を許さない中野さんと一緒にずっとやって来られて、もちろんぶつかることもあったんじゃないかなと思うんですけど。中野さんのクリエイティブへの姿勢ってどう見られてますか?
川島:尊敬できることがほとんどですね。周りの人たちが言ってくれる「今回の作品もすごくよかったですよ」とか、そういう言葉に甘んじることなく、自分のハードルをずっと上げてやってきて、それを実現してきていると思うので。まあ、「中野さんはそうやって進歩してきていますよ」とここで言っても、中野さんには信用してもらえないと思うんだけど(笑)。
中野:そんなことないよ(笑)。あ、でも、昨日いろんなミュージックビデオを見てたら、昔の音もよかったりするわけ。すると、「あれ?」ってなる。つまり、ずっと積み上げてきているつもりだから、昔の曲を聴いたらひどくてがっかりするのかなと思ったら、全然そんなことなくて。それで、むしろ「今の俺、大丈夫か? ちゃんと積み上がってるか?」って考えてました。
川島:常にいいってことなんじゃないのかな?
中野:そうなのかな? ……いや、そんなことはないはず。