阿部峻介
2015年2月9日16時53分
ヒトの細胞を注文したのに別の細胞が届いた――。大阪大と大阪大大学院工学研究科の男性教授がこう訴え、がん細胞販売会社(大阪府茨木市)を相手に計約560万円の賠償を求める訴訟を起こした。教授らは「1年3カ月の研究がムダになった」と主張。これに対し、会社側は大阪地裁で9日に開かれた第1回口頭弁論で訴えを退けるよう求める答弁書を出した。
訴状によると、教授の研究室の研究員が2011年12月、がん細胞販売会社に「ヒトのがん細胞」を発注した。研究員は納品された細胞で培養の研究に取り組み、教授と連名で論文を執筆。12年1月から日本生理学会などで発表したが、13年2月にこの業者から買ったヒト細胞とくらべると、細胞の形や特性が異なることが判明。連絡を受けたがん細胞販売会社が調べた結果、「マウスのものと推定される」と結論づけた。
教授らは「がん細胞販売会社のミスでヒト細胞ではない細胞で研究・発表し、論文の訂正対応などに追われた」と主張。STAP細胞をめぐる問題を踏まえ、「昨今は研究成果の正確性への世間の目は厳しい。教授は研究者生命を脅かされかねない状況に置かれた」とし、慰謝料や研究期間に研究員に支払った給与などの賠償を求めている。
9日の弁論に答弁書を提出したがん細胞販売会社側は、代理人の弁護士も含めて出廷しなかった。(阿部峻介)
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