しかし、必要なお金は毎年増え続けています。そこで、毎年のようにこの「借金できる上限額」を引き上げています。これを引き上げなければアメリカ政府は国債を発行してお金を借りることができず、アメリカの公務員に給料が払われなくなり、公共サービスが止まってしまいます。
さて、この債務上限問題ですが、今の法律では2015年3月までしか借金を増やせないのです。もう少ししたらニュースで目にすることも増えてくるでしょう。
そこで今日はちょっと先取りして債務上限問題について書いてみます。
考えられる選択肢
上記図を見ていただければわかるように、アメリカの借金は急速に増えています。アメリカはその強大な軍事力と、金などの資産と、ドルの信用性で今の影響力を保っている国です。このどれか一つでも欠けるとEUやロシア、中国などにその座を取って代わられてしまいます。
さて、いつまでも借金を増やし続けられないアメリカがどうするか。考えられることを書き出してみます。
選択肢1:債務上限を引き上げて問題を先送りする
困ったことは先送り。日本と同じ方針です。今のところ最も無難で、最も可能性の高い措置だと思います。しかし、今年はそれでよいとしても、借金を増やしているといつか限界がくるでしょう。そうするとどうなるかが選択肢2以降です。
選択肢2:諦めてデフォルトする
デフォルトすると、アメリカの権威や基軸通貨ドルの信用は失墜します。これはなんとしてでも避けようとするはずです。選択肢3:緊縮して債務を減らす
まずは無駄を減らせというのは心情的には理解できます。しかし、無駄の削減で健全化できるレベルの赤字ではありません。(日本でも「まずは無駄を減らせ」という声が多くきかれます。これは実に耳心地がよく正論ですが、アメリカと同じく無駄を減らしたところでどうにかなる次元の話ではありません。)
選択肢4:大増税する
無駄の削減ができないなら、増税しようという考え方です。大増税は景気に悪影響及ぼしますし、国民の不満も高まります。アメリカ流の選択肢
ここまでに上げてきたのはどれも厳しい選択肢ばかりですね。
しかし、アメリカにはまだ裏技が残っています。以下は超大国アメリカにしかできないことです。選択肢5:騙す、脅す、踏み倒す
弱い国を騙したり脅したりして債務を踏み倒す作戦です。デフォルトするのと違うところは、特定の国や組織への借金のみ踏み倒すというところです。(アメリカにとって、今アメリカ国債を持っている国にそれを売られるのも非常に困る事態です。かつて日本の橋本総理(当時)が「米国債を売りたくなったこともある」と発言しただけで猛反発を受けました。)
選択肢6:戦争する
脅してもいうことをきかなければ、言いがかりをつけてぶっ潰してしまいましょう。どさくさにまぎれて自国に有利なルールを作ればOKです。(もちろんOKではありません…。)
尖閣問題で中国からの借金をチャラに
脅すとか戦争するとか物騒なことを書きましたが、実際にどこの国からの借金を踏み倒すのでしょうか。何度も書いている通り、アメリカの債務は相当膨れ上がっています。少し踏み倒した程度ではどうにもなりません。たくさん持っている国を一気にチャラにしてしまうのが手っ取り早いでしょう。
そこで、アメリカ国外でアメリカ国債をもっている主な国・組織を表にしてみました。
(全体の6割はアメリカ国内で保有されています。しかし、アメリカ国債は他国に買い取らせて売らせないのが肝心です。返済しなくていい借金はしていないのと同じだからです。)
保有者 | 保有額 |
中国 | $1,170,100,000,000 |
日本 | $1,132,800,000,000 |
カリブの金融機関 | $283,700,000,000 |
OPEC | $260,100,000,000 |
ブラジル | $257,000,000,000 |
台湾 | $193,100,000,000 |
スイス | $186,900,000,000 |
ロシア | $164,100,000,000 |
イギリス | $145,000,000,000 |
ルクセンブルク | $144,800,000,000 |
圧倒的に中国と日本が多いですね。踏み倒すならここしかありません。しかし、日本は脅せばなんとでもなりますが、中国はそうもいきません。軍事費を拡張して、21世紀の大国の1つになっています。
ところで、アメリカの法律にIEEPAというものがあります。これは簡単に言うと、アメリカに敵対する国の持っている米国債は無効にできるという法律です。つまり、中国を敵国と認定すれば1兆ドル以上の借金を踏み倒せるのです。
(しかも中国は最近アメリカ国債を売り始めていて、アメリカから敵視されています。中国としてはお金が返ってこないと困るので、さっさと売ってしまいたいのでしょう。)
そこで関係してくるのが尖閣諸島問題です。オバマ大統領は昨年日本にきて、わざわざ「尖閣諸島は安保対象」だと明言しました。これは、中国が尖閣諸島に侵攻したら、アメリカが尖閣諸島を守るということ、つまり中国を敵国とみなすと宣言しているわけです。ぼくの目には、これはアメリカが中国を挑発して、先に手を出させて借金を踏み倒そうとしているように見えます。もちろん中国もそれくらいのことは分かっていますから、まだ尖閣諸島に手を出せません。
(この他、アメリカ議会でもわざわざ「尖閣は安保対象」と議決したりしています。また、TPPは中国を経済的に包囲する目的があるといわれています。そもそも軍事的にも尖閣諸島は大事な場所に位置しています。どうもきな臭いですね。)
おまけ…点と点が繋がる時
最後の方の未来予想はちょっと壮大すぎて胡散臭いと思われたかもしれません。もちろん、将来について確実なことは誰にも分かりません。今日紹介したことは、あくまで想定されるシナリオの一つです。(例えば中東でイスラム国が暴れだすなど、アメリカにとって想定外だった事態も起きています。)
このブログでは国際情勢、経済や金融、歴史などを中心に様々な豆知識を紹介しています。まとまりがないと思われるかもしれませんが、色々なことを関連付けて考えられると未来予想図の幅が広がるのではないでしょうか。よかったら皆様も色々考えてみてくださいね。
(財政問題といえば増税とか緊縮という話ばかりです。尖閣問題といえば歴史とか不審船の話ばかりです。TPPはコメの話ばかりです。沖縄基地は近隣住民の話ばかりです。しかし、これらの話はバラバラではありません。どこかで繋がっているのです。)