中国で毎日のように失脚する汚職幹部のニュースを見ると、開いた口がふさがらないことが多い。その汚職の規模が半端ではないからだ。
周永康・元政治局常務委員は900億元(約1兆7000億円)、令計画・元党中央統一戦線部長は837億元(約1兆5800億円)、徐才厚・元中央軍事委員会副主席は現金1トン、谷俊山・元中国人民解放軍総後勤部副部長は200億元(約3800億円)を蓄財したという。徐才厚氏の現金はあまりに大量で数えられず、重さを量るしかなかった。
最初はこうした金額が中国でありがちな誇張かと思った。しかし、下っ端の官僚でも数百億ウォン(数十億円)を集めるのが中国の現実だ。昨年11月に河北省秦皇島市の水道担当公務員が逮捕されたケースでは、自宅から現金1億2000万元(約22億6000万円)、金塊37キログラム、不動産68棟の権利書類が発見された。高級官僚はトラ、下っ端官僚はハエにしばしば例えられるが、この公務員は「トラ級のハエ」と呼ばれた。
中国は専制王朝が崩壊後、ほどなくして共産党による独裁時代を迎えた。党が王朝に取って代わった。民主主義を経験しなかったため、権力に対する民主的なけん制の基盤が弱かった。
そうした状況では、少々権力があれば、いわゆる権力による横暴がはびこる。周永康氏は石油業界最大手で総資産2兆4000億元(約45兆3000億円)の中国石油(ペトロチャイナ)を自在に操った。徐才厚氏は230万人の人民解放軍を相手に「階級」をえさに商売をした。けん制されない権力による蓄財は最も容易なことだった。薄煕来・元重慶市党委書記の妻、谷開来氏が同業者の英国人実業家を毒殺したことも力による横暴だった。
大多数の中国人はそうした横暴に憤る。しかし、組織的な抵抗をしようとは夢にも思わない。共産党の監視と統制を恐れるためだ。横暴を告発する言論の自由もない。むしろ上下、主従関係に順応するほうがましだと考える傾向がある。権力者に頭を下げることを「秩序」と呼ぶ中国人にも出会った。
中国人の心に深く根を下ろした主従の概念は国際関係にも当てはめることができそうだ。共産党機関紙の人民日報は昨年11月、北京で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を「万邦来朝」と表現した。唐の時代のように全ての周辺国が朝貢に訪れたという意味だ。
先ごろ、韓中政府関係者による定期交流会合で、中国側関係者が韓国側関係者に「朝貢外交時代はアジアは平和だった」という趣旨の発言を行ったという。習近平国家主席は今月初め、原油価格暴落で財政難に陥っている中南米の産油国の当局者を北京に集め、巨額を融資することで、「ホームグラウンド外交」を宣言した。
中国は既に国際舞台で権力側に立ったと考えているようだ。トウ小平氏の「韜光養晦(とうこうようかい=才能や野心を隠し、力を蓄える処世術)」は既に過去の言葉になった。中国が米国に代わる覇権国になる日、中国の横暴にさいなまれるかと思うと恐ろしい。