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衝撃のVICEスクープ:安倍首相はカイロ演説で自ら「ISILと闘う」と追加、原発輸出を理由に対策本部がヨルダンに?

アメリカの有力メディアVICEニュースが、衝撃の記事を公開している。これがもし事実であれば大きなスクープである。

それによれば、安倍首相はカイロで行った演説で、あらかじめ用意されていなかった「ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるため」、「ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」という2つの文を付け加えたのだという。

また彼らは、テロ対策本部がトルコではなくヨルダンに置かれた理由として、日本の原発輸出が理由であると主張しているのだ。

用意された原稿とは異なるスピーチ

これは「Inside Japan’s New War With the Islamic State (日本におけるイスラム国との新たな戦争の内幕)」と題された記事で、すでに大きな話題を呼んでいる。

それによれば、安倍首相はカイロ演説に際して、外務省が準備した原稿とは異なる2つのフレーズを追加したことを外務省高官である内部告発者が明らかにした。

それが

イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。

というフレーズだ。言うまでもなく、この演説の二日後には湯川・後藤両氏の動画が公開され、イスラム国(ISIL)からの2億ドルの身代金要求がおこなわれた。

過激派に対する宣戦布告

VICEは、日本の大手マスコミが政府による対処ミスの可能性を報じていないことを指摘しつつ、スピーチの制作過程について報じてテレビ朝日に外務省が抗議したことを紹介。

そして、安倍政権がテロに対して適切な対応を行ったことを強調しつつ、交渉の責任を議論すること自体が、テロを許すことであると主張している、とも紹介する。

外交の即席爆発装置

この匿名の外務省高官は、安倍首相によるカイロ演説を「外交のIED(Improvised Explosive Device即席爆発装置)」にたとえて非難しているが、その上で彼は、このスピーチにについて「ISILのような過激派に対する宣戦布告となることは、入省1年の新人官僚でもわかること」と厳しい言葉を述べる。

「闘う」?それとも「戦う」?

また興味深いことに、この安倍首相のカイロ演説の後に、予定されていなかったスピーチの該当部分の表記についても、外務省内部で議論があったと報じられている。

彼らは首相の放った「たたかう」という言葉に、「闘う」という象徴的な感じを当てるか、より直接的に戦闘をイメージさせる「戦う」をあてるかを議論し、最終的に「闘う」が選ばれたのだという。

英訳でも同様に、「warring with ISIL(ISILと戦い)」や 「fighting with ISIL(ISILと戦い)」ではなく、最終的に「contending with ISIL(ISILとの闘い)」が選ばれたという。

テロ対策本部は原発輸出を理由にヨルダンに

また、VICEによる2つ目のスクープは、テロ対策本部がトルコではなくヨルダンにおかれたのは、日本によるトルコへの原発輸出への悪影響を懸念したため、という警察庁関係者の匿名告発を報じていることだ。

それによれば、トルコはこれまでISILとの人質解放交渉に成功した実績があり、彼らはベストな選択肢であると考えられていた。しかし、もし交渉が失敗すれば、トルコの黒海沿岸に建設しようとしている原子力発電所に悪影響を及ぼす可能性があるとして、最終的に対策本部はヨルダンになったのだという。

このスクープが事実であるならば大きな批判も

以上が、VICEニュースの衝撃的な報道だが、もちろん政府はこの事実を認めていない。もし本当に、安倍首相が自らこの「挑戦的な」一文を付け加え、そして原発輸出への悪影響を懸念してテロ対策本部をヨルダンに決定したならば、大問題となるからだ。

たとえば、2月3日の衆院予算委員会で、共産党・小池晃政策委員長が、政府が昨年12月の時点で後藤健二氏らの身柄拘束を把握していたことを触れ、安倍首相のカイロ演説が、彼らの身に危険を及ぼす可能性があると認識していたのかを問いただした。

これに対して首相は、「事の本質をしっかり見なければいけない」とのべて、「テロを恐れるあまり脅しに屈する態度を取れば、効果があったとテロリストが考え、日本人に新たなリスクが発生してくる」と反論。「テロリストに過度な気配りをする必要は全くない」と述べている。

しかし、もし自ら安倍首相が、後藤健二氏らの身柄拘束を知りつつも、ISILを名指しするかのような文を加えたならば、その責任を追及する声も大きくなるだろう。

原発への悪影響も事実であれば大問題

またテロ対策本部が、トルコではなくヨルダンに置かれた理由についても、この内部告発が事実であれば大きな議論を呼ぶだろう。

実際に専門家の中にも、対策本部をトルコにおくべきだったと指摘する声はある。1月26日のテレビ朝日『報道ステーション』で、同志社大大学院・内藤正典教授はトルコが2014年に49人の人質を取られたものの、3ヶ月に及ぶ交渉で開放に導いた実績を指摘。また、トルコがアメリカ軍ら有志連合に対して基地を貸し出していないことも、ISILとの交渉に意味があることを述べている。

にもかかわらず、ヨルダンに対策本部を置いた理由が、(東日本大震災を経験した日本の)原発輸出であるならば、大きな非難を呼ぶことになるだろう。

ただし、こちらについては、ヨルダンに対策本部が置かれた理由として、地理的要因や交渉相手の性質などがあると指摘する声もあり、VICEニュースの取材に答えた警察庁関係者が、事実を述べているかは定かではない。

たとえば、東京大学先端科学技術研究センター・池内恵准教授は、自身のFacebookで「日本政府がシリアと国境を接するトルコではなく、イラクと国境を接するヨルダンに現地対策本部を置いたのも理解できる」として、ISIL側の交渉相手が「シリアではなくイラクにおり、イラクのアル=カーイダの直系の系統であって、創設者のザルカーウィーがヨルダン人であるように、ヨルダンと密接な関係を持っている」からであったと指摘している。

いずれにしても、こうした指摘があることを前提として、VICEニュースの報道が事実であるかという調査は、今後もおこなわれていく必要があるだろう。

彼らが述べるように、政府の対応を検証する必要は十分にあり、それは「テロに屈しない」という姿勢とは全く別のレベルの議論において論じられなければならないからだ。

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