インターネット上のストレージサーバーにユーザーがファイルを保存できる「オンラインストレージサービス」。いまでは一定容量までなら無料で利用できる個人向けサービスに限っても、たくさんの選択肢がある。
そんな中、これまで紹介してきた「Dropbox」や「Googleドライブ」などと同じく、代表的なサービスの1つとしてよく挙げられるのがマイクロソフトの「OneDrive(旧SkyDrive)*1」だ。
本稿ではビジネスパーソンが仕事で活用するためにこのOneDriveを個人で利用するという前提で、何ができるのか、どういった特長があるのか、向いていない用途は何か、探ってみる。OneDriveのより進んだ活用方法については、右上の関連記事を参照していただきたい。
*1 2014年2月19日、SkyDriveは「OneDrive」という新たな名前に改称された。
「OneDrive」はマイクロソフトが一般消費者向けに提供しているオンラインストレージサービスだ。複数の端末間で同じファイルを簡単に共有したり、他人にファイルを公開したりといった機能を提供している(詳細はこの後に紹介する)。
OneDriveのオンラインストレージは無料プランの場合、標準で15Gbytesまで、特典によって最大23Gbytesまで利用できる。また有料プランの場合、料金はGoogleドライブとほぼ同じだが、最大容量は200Gbytesと少なめだ。
ストレージ容量のプラン | OneDrive | Dropbox(参考) | Googleドライブ(参考) |
---|---|---|---|
2Gbytes | 無料 | 無料 | 無料 |
15Gbytes | − | ||
100Gbytes | 190円/月 | − | $1.99/月(208円/月) |
200Gbytes | 380円/月 | − | − |
1Tbytes | − | 1200円/月 | $9.99/月(1046円/月) |
10Tbytes | − | − | $99.99/月(1万473円/月) |
OneDriveとその他のオンラインストレージサービスとの料金比較(2014年8月29日時点) OneDriveは無料プランの場合、標準では15Gbytesまで利用可能で、写真の自動バックアップ機能を利用したり、知り合いにOneDriveを紹介したりすると特典により最大23Gbytesまで拡大できる。有料プランの料金はGoogleドライブとほぼ同じだが、最大容量は200Gbytesと少なめだ(Googleドライブの円建て料金はTTSレート104.74円として換算)。 |
OneDriveを利用するにはMicrosoftアカウントが必須だが、これは無償で取得できる。
OneDriveと連携しているWindows PCでファイルを作成すると、同期機能によって自動的かつ速やかにOneDriveのオンラインストレージにコピーされ、同じく連携している別のPCや携帯端末にコピーされる(同期される)。インターネット上にあるOneDriveのオンラインストレージにアクセス可能であれば、いつでもどこでもこのファイル同期は実行できる。例えば、会社で作業したファイルをOneDriveで同期しておき、帰宅後に自宅のPCでそのファイルを用いて作業を続行する、といったこともできる。
OneDriveは、Windows VistaやWindows 7/8/8.1、Windows Server 2008/2008 R2のほか、Mac(OS X)やiPhone/iPad/iPod touch(iOS搭載端末)、Nexus 7のようなAndroid OS搭載端末、Windows Phoneなどで利用できる。これらのプラットフォームには、OneDriveをサポートする専用クライアントアプリケーション(以後「クライアントソフトウェア」)が無償で提供されており、インストールするとOneDrive上のファイルの操作ができるようになる。特にWindows 8.1には、標準でクライアントソフトウェアがプレインストールされている(詳細は後述)。
Windows PC の場合、OneDriveのことをほとんど意識することなく、そのオンラインストレージに保存したファイルをエクスプローラーで普通に操作できる。
Windows 7/Windows 8の場合、OneDriveのデスクトップ版クライアントソフトウェアをインストールすると、OneDriveのオンラインストレージとローカルディスクの間でファイルの自動同期ができるようになる。
Windows版のクライアントソフトウェアはデフォルトで、「%USERPROFILE%\OneDrive」というフォルダー以下にあるファイル/フォルダーをオンラインストレージと同期する。設定変更によって別のフォルダーも指定できるが、単一のフォルダーツリーだけが同期の対象となる。そのため、同期したいファイルをこのフォルダー以下に集めて保存する必要がある。
OneDriveフォルダーに保存されたファイルや書き換えられたファイルは、リアルタイムで自動的にオンラインストレージと同期される(そしてオンラインストレージから同様に連携中のWindows PCも自動的に同期される)。またエクスプローラーでは、右クリックで表示されるコンテキストメニューから共有や公開(詳細は後述)といったOneDrive関連の設定ができる。
同期はバックグラウンドで行われるため、同期対象だからといって特に意識してファイルを操作する必要はない。エクスプローラーでファイルの作成や上書き、削除などをしたり、アプリケーションで開いたりできるのも通常と変わらない。インターネット接続がオフラインの場合、同期は中断するもののファイル操作は可能だ。インターネット接続が復旧すれば自動的に変更内容がオンラインストレージに反映される。
OneDriveフォルダーに作業ファイルを集める必要があることを除けば、OneDrive導入前と比べて作業や操作の方法・手順などを大幅に変える必要はないだろう。
一方、Windows 8.1の場合、OneDriveのクライアントソフトウェアがOSに内包されているため、あらためてクライアントソフトウェアをインストールする必要はない(Windows 8.1 Updateを適用して旧SkyDriveからOneDriveに更新する必要はある)。またオンラインストレージのファイルをオフラインで使えるように設定を変更すれば、シームレスな自動同期機能も利用できる。オフラインに設定する方法など、統合されたSkyDriveの各機能については、連載「Windows 8.1クロスロード」の第6回「Windows OSに統合されたSkyDrive機能」が参考になる。
iOSやAndroid OSを搭載したスマートフォン/タブレットでは、それぞれのアプリケーションストア(マーケット)からOneDriveのクライアントソフトウェアを無償でインストールできる。
これらをインストールするとOneDriveのファイル操作(アップロードやダウンロード、削除、移動など)ができる。写真のプレビューのほかオンラインストレージへの自動的なバックアップも可能だ。対応するアプリケーションがインストール済みなら、文書ファイルなどの閲覧・編集もできる。総じて使い方は難しくない。
マイクロソフトはiOS/Androidスマートフォン向けに「Office Mobile」というOfficeファイルの編集が可能なアプリを提供している。これを利用するとOneDrive上にあるWord文書やExcelシート、PowerPointプレゼンテーションを編集できる。
Windows 8/8.1搭載タブレットの場合、Windowsストア版のOneDrive(正確には旧SkyDrive)クライアントソフトウェアがプレインストールされている。そのため、あらためてアプリをインストールすることなく、タッチ主体の使いやすいUIでOneDrive上のファイルを操作できる。
クライアントソフトウェアが未インストールの端末でも、WebブラウザーからOneDriveにサインインできれば、一通りの操作は可能だ。使い勝手はアプリケーションであるクライアントソフトウェアに一歩譲るところもあるが、例えばWebブラウザーしか自由に使えない出先のPCでもファイルの閲覧や簡単な編集ができるのは便利だ。
写真やWMV/MP4/MOV(QuickTimeムービー)フォーマットなどの動画はWebブラウザー上で閲覧・再生できる。
Microsoft Officeファイル(WordやExcel、PowerPoint、OneNote)の場合、Office Online(旧Office Web Apps)によって閲覧や編集、新規作成ができる。(ソフトウェアとしての)Microsoft Officeに比べると機能は少なく、内容が正しく表示されないこともあるが、Microsoft Officeが未インストールの環境では大変便利な機能である。
OneDriveのオンラインストレージに保存されたファイルはデフォルトで、そのアカウント/パスワードを知っているユーザーだけがアクセスできる。だが、特定のファイル/フォルダーを第三者と共有したり、広く一般に公開したりすることも可能だ。例えば、OneDriveのクライアントソフトウェアをインストールすると自動的に作成される「公開」というフォルダーにファイルを保存すると、自動的に一般公開される(インターネット検索にヒットし、誰でも閲覧できるようになる)。そのほかのフォルダーにあるファイルでも、許可する操作(閲覧/編集)や公開範囲(リンクURLを知っている人だけか、インターネット検索にヒットするか)を指定して共有または公開できる。
前述の共有機能を応用して、複数人が同じWord文書を同時に編集するという共同作業も可能だ。
Windows PCにOneDriveのデスクトップ版クライアントアプリケーションをインストールすると、OneDriveのWebサイト経由でそのPCの全ドライブのファイルを閲覧/ダウンロードできるようになる(クライアントソフトウェアのファイル同期機能と関係なく可能)。例えばOneDriveフォルダーに保存し忘れたファイルでも、出先でWebブラウザーさえ使えればそのファイルを閲覧できる。ただし、この機能を有効化するには、事前にセキュリティコードを入力して認証する必要がある(デフォルトでは閲覧できない)。またWindows 8.1では、この機能を利用できない。
Office 2013の場合、その環境にOneDriveクライアントソフトウェアがインストールされていなくても、OneDrive上のファイルをファイルオープンダイアログから指定してオープンできる。
Windows 8/8.1では、Windowsストアアプリからファイルを開いたり保存したりする際、直接OneDrive上のファイルを指定できる。
Windows 8/8.1限定ではあるが、同じMicrosoftアカウントでサインインしたコンピューター間で、デスクトップの壁紙やIMEのユーザー辞書といった各種設定を、OneDriveを通じて同期できる。いちいち手動で設定を変更しなくても、自動的に複数のコンピューター間の設定をそろえられるため、大変便利である。デフォルトで全設定が同期されるが、必要に応じて個別に同期をオフにすることも可能だ(設定の変更方法はTIPS「Windows 8.1で日本語が入力できない場合の対処方法(IME設定同期編)」が参考になる)。
OneDriveで更新履歴が残るのはWord/Excel/PowerPointといったOfficeファイルだけに限られる。そのほかのファイルについては履歴が残らない。もし更新履歴から特定バージョンを引き出すといった機会が多いなら、Dropboxのように全ファイルに更新履歴が残るサービスの方が適している。ただし、OneDriveでも最新のファイルはオンラインストレージに保持されるし、端末側で削除したファイルもOneDrive上のゴミ箱から復元できるので、手軽なデータバックアップとして利用できるといってよいだろう。
OneDriveに限ったことではないが、企業システムから見るとOneDriveへのファイル保存は社外へのファイルの持ち出しにほかならない。それを技術的に禁止する機能や管理ツールはOneDriveから提供されていない(クライアントソフトウェアの起動禁止やOneDriveのWebサイトへのアクセス禁止ぐらいはグループポリシーなどで実現できるだろうが)。
OneDriveのいわば企業向けバージョンといえる「OneDrive for Business(旧SkyDrive Pro)」というサービスでは、システム管理部門などによる組織的な管理が可能だ。ファイルの持ち出しを厳しく管理している企業では、こうしたサービスの方が望ましい。
OneDrive(旧SkyDrive)には、Officeファイルの取り扱いが比較的優れているという特長がある。またWindows 8.1ではデスクトップ版クライアントソフトウェアがプレインストールされていて、手間なく手軽に使い始められる。iOSやAndroid OSにもクライアントソフトウェアが提供されていて、使い方も難しくはない。さらに、以前にあった最大2Gbytesというファイルサイズの上限も、現在は最大10Gbytesまで緩和されている。これから使うオンラインストレージサービスの選択肢として、OneDriveは十分に有り得るのではないだろうか。
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■更新履歴
【2014/09/18】OneDriveに保存可能なファイルのサイズ上限が2Gbytesから10Gbytesに拡大されたことを記事に反映しました。
【2014/08/29】料金比較表を最新情報で更新しました。
【2014/07/14】7月から始まったOneDriveの無料プランの容量増大と有料プランの料金低減を反映しました。
【2014/04/21】SkyDriveからOneDriveへの改称にあわせて、スクリーンショットなどを全面的に更新しました。またMobile OfficeとWindowsタブレット、Officeファイルの同時編集、Windows 8/8.1の設定同期機能について追記しました。
【2014/03/19】料金表を最新情報で更新しました。またGoogleドライブの値下げにあわせて、有料プランの料金比較に関する記述を修正しました。
【2014/02/20】SkyDriveが「OneDrive」に改称されたことを追記し、クライアントソフトウェアのダウンロードリンクを修正しました。
【2013/12/03】SkyDriveの最大容量が100Gbytesから200Gbytesに増量されたことを反映しました。またWindows 8.1にはSkyDriveのクライアントアプリケーションがプレインストールされていることを追記しました。
【2013/04/23】初版公開。
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