日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)で不手際が相次いでいる。
3.11後の原子力政策の転換の中で、もんじゅは存続の意義を厳しく問われている。再稼働を目指すなら国民の信頼回復が何より必要だ。
原子力機構は、もんじゅにはもう後がない正念場であるとの危機感をもって、管理体制の見直しや安全意識の向上など組織改革に取り組む必要がある。
もんじゅは1995年のナトリウム漏れ事故以来、一度も運転していない。現在は運転再開に向けた準備を進めることすら原子力規制委員会が禁じている。準備作業の過程で点検の見落としなど保安規定の違反が相次いだためだ。
原子力機構は昨年11月、命令解除に必要な「機器保安計画」の報告書を原子力規制委に提出したが、点検対象機器の数を誤って報告していたため、12月に再提出した。それが1月になってさらに誤りが見つかり、再度の修正を余儀なくされた。
書類上の不備ではあるが、軽視はできない。ミスを繰り返す背景に、管理能力の不足など構造的な問題があるとみるべきだ。
もんじゅは運転していなくても、設備の維持などで年間約200億円(2014年度予算)の費用がかかる。時間を空費すれば、それだけ国民の税金が無駄に使われる。巨費を要する事業を国民から任されているという緊張感を失ってはいないか。
原子力機構は松浦祥次郎理事長を本部長とする「もんじゅ安全・改革本部」を設け組織改革を進めてきたという。その成果があがっているのか、心もとない。
高速増殖炉は使用済み核燃料から回収したプルトニウムを燃やす。政府と電力業界は核燃料サイクルの要と位置づけてきた。もんじゅの事故でサイクル実現の見通しがくるった。もんじゅは今、研究開発用の設備として生き残りを狙うが、信頼回復ができねば、それもかなわないだろう。