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【社説】

道徳の指導案 多様な育ち妨げぬよう

 小中学校の道徳の教科化に向けて文部科学省が公表した学習指導要領改定案には、徳目を表すキーワードが並ぶ。それ自体は大切な価値だが、国にとって望ましい人間像ばかりが強調されては困る。

 教科書を用いて教え、子どもの成長ぶりを評価する「道徳科」の影響力は、教科外活動とされてきた「道徳の時間」に比べて大きいだろう。最上位の教科として学校教育の中核を担うことになる。

 子どもの学びをどう評価するかや教科書の検定基準をどう作るかはこの先、専門的に検討される。未成熟な人格に働きかけるきわめて繊細な領域である。慎重を期さねばならない。

 学習指導要領は教科の目標や内容を定めている。現行の要領とは違い、改定案で目を引くのは、子どもが学ぶべき道徳性を示すキーワードを列挙している点だ。

 例えば、中学校向けでは「思いやり、感謝」「友情、信頼」「遵法(じゅんぽう)精神、公徳心」「感動、畏敬の念」という具合に分かりやすい。

 半面、先生がこうした言葉に引きずられ、個々の徳目を説き伝えれば道徳性が養われるとする徳目主義に陥る恐れがある。それでは生きた道徳教育にならない。

 貧困や虐待、いじめ、障害などに苦しんでいる子どもがいるかもしれない。「克己と強い意志」や「家族愛」といった徳目の取り上げ方を誤れば、かえって自責の念を強める結果になりかねない。

 子どもの実生活から離れ、教科書の偉人伝や例話を手本とする授業にばかり偏っては、価値観や生き方を束縛して危うい。教育勅語を背骨とした戦前の修身科の過ちを忘れるべきではない。

 その教訓に学ぶとすれば、これからの道徳教育で重要になるのは、子どもに「常識」を疑う力を身につけさせることではないか。国や社会はもちろん、先生や教科書がいつも正しいとは限らないと批判的に見て、考える力である。

 道徳科は「国を愛する態度」をも、子どもに求める。多様な個性を育み、主体性を伸ばすというのであれば、さまざまな議論があってしかるべきだろう。

 「今の日本は愛しているが、戦争をするなら嫌いになる」「原発や米軍基地が愛する日本を悩ませている」−。そうした愛国心も未来を築く行動力を培うはずだ。

 学校や家庭、地域での生の体験や情報から課題に気づき、考えを磨く営みが欠かせない。グローバル時代だ。既成の権威や価値観にとらわれない徳性が問われる。

 

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