​マーク・ザッカーバーグ「多様性とモチベーション。すべてをアメリカ国内から生み出すことはできない。」

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(Pic by Flickr)

テスラのイーロン・マスク、グーグルのセルゲイ・ブリン、そしてヤフーのジェリー・ヤンなどシリコンバレーで創業された企業の43.9%の創業メンバーには海外からの移民が関係しており(アメリカ全体では25%)、イノベーションや雇用創出、そして経済発展には移民起業家の存在が重要なのは、このような数字を見れば明らかです。

しかし、現在イノベーション大国アメリカでは、自国の雇用を守るために、移民を制限し始めており、自分自身の父親がケニヤからの移民でもあるオバマ大統領も、「アメリカの移民システムは崩壊している。」と述べ、アメリカが大きな転換点を迎えています。

↑アメリカの移民システムは崩壊している。(Pic by Flickr)

どの国でも、政治家と起業家の意見は常に一致しませんが、シリコンバレーの中心で世界が数年で変わっていくのを特等席で見ていた、グーグル、ヤフー、リンクトイン、そしてフェイスブックのメンバーは、移民の多様性やモチベーションを信じており、何とか才能ある人たちをアメリカ国内に留まらせるようにと政府に圧力をかけています。

フェイスブックのCEOマーク・ザッカーバーグは次のように述べています。

「今、この新しいビジネスの真っ只中にある世界をリードするためには、本当に才能がある人や、雇用を創出する起業家をもっとアメリカに留まらせるべきだ」


↑「多様性とモチベーション。すべてをアメリカ国内から生み出すことはできない。」(Pic by Flickr)

国の動きが遅くても、もの凄いスピードで変化していく世界と歩幅を合わせていくためには、何とか新しい方法を見つけてプロセスを進めていかなければなりません。

アイデアの宝庫、シリコンバレーでは「起業ビザが取れないのなら、ビザのいらない場所で仕事をすれば良い」という発想から、アメリカ領域外に大型の船を浮かべてコミュニティーをつくり、外国籍の起業家のために住居やオフィスを提供して、ベンチャーキャピタルとのコネクションを生み出しています。

↑シリコンバレー付近に浮かべられる巨大ハブコミュニティー「Blue Seed」(Pic by Flickr)

物理的場所を共有しなくても、パソコン一台あればイノベーションに参加できるという考え方が少しずつ広がっていますが、実際、時代の流れはその逆を向いており、どれだけ多様性あふれる人材と物理的場所を共有できるかが、イノベーションの定義になりつつあります。

隣国カナダでは、アメリカのビザが取得できない「シリコンバレー難民」の起業家を積極的に受け入れており、トロントやバンクーバーなどの大都市だけでなく、人口わずか50万人の都市ウォータールーにも、起業家が集まり、北のシリコンバレーと呼ばれる日も、それほど遠くないのかもしれません。

↑北のクリエイティブ・シティ、トロント。「Pic by Flickr」

このような動きはイギリスやオーストラリア、そしてチリでも始まっており、Startup Genomeの調査によれば、世界のIT都市ランキングには、トロント、バンクーバーの他にもメルボンやシドニーも含まれており、ITのイノベーションハブがシリコンバレーから世界の各地域にどんどん広り、2013年に27%の失業率を記録したスペインでは、起業ビザ法を制定して、新しい風を海外から呼び込もうと国が動いています。

↑新しい風を海外から呼び込むバルセロナ。(Pic by Flickr)

2013年、福岡が「創業支援のための改革拠点」に指定され、日本のシリコンバレーが生まれることが期待されていますが、少子化に伴い、外国人労働者の重要性が優先される現在では、外国人起業家の経済発展スポットとして注目させるのはまだ少し先のようです。

東京在住のマレーシア人起業家ガネサン・ヴェヤラサンさんは次のように述べています。

「外国人労働者を呼んできても雇用が増えるわけではない。雇用を生み出せるベンチャー企業を増やすべきです。そして、起業した外国人が国外逃避しないよう、日本のビザ制度を再考するべきです。」

↑福岡「日本の新しいハブスポット」(Pic by Flickr)

アメリカの一極化から世界へ力が分散される「多極化」へのプロセスが進む中で、世界の優れた才能をどう日本に呼び込むか、その国の政策、そして外交が国の将来を左右することでしょう。

その過程の中で、古い考えを持つ人たちが権力を握り、変化を拒み続ける国や地域はどんどん衰退していくのかもしれませんが、大半が失敗するリスクを負いながらも、シリコンバレーのように「変わり者」を受け入れる心構えを持つ人たちには、それなりに面白い時代になっていくことは間違いありません。
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Kaori U
オーストラリア在住。Master of Business取得。輸出入を中心とした海外ビジネスに注目している。様々な国の文化と暮らしに興味があり、いつか世界一周を目標に旅を続ける。