エコ・ブログトップへ スマイル・エコ・プログラム

社会保険と福祉国家(7)

テーマ:がんばれ結婚
2015-02-09 07:21:42
2)年金受給額の算出式

ⅰ)改正前の1985年までは、60歳から支給された厚生年金老齢年金の年額の基本的な計算式は次のようだった。
                 夫の年金                   妻の年金
{共通の金額×加入月数+(生涯平均賃金×乗率×加入月数)+配偶者などの加給年金} +{ゼロ}。
 左の{ }は夫の年金、右の{ }はずっと専業主婦だった場合の妻名義の年金であるがゼロ円である。

夫の年金の第一項は現役時代の収入にかかわらずだれでも共通の金額を用いていたので「定額年金」と呼ばれ、第二項は「報酬比例年金」と呼ばれ、第三項が妻のいる人に支給された「配偶者加給年金」である。

「定額年金」は低収入の人にとっては上乗せされるので年金を引き上げる作用をし、高収入の人には収入に見合わない低額となる、ということで再分配または連帯主義の要素だといわれた。

「報酬比例年金」は文字通り能力主義の要素といわれた。

つまり当時は社会保険を連帯と保険の二元的な要素で考えていたのである。


 また、専業主婦の妻には自分名義の年金がなかったから、女性の意識の高まりと共に離婚女性の老後が保障されていない、という言い方で「女性の年金権」として問題にされ、1985年改正で専業主婦にも個人の年金が出るようになった。

結局、当時は男性世帯主が定年まで専業主婦と暮らすというモデルを考えていたといえる。


 なお生涯平均賃金を計算するときには、初任給など過去の給料は現在の相場に近づけるために、年々水増しするための「再評価率」というプラスの数値を乗じてから算出する。
「乗率」は生年によって異なった千分比である。

年金計算の時は本人の加入月数と過去の賃金は変更できないから、「定額年金」と「乗率」と「再評価率」が政策手段となる。


ⅱ)1985年に改正され86年施行の新年金制度では、専業主婦の年金や障がい者の年金が改善された。

しかし将来の現役世代の負担を重くしないための変更があり、旧厚生年金では32年加入で現役男子平均標準報酬の83%となるように設計されていたものを、40年加入で69%となるように変更したので、マスコミなど「年金切り下げ」の改悪だという人びともいた。


 改正後、会社員だった人には60歳~64歳まで「特別支給の老齢厚生年金」が支給され、65歳から本来の年金が支給されるようになった。

国民年金の「老齢基礎年金」と厚生年金の「老齢厚生年金」の二本立てである。


 妻が専業主婦だった会社員世帯の夫婦の年金年額の基本的な計算式は、次のようになる。
            夫の年金                       妻の年金
{夫の老齢基礎年金+(生涯平均賃金×乗率×加入月数+< >)}+{妻名義の老齢基礎年金+< >}。


 これに物価スライド率をかける。

左の{ }は夫、右の{ }は40年間ずっと専業主婦だった妻の年金である。

40年間勤務した夫の老齢基礎年金の月額は約6万5千円で、( )内は老齢厚生年金の報酬比例年金である。

< >は「配偶者などの加給年金」で妻がまだ老齢基礎年金をもらっていない場合に支給されるが、妻に老齢基礎年金が支給されると付かなくなる。

妻名義の老齢基礎年金も約6万5千円で、< >は「配偶者の加給年金」が支給されなくなった場合に<振替加算>に転換されて支給される場合もある。


 「乗率」は生年ごとに異なり平成15年3月までの報酬については、例えば昭和4年生まれは1000分の9.101、昭和20年生まれは1000分の7.230、平成15年4月以降の報酬はそれぞれ1000分の7.001、1000分の5.562などである。

仮に、再評価後の平均標準報酬月額が40万円、乗率が1000分の8、加入月数が480ヶ月、老齢基礎年金が6.5円だとする。

配偶者加給は無視して、( )内の老齢厚生年金は月額12.8万円となる。

夫の年金は基礎年金と厚生年金を合わせて19.3円、妻は6.5円、夫婦合わせて25.8円となる。

つまり新方式でも改正前と同様に役所が決定する「乗率」と「再評価率」と「基礎年金」のさじ加減で年金額は大きく変動する。

平均標準報酬月額が40万円でも、昭和2年生まれの年金は月額14.5万円、昭和20年生まれは11.6万円である。

30万円なら、昭和4年生まれは10.9万円で昭和20年まれは8.7万円である。それぞれ老齢基礎年金がつく。


 また、全体の賃金の平均は中小企業の水準に近いと仮定すれば、中小企業の賃金は大企業の7~8割だから、おそらく大企業の社員だった人はこれらの2~3割増しとなるだろう。

それに企業年金もつく。


乗率が1000分の8でも、中途入社で昇級も少なかった人だと、例えば平均標準報酬月額が30万円、加入期間が280ヶ月(国民年金加入期間を加えて受給資格を満たすとして)だと年金月額5.6万円、老齢基礎年金も6.5万×200月÷480月で2.7万円で、合わせて8.3万円となる。
AD

コメント

[コメントをする]

コメント投稿

[PR]気になるキーワード

あなたもエコ・ブログでブログをつくりませんか?