中国では特許とると刑務所から出てこれるようです

2015.02.09 08:00
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特許とった人を優遇し未曾有のスピードで特許を増やしている中国が、特許をとった服役者を刑務所から早期釈放していることが北京青年報の覆面取材で明らかになりました。

金持ちの服役者は、発明技術を持っている中小企業に1,000~10,000ドル(12万円弱~120万円弱)のお金を払って特許をとると、政府が「重要な技術革新」に貢献した功績を評価して早期釈放してくれるらしいのです。中国政府は特許とった人に現金、大学終身在職権、税金優遇措置、家などのご褒美をあげ、特許取得を奨励しているわけですが、なんとまあ。

北京青年報は共産党青年部の機関紙なので、記事では汚職で捕まった官僚のその後にも触れています。たとえば収賄で捕まった中国保健省元トップは、刑務所送りとなってから11個も特許をとっていました。また、収賄および八百長試合などの罪で10年6ヶ月の実刑判決を言い渡された中国サッカー協会元副会長の南勇元も、スマホホルダーなどの特許を山のようにとっていた模様です。

収賄で捕まった人が贈賄で出ても、日が東から昇って西に沈むような納得感しかないわけですけど、法律でこれが許されてるってところが、なんか不思議。

その辺りのことを中国の法に詳しいフォーダム大学のCarl Minzner教授に伺ってみたら、なんでも中国刑法第78条に減刑の条件が明記されていて、ひとつは捜査に協力して「犯罪を食い止め人命を救った」功績、あとひとつは「発明あるいは重要な技術革新」による功績、この後者に技術特許も当てはまるそうなんですねーはいー。一応教授は「政府が褒美をテコに発明を推奨しているのは確か」だけど、これをそういうインセンティブと一緒に考えるのはどうかな…と付け加えてましたけどね。大人だわ。

中国では今、特許取得件数が爆発的に増えています。2003年には年間たったの40,000件だったのが、2013年(最新統計)には600,000件を突破(米国は2013年302,948件で、その半分)。

この数字は「衝撃的」だと、米国特許商標庁長官も2011年元旦のNYタイムズの記事で驚いてます。「特許出願した人にはキャッシュのボーナス、家のアップグレード、特許をたくさん取った会社には税金優遇措置をしているので、そのお陰もあるね」と長官は話してました。去年12月にトムソン・ロイターが発表した報告書でも、この戦略が確実に結果を出していることがわかります。

もちろん特許が増えれば技術革新が進む…とは限りませんよね。奨励政策が裏目に出て、ご褒美目当てに出願する人、先にツバつけて競合の邪魔をするためだけに出願する人など、予期せぬ結果を招いているのも事実。実用に耐えうるものがどれぐらい混じっているかは不明です。取得後どう使われたのかを示すデータがないので。

そんな懸念はどこ吹く風で、中国政府は海外取得の特許にもご褒美を出しているため、問題はオーストラリアにまで飛び火中。オーストラリアは比較的審査がゆるいため、政府補助金目当ての「ゴミ」特許がどっと流入してるんだそうですよ?

いや~服役態度が真面目だった人と一緒に特許を(お金で)とりまくった人が出てくるというのもどうかなあ…と思っちゃいますけど、次の大発明は刑務所から生まれるのかもしれませんね。


image by 北京青年報
source: 北京青年報

Kelsey Campbell-Dollaghan - Gizmodo US[原文
(satomi)

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