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株式会社インテリジェンス
掲載日:2015.2.9
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三年予測ートップリーダーと考えるエンジニアの未来ー

第20回 経営者 福野泰介 子ども向けパソコンも自治体オープンデータも、未来のキラーアプリのため

経営者 福野泰介

1978年生まれ。小学3年生でプログラミングの世界と出会う。国立福井工業高等専門学校 電子情報工学科を卒業。2000年に有限会社シャフトを設立、CTOに就任。2001年に有限会社ユーエヌアイ研究所を設立、代表取締役社長に就任。2003年5月に株式会社jig.jpを設立、代表取締役社長CEOに就任。現在は同社代表取締役社長。


楽しげな活動の数々──子ども向け超小型パソコン、JK課アプリ、電脳めがね

まず福野泰介の最近の活動を見てみたい。これが、いかにも楽しそうなのだ。
1500円と安価で、小学生が自作してBASICでプログラミングできる超小型パソコンのキット「IchigoJam」を作った。
地元である福井県鯖江市を拠点にオープンデータの普及活動を進め、自治体データ公開では全国トップクラスの実績を作った。
女子高生が鯖江市の行政に関連したボランティア活動をする「JK課」が作ったスマートフォンアプリ「Sabota」の開発に一枚噛んだ。
福野はメガネ型情報デバイスに注目しており、会うときはいつも何らかのデバイスを装着している。今回の取材で装着していたのはGoogle Glassだ。2012年8月には、「電脳めがね」が普及した近未来を舞台とするアニメーション作品『電脳コイル』(2007年)のプロデューサーを地元の福井県鯖江市に招き「電脳メガネサミット」の開催にこぎ着けている。
これだけ多彩な活動をしている福野の本業は、ベンチャー企業の経営者だ。福野が率いるjig.jpは、携帯電話向けの「ツール」に特化したソフトウェア開発会社である。
福野が関っているさまざまな活動はみな、共通のゴールを目指しているという。まず、冒頭に紹介した子ども向け超小型パソコンIchigoJamを見てみよう。

1500円で入手でき、子どもでも作れる超小型パソコン

福野がほぼ個人で開発を進めた「子ども向けパソコン」IchigoJamは、ハンダごてがあれば自作できるキットとして1,500円(送料別)で頒布中だ。最小限のスペックのBASIC言語が動き、プログラミングできるように作られている。
このIchigoJamは、福野が運営しているBlogサイト「一日一創」に掲載した記事が出発点だ。タイトルは「目指すはMSX! Raspberry Pi より安価な IchigoJam 発表!」だった。「最初に発表したのが2014年4月1日で、エイプリルフールのネタのつもりでした。その反響が大きく、話が広がりました」と福野は言う。人々の期待が、IchigoJamを世の中に広めていったのだ。
IchigoJamの心臓部は、110円で買えるマイクロコントローラ(マイコン、CPUと周辺回路をワンチップに集積した半導体)である「LPC1114」だ。このマイコンを中心に、NTSCビデオ出力、PS/2コネクタ、給電用のmicro USBなどをボード上に実装したものがIchigoJamだ。
福野の子ども時代には、MSX(1983年にアスキー(当時)と米Microsoftが提唱した8ビットパソコンの規格)やファミリーベーシック(ゲーム機「ファミリーコンピュータ」向けBASIC環境)のように子どもが触れることができるBASICプログラミング環境があり、大勢の子どもがBASICや機械語によるプログラミングに親しんでいた。ところが、最近の子どもはニンテンドーDSやiPod touchなどでゲームに触れる機会は増えたが、反対にプログラミング経験を積む機会は得にくくなっている。
IchigoJamは、福野が最初に手にしたパソコンであるMSXと同じく、子どもがプログラミングを楽しめる最小限の機能を備えたパソコンとして作られた。福野はこう語る。「最近の小学生はBASICに触っていない。レベルが高い人材を確保するには、子ども時代からプログラミングに親しんだ人を増やさないと」。
IchigoJamでは、安さにこだわった。1,500円で基板とパーツが揃い、キーボードやモニタも低価格のPS/2仕様のものを使う。BASIC環境は、前述のマイコンLPC1114が搭載する32Kバイトのフラッシュメモリに格納する。RAM容量はわずか4Kバイトだ。仕様が小さいTiny BASICをベースとした最小限のBASIC環境としている。FOR文はなく、ループを表現するにはGOTO文とIF文を使う。変数名として使えるのは英文字1文字だけ。抽象度が高い言語仕様を取り込んだモダンな高級言語よりも、むしろマシン語に近いプログラミング環境だ。
福野は、このように抽象度が低い言語に触れることには意味があると考えている。「限界を迎えてから、初めて構造化プログラミングや、オブジェクト指向プログラミングの有り難みが分かる」。最小限の仕様のBASICで複雑で大規模なプログラミングをしようとすると、GOTO文を多用したスパゲティのようになり、無理が出てくる。早い段階で限界を経験してから、より本格的な言語に進めばよい──福野はそのような考え方をしている。

ラズベリーパイに対抗、IchigoJamと命名

IchigoJamという名称は、2012年に発売された英国製の教育用ボードコンピュータRaspberry Pi(ラズベリーパイ)を連想させる。福野はRaspberry PiへのアンチテーゼとしてIchigoJamのプロジェクトを進めたという。
子どもにどのようなコンピュータを与えるか、どのようなプログラミング言語に触れさせるか──ここは議論が分かれるところだろう。あえて比較するなら、Raspberry Piは、Linux、Python言語、子ども向けのビジュアルプログラミング環境Scratchといったモダンな環境を大人の指導のもとで子どもに与えるのに適している。Raspberry PiのセットアップではPCを使うし、Linuxに関する最小限の知識も必要だ。Scratchを学ぶ場合も指導者はいた方がいい。Raspberry Piはインターネット接続の機能やブラウザも備えているが、この観点からも大人の目が届く場所で使った方がいい。つまり、指導者と、PCなどの環境が整っていることが前提となる。
一方、かつてMSXを手にした子どもたちの多くは、大人の手助けなど必要としなかった。同様に、IchigoJamは子どもが独力でハードウェアを製作し、プログラミングを独習することが可能だ。ある程度の電子工作への意欲がある子どもであれば、キットを組み立て、プログラミングの入り口までたどり着くことができる。
IchigoJamでは、工作の難易度の低い基板やパーツを使っている。例えば、ゲジゲジのような外観のDIP(Dual Inline Package)形状の半導体を使う。これなら小学生でもハンダ付けが可能だ。ソフトウェア環境のセットアップ作業は不要だ。キットに含まれるLPC1114マイコンのフラッシュメモリにBASICをあらかじめ格納済みのためだ。配線にミスがなければ、電源を投入してわずか1秒で画面に「OK」というプロンプトを表示し、BASIC言語を使えるようになる。
IchigoJamは、すでに子ども向けのプログラミング教育の現場で使われ始めている。例えば、「MASAHARUの魂のプログラミング」と題したBlogでは、IchigoJamを教材としてプログラミングを学び始めた小学5年生のMASAHARU君が作ったプログラムが何本も紹介されている。IchigoJamはキャラクターベースのグラフィックス機能しか備えないが、その制約の中で工夫してオリジナルのアクションゲームを作っている。
福野の個人的な活動から生まれたIchigoJamだが、事業化の計画も進んでいる。ソフト、ハードの設計は無償で公開するが、商用利用にはライセンス料を取るモデルだ。「100万台は世に出したい」と福野は話す。子どものための、極めて安価で手軽なパソコンがまさに誕生しつつあるのだ。
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