NTTが2月から光ファイバー網の卸販売事業を始めた。これに伴いNTTドコモなどが来月にも光回線販売に進出する。通信事業者でなくても光回線を販売できるようになったことで、既存事業と光通信を組み合わせた新しいサービスの登場を期待したい。
光回線の卸サービスは、NTT東西が持つ光ファイバー網の販売を他の会社にも開放し、保守サービスをNTTが請け負う。光回線契約が約1850万件に達し、自社販売だけでは新たな需要を取り込めなくなったからだ。
もう一つの狙いは、ライバルのKDDI(au)に対抗し、携帯電話と光回線のセット割引を始めるためだ。NTTの分割を受け、東西会社とドコモは協業を禁じられている。そこでNTTグループ以外の会社にも光回線を卸すことで協業が認められた。
総務省が定めた指針では、NTTはグループ会社以外にも同じ条件で貸し出すことが義務づけられた。ソフトバンクもドコモと同様なセット販売を始めるが、指針が守られるよう監視が必要だ。
光回線開放の最大の利点は、家電量販店やIT(情報技術)企業、警備保障会社、学習塾など、様々な事業者が顧客サービスなどに光回線のインフラを使える点だ。NTTへの問い合わせは600社に上り、すでに半数以上が契約に関心を示しているという。
日本は世界で最も光通信網の整備が進んでいるが、携帯電話網の高速化もあり、資産が十分に生かされていない。自治体や医療機関なども光回線を一体的に利用できるようになれば、行政や医療といった分野でも新たな在宅サービスなどが可能になるに違いない。
今年はNTTの民営化から30年、光回線サービス開始から15年という節目の年でもある。5年後の東京五輪ではテレビの高精細放送も予定されており、光回線の用途は色々考えられる。国民の財産である光通信網がもっと利用されるよう、政府やNTTはもちろん、企業も知恵を絞ってほしい。