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日経の見出しに“ダマされる”日本人

どうも新田です。今月も来月も売り上げが右肩下がりです(震え声)。ところで、最近池田先生のピケティ企画のお手伝いをしているためか、経済ネタに以前よりは敏感になっているわけですが、おとといの日経新聞の夕刊一面トップの見出しを見て、ちょっと気になったんですよ。
賃金4年ぶり増加

厚生労働省が4日まとめた毎月勤労統計調査(速報値)によると、2014年の1人あたりの現金給与総額は、月額31万6694円と前年比0.8%増えた。賃金が増加に転じたのは4年ぶりで、伸び率は17年ぶりの大きさ。業績改善や人手不足を受けて賃上げの動きが広がった。ただ物価上昇と比べると賃金の伸びは緩やかで、消費を押し上げる力は弱い。(日本経済新聞15年2月4日夕刊)
なんでもない官庁発表モノの記事なんですが、ここで注目したいのは見出しです。紙面とウェブ記事の大きな違いのひとつは、見出しの大きさでニュースの重要度を報道側がどう考慮しているかが分かるところ。

参考までに実際の紙面構成はこうなっているわけですが。
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主見出しは上記の通り、「賃金4年ぶり増加」でドドンと。そして“2番手”扱いのサブ見出しは「昨年0.8% 賞与拡大やベアで」とありまして、もう大体の人はここで「へー、なんだかんだで世間では給料上がったのか」と思ってしまうわけです。私も結構、専門外のことは情弱なので、以前なら漫然と頷いてしまったでしょう。

アベノミクスの恩恵があるとされる輸出産業の大手にお勤めの方なら「やっぱりそうだよね」と実感しているのかもしれませんが、世の多くのお父さん方はどうなんでしょうか。「生活が良くなった気がするかビミョー」と感じている人も少なくないはずで、私もサラリーマンは辞めてしまいましたが、ここのところピケティの企画に触れていると、池田先生や水野和夫先生などが「実質賃金が下がっている」的な指摘をされていたことを思い起こすわけです。実際、裏付けるようにピケティが売れているわけですが、6000円もする本を誰が買っているのかといえば、このニッセイ基礎研究所の見立て「衰退する『中間層』の不安が映し出されている」は、なかなか説得力があります。

そういったことを思い浮かべながら、「実質賃金は上がっているのかしら?」と日経を読み進めてみると。。。あれ?本文中にはなかなか出て来ないぞ。ようやく、ようやく、記事の終盤で出てきます。
ただ物価の伸び率を考慮した実質賃金は2.5%減った。名目の賃金は0.8%増えたものの、消費者物価(持ち家の帰属家賃除く総合)が3.3%上がったためだ。減少率はリーマン・ショック後の09年(2.6%減)に次いで過去2番目の大きさだ。

4月に消費税率を5%から8%に引き上げたことに加えて、金融緩和で円安が進み、輸入品の価格が上がった。消費税率を3%から5%に上げた1997年の実質賃金は増減ゼロの横ばいで、今回の方が影響が大きいことがわかる。
この実質賃金のくだり、記事全体の2割程度でしかありません。紙面全体を見渡すと、3番手のサブサブ見出しに「物価上昇で実質2.5%減」と載せてあって、一応、紙面をレイアウトした編集記者がバランスを取ろうとした配慮が分かるわけですが、やはり文字の大きさは「4年ぶり増加」のほうが目立ってしまうし、電子版(有料ページ)の見出しをみると「賃金4年ぶり増加、昨年0.8% 実質2.5%減」と、「実質」については付け足しの感があります。

もちろん、毎月勤労統計調査で4年ぶりに増加したというのは「ファクト」であるし、「ニュース」でもあるんですが、生活実感であったり、経済情勢やデータもろもろを俯瞰して読者に最適な「視座」を提供するのが、本来のあり様な気もします。

統計学の専門的な知識もないであろう記者さんに、夕刊の締め切りまでに速報的に出さねばならないなかで深みのある分析記事を出せというのはムリゲーなわけですが、発表する側がどんな資料、それもサマリー部分をどう見せていたのかで、記者がどう“転載”したのか想像できます。で、今はネットにも乗ってますので、こちら
厚労省プレスリリース
ありがたくも「調査結果のポイント」と“誘導”してくれてます。賃金については(1)から(6)とあるわけですが、強調したい点からそりゃ書いていくよね(笑)官僚も官邸の意を斟酌しているのかは分かりませんが、「アベノミクスの成果」を強調すれば失点は無い。当然、(1)は「現金給与総額の前年比は、0.8%増と4年ぶりの増加となった」。そして一番最後の(6)が「実質賃金指数(現金給与総額)の前年比は、2.5%減となった」と申し訳程度に付けてまして、この見出しを見るだけで記事の骨子が作れる。まあ、古賀さんや長谷川さんのご高説を聞くまでもなく、発表モノについてはよくよく後で吟味する必要があるなと自省を込めて思います。

今回の厚労省の思惑は想像の域を出ません。ただ、以前、鈴木寛さんも日経のカジノ記事を引き合いに指摘されていましたが、新聞の見出しというのは記事を書く側も気付いていない「世論誘導」の落とし穴があるかもしれません。このあたり広報の仕事もやるようになった今は、世の中の人を故意にミスリードするのは「禁じ手」と自戒しつつも色々と実感もしています。ちなみに取材者の時と広報裏方に回る時はきちんと攻守切り替えするのが“弊社”のポリシーです。

ではでは。

新田 哲史
ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー

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