東京電力福島第一原発事故で発生した高濃度の放射性物質を含む「指定廃棄物」の最終処分場の設置をめぐり、政府は詳細調査に入るための県内候補地が五千カ所に上ることを明らかにした。政府が設置のめどとした三月末まで二カ月を切ったが、選定作業は遅々として進んでいない。 (三輪喜人)
望月義夫環境相は一月三十日の記者会見で、県内の現状について「五千カ所の中から一カ所選択をしていくので、時間がかかっている」と説明した。
県内の候補地は、国有地だけでなく県有地、民有地も含めて検討。候補地の選び方は昨年四月に決定し、政府は当初、数カ月程度で候補地を示すとしていた。
政府は千葉を含め五県に最終処分場を設置する方針だが、選定作業は、他県でも遅れている。
政府は宮城、栃木両県で候補地を示したものの、住民の反対で調査が進んでいないほか、群馬、茨城両県では、候補地の選び方さえ決まっていない。
最近、動きがあったのが茨城県。環境省が先月末、約一年ぶりに開かれた市町村長会議で、県内一カ所に集約するのではなく、現在地に分散して保管し続ける可能性も示し、波紋を広げた。
望月環境相は「県内一カ所に集約して管理することが基本的な考え方。宮城や栃木は市町村長会議で決まっている」と、他県での方針転換を否定した。
ただ、県内で指定廃棄物が大量に発生した柏、流山、松戸の三市は気が気でない。三市は最終処分場の完成を前提に、三月末まで県の手賀沼終末処理場(我孫子市・印西市)に廃棄物を一時保管する方針だったが、選定作業が大幅に遅れ、最終処分場設置のめどが立たず、それぞれ持ち帰ることを決めたからだ。
昨年十二月から搬出作業を始めた松戸市はすでに作業を完了し、流山、柏両市は三月末までに終える予定。
柏市は、市内二カ所のクリーンセンター(CC)に持ち帰る計画を立て、一月から南部CC(同市南増尾)に運び込んでいる。
北部CC(同市船戸山高野)は、周辺住民が「ここが最終処分場になるのではないか」と強く反発し、話し合いが難航。現在は、市と住民側が持ち帰りの合意に向け最終調整の段階だ。
住民が疑心暗鬼となる中、秋山浩保・柏市長は「千葉では、一カ所に集約する方針は変わっていないと聞いている。国は早く最終処分場を設置してほしい」と政府に求めた。
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