2015年2月5日(木)

個人プレーに走る部下が、チームワークを乱す。リーダーとしてなにをすべきか

出口治明の「悩み事の出口」

PRESIDENT 2014年11月17日号

著者
出口 治明 でぐち・はるあき
ライフネット生命社長

出口 治明1948年、三重県生まれ。72年京都大学法学部卒業、日本生命入社。92年ロンドン事務所長、95年国際業務部長、98年公務部長。2006年生命保険準備会社ネットライフ企画株式会社を設立、同社社長に就任。08年生命保険業免許を取得、ライフネット生命保険社長に。2013年6月より現職。

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出口治明 構成=八村晃代 撮影=市来朋久
――個人の評価が給料に反映されるようになったので、個人プレーに走る部下にチームワークを乱されて、困っているんです。

仕事というのは、基本的には全部、チームワークですよ。

――そうなんですか?

この前、ある著名な漫画家の方とお話しする機会がありました。漫画は個人の創作というイメージがありますが、その方は「仕事の95%は人事管理です」と言っていました。6人のアシスタントをうまく組み合わせて、1つの作品に仕上げていくのが一苦労だと。

――なるほど。でもそこに一匹狼的な人がいるととたんに回らなくなる……。

一匹狼は“出る杭”ですから、原則潰したらダメですよ。みんなが損をします。出る杭にはガンガン出てもらって、「そのおこぼれをみんなでもらおう」という姿勢が大切です。

――どうすればチームワークと両立するんでしょうか?

ポイントは、「役割分担」です。スポーツでも稼ぐ選手にはトレーナーや弁護士がついています。本人にスポーツに打ち込んでもらうためです。表面上、1人でやる仕事に見えても、実はチームなんですよ。

「営業」も同じです。成績がいい人に限って契約書をきちんと書いたりするのは苦手です。だから事務に強い社員をつけて、本人には売ることに専念してもらう。同じ営業マン同士でも、どのようなお客の相手が得意か、といった役割分担がある。それでチームの業績が最大になれば、みんながハッピーになれます。

そして、こういった役割分担を決めることが、リーダーの一番大事な仕事。その人が何に向いているのかを見極め、最高のフォーメーションを組むことができれば、チームワークと競争は両立します。

――部下を見極めるリーダーの責任は重大ですね。

その通り。だから、基本的に上の人間は直接の部下のフォーメーションを組むことに神経を集中し、その下の人間は部下にすべて任せるべきです。

「遊牧民の十進法」という考え方を知っていますか。モンゴルの遊牧国家は十人隊、百人隊、千人隊、万人隊という階段型の組織をつくっていた。万人隊長は部下が1万人いるのに、10人の千人隊長しか見てはいけないのです。人間はたくさんの人を見ることができないので、自分の直接の部下10人を一所懸命見ろということです。

時々、大企業の社長が「若手の声を聞こう」と言って、ランチを一緒に食べて、それが称賛されるような話があります。時には必要でしょうが、それによって直接の部下を見る目がおろそかになるようでは、モンゴル人にバカにされるかもしれません。

Answer:リーダーが部下をよく観察して、上手に役割分担させることが大事です

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長兼CEO

1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長、国際業務部長などを経て2013年より現職。

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