昨年、私がかかわった「テクノインパクト」プロジェクトで選んだ「技術のベスト10」を解説する連載の第2回だ。
(前回から読む)
「テクノインパクト」プロジェクトは日経BP社でコンピューターやネットワーク、電子、機械、建設、工事、そして医療といった分野で取材をしている専門記者200人が将来を担うと期待されている技術を推薦するもの。その中から「2015年に消費を変える注目技術」のベスト10を選び、日経トレンディ誌で発表した。私は2013年に引き続き、審査委員会のとりまとめ役を仰せつかった。
日経BP社の技術記者約200名が長年の取材成果をもとに選び出しただけに、技術リストの価値は高い。そこから選ばれたベスト10は、社会や企業を進化させる技術、イノベーションの方向性を抽出し示すものとも言え、国や自治体、企業が技術とどう付き合っていくか、活動の方針を決めるにあたっても役立つ。
また、「テクノインパクト」は先進技術がどこを向いているのかを物語るだけに、今年1年、そのベクトルの先に何が来るのか、何が求められているのか、何が足りないのかの示唆にも富んでいる。
ここでは「テクノインパクト2014」で「トップ10」に選ばれた技術をみつめながら、「その先」を考えてみる。
無人航空機(UAV)かドローンか
テクノインパクトプロジェクトの一環として開かれた「2015年に消費を変える注目技術」の選考会でかなりの議論の末に第2位となったのが、無人航空機(UAV=Unmanned Air Vehicle)だった。
無人航空機はドローン=Droneとも呼ばれるが、この数ヶ月、この「ドローン」という言葉は急速に幅広く使われるようになった。
「ドローン」は「雄のハチ」が語源で、その羽音が無人ヘリコプターを連想されることからつけられたという。
「2015年に消費を変える注目技術」の選定にあたっては、技術のトレンドを俯瞰し、今後の方向を代表している技術を選び出すようにしており、特定の企業名や商品名はなるべく出していない。
だが「UAV」が2位となったのは、米国のアマゾンドットコムが発表した、宅配便にUFOのような無人フライトロボットを使うという構想の発表があったからこそだ。
昨年の12月、日本のアマゾンで商品を選ぶと、「この商品はクリスマス後にお届けの場合があります」という表示が出るようになった。翌日配送、当日配送すら可能というサービスが売りで成長してきたアマゾンだが、クリスマスプレゼントによる配送増で宅配便の配送能力が追いつかなくなったのだ。
配送業者は、配送委託荷物の増加の見返りとして、驚くほど低い配送料金をのんできたとされる。だが、その配送は「人力」を基本とするため、トラックドライバーの減少や高齢化もあいまって、対応の限界に直面。2014年春、佐川急便がアマゾンの配送から撤退したのはそれが理由だったようだ。
ヤマト運輸の現場でも、荷物が集中するピーク時には、配送ドライバーは夜遅くまで食事をとる時間も得られず、「ピークを過ぎると数キログラム痩せることもある」という声も聞かれる。
ボールペン1本でもネット販売で注文、即配達が当たり前としてしまったことが荷物量の増大に拍車をかけ、それが配送ドライバーを苦しめ、ひいては配送企業そのものを衰退させる一因になっているとすれば看過できない。ネット通販の大きな配送センターが続々と建設されているが、このビジネスモデルそのものが、「人頼り」の末端で静かな破綻をきたしている印象がある。