「The Economist」

国王が交代したサウジアラビアの明と暗

サウド家が抱える3つの課題

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2015年2月6日(金)

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 年老いた歴代サウジアラビア国王の中で、これほど迅速に動いた王は珍しい。1月23日、アブドラ国王の死去に伴い異母弟のサルマン皇太子が新たな王となった。そしてサルマン国王は即位するやいなや、自らの治世において最も切迫した問題の1つを早々と解決してしまった。つまり、次期国王となる皇太子と、さらにその後の王となる副皇太子を決めたのである。あるサウジアラビア人は「新国王は仕事の9割をわずか1日でやり終えた」と笑った。

 王位継承の問題は君主国サウジアラビアを長らく揺るがしている。現王家の創始者であるアブドルアジズ初代国王の死後、王位は数十人いる息子たちの間で順ぐりに受け継がれてきた。だがこの世代も高齢化が進み、亡くなった者もある。6人目の息子であるサルマン新国王もすでに79歳。遅かれ早かれ初代国王の孫に当たる「第3世代」に実権を引き継がなければならない。だが多数いる王子の中で次の王にふさわしい人物は誰なのか。

 サルマン国王は、アブドラ前国王が副皇太子に定めていたムクリン王子――サルマン国王の最も若い異母弟――の後は、甥のムハンマド王子を王にすると決めた。ムハンマド王子は内相を務めており、国内のジハード(聖戦)主義者に対処する上で優れた手腕を持つと評価されている。イスラム過激派の「アルカイダ」が2009年、ムハンマド王子の暗殺を謀った。内謁を許された戦闘員が下着の下に隠していた爆弾を爆発させたが、王子は無事だった。

サウジの体制を支える王家と聖職者の関係

 今回、継承予定者がこのように円滑に決まったことで、海外に広まる「数々の困難な矛盾を抱えるサウジアラビアはやがて崩壊する」という見方が必ずしも正しいとは言えなくなった。

 ここで言われる「矛盾」の例を1つ挙げてみよう。サウジアラビアにはソーシャルメディアの熱心な利用者が多い上、多数の若者が公的な奨学金を得て西欧諸国に留学している。にもかかわらず、この国におけるイスラムの教えは特に厳格で、女性の権利を厳しく制限している。例えば、女性は男性保護者の許可がなければ車を運転したり海外に行ったりすることができない。

 アラブ世界の大半が激しい混沌状態に陥っているこの時代、石油市場とイスラム世界の中核的存在であるサウジアラビアに混乱が生じれば、とりわけ大きな不安を招くことになる。サウジアラビアにはメッカそしてメディナというイスラム教の聖地がある。また、原油がもたらす富は、批判者たちが「ワッハーブ主義」と呼ぶ極めて偏狭なイスラム主義が普及するのを後押ししてきた。

 これまで、サウジアラビアを否定する者はことごとく自らの誤りを見せつけられてきた。その理由の1つは、サウド家とワッハーブ派聖職者の間で交わされた盟約が脈々と続いていることだ。この関係において、聖職者は王家に宗教的な正当性を与える。代わりに王家は、過激な内容を定めるイスラム法を聖職者が実施するのを支援する。この法は、姦通者への石打ちや反体制派への鞭打ちなどを定めている。

 リベラルなブロガーのライフ・バダウィ氏は体制に反抗したとして鞭打ち刑を受けている。同氏は聖職者が「天文学はシャリーア(イスラム法)に対する懐疑心を誘発する」と主張したという理由で、彼らを嘲笑したりしていた。


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