フランスの経済学者であるトマ・ピケティ氏が著した『21世紀の資本』は、経済学の専門書(しかも分厚い)としては異例の世界的ベストセラーとなった。日本でも昨年12月中旬に翻訳本が発売されたが、1冊6,000円弱(728ページ)の大著が、1冊1,000~1,500円(200ページ程度)の新書版が主流となっている日本の経済書部門の売上第1位を続けていることは驚異的である。
日本の知識人は、このピケティ氏の『21世紀の資本』を、マルクスが著した古典『資本論』にとって代わる新しい左派の経済学の「聖典」として熱狂的に受け入れているようだ(発売当初の海外メディアがマルクスの『資本論』になぞらえて紹介したことが大きく影響しているとみられる)。特に、マルクス経済学同様、経済学というよりも、思想・哲学分野の識者の熱狂ぶりが目立つ。
反アベノミクスの動きが過熱するはずだったピケティ氏来日
ところで、ピケティ氏は、この『21世紀の資本』で所得格差の拡大に警鐘を鳴らしていることは言うまでもないことだが、日本では、これがそのままアベノミクス批判につながっている。
そもそもピケティ氏はあの「ウォール街占拠運動」を理論面で支えたことで有名であった。この運動は、「過度な『金融中心主義』はリーマンショックのようなきわめて深刻な経済危機を誘発したにもかかわらず、FRB(米連邦準備制度理事会)を中心とした当局は、何の反省もなく、金融機関ばかりを救済し、庶民の生活をないがしろにし続けている」という批判で、リーマンショック後の量的緩和政策が株価等の資産価格を押し上げるのみで実体経済には何の効果もないとの批判がその背景にあった。
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