「再生エネも選択肢」/第15部・議論の土台(4)基幹電源ですか/神話の果てに
<「争奪戦の様相」>
「特定電源に依存するのは危険」「資源調達の多様化が求められる」
東北の企業関係者や東北電力でつくる東北エネルギー懇談会(仙台市)は2014年、広報誌で半年にわたって特集を展開した。
テーマは「エネルギー安全保障」。国際情勢を踏まえつつ、政府が「ベースロード電源」と位置付ける原発の稼働ゼロが続く問題点を解説した。
懇談会の関口哲雄専務理事は「人口増や新興国の需要拡大で、世界はエネルギー争奪戦の様相を呈するだろう。安全保障の観点はますます重要になる」と狙いを話す。
日本の1次エネルギー供給に占める自給率は12年時点で6%。経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国で下から2番目の水準にとどまる。
福島第1原発事故の後、国内の電力供給は火力への依存度を増した。政府や電力業界は「主要燃料となる原油、液化天然ガス(LNG)の輸入が止まれば日本は立ち行かない」として、原発再稼働の必要性を強調する。
<受け入れを中断>
原発で使うウランも海外頼みだが、1度の燃料交換で1年以上使え、調達先もオーストラリア、カナダ、アフリカ諸国などに分散する。対照的に原油の8割、LNGの3割は中東産。政情が流動化すれば輸入が滞る恐れをはらむ。
「構造上、日本のエネルギーは極めて不安定だ」。関口専務は電源構成の多様化を訴える。
ただ、火力偏重の打開策が原発とは限らない。環境エネルギー政策研究所(東京)の飯田哲也所長は「太陽光や風力といった再生可能エネルギーの普及こそ有力な代替策。国が本気になれば十分可能だ」と指摘する。
国は12年7月、再生エネの固定価格買い取り制度(FIT)を導入した。電力各社に民間発電分の購入を義務付けた結果、太陽光を中心に事業参入が相次いでいる。
国認定の計画ベースで、東北電管内でも再生エネの発電能力は夏の最大需要の8割程度まで急増した。だが同社は昨秋、「送配電に技術的な制約がある」と受け入れを中断。太陽光について年明けに再開したものの、買い取りの先行きは不透明感が漂う。
<コストに課題も>
再生エネのコスト面にも課題が残る。
FITによる電力各社の電力購入費は、付加金として消費者に転嫁される。国が試算した標準家庭の付加金は年2700円(14年度)。認定済みの計画が全て実行されれば、金額が4倍程度に膨らむ可能性もある。現行制度を維持するなら国民の負担増は不可避だ。
化石燃料の代わりに原発と再生エネのどちらに軸足を置くのか。最適な答えは、まだ見えない。
いずれにしてもハードルは低くないが、「原発の事故は国家的危機を招く。再生エネの割合を1%ずつでも引き上げることが、より確実な安全保障になるはず」と飯田所長は力説する。
[1次エネルギー供給]電気やガソリンなどとして最終消費されるエネルギーを加工前の原油などに換算したエネルギー量。送電ロスや発電・転換段階の自家消費分なども考慮して算出する。電力のほか石油製品、製鉄に必要なコークス用原料炭なども含む。
2015年02月06日金曜日