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【経済インサイド】
「32人抜き」の衝撃 三井物産「最年少社長」誕生の舞台裏
人気漫画『島耕作』シリーズに登場する中沢喜一部長が、「35人抜き」で社長に抜擢(ばってき)される場面をご記憶の人も多いのではないだろうか。これを地でいく話が、日本を代表する大手商社の三井物産で起こり、話題になっている。社内序列32人を抜いて執行役員から4月1日付で社長になるのは、安永竜夫執行役員(54)。財閥系企業での執行役員からの抜擢は異例で、戦後の昭和34年に現在の三井物産として再スタートして以来、最年少社長の誕生となる。年功序列重視の日本企業にとって新しいモデルになる可能性がある。
下馬評は「次の次」
1月15日午前7時前。ノートだけ持ってくるよう飯島彰己社長から指示された安永氏は、都内ホテルに急いだ。社長後継指名の場面といえば社長室がお決まりだ。飯島氏がホテルを選んだのは、社長人事をめぐり激しさを増すマスコミの夜討ち朝駆け攻勢から逃れようと、ホテル住まいを余儀なくされていたためだ。
社内だと秘書室に察知されかねない、と身内も欺く作戦で、飯島氏自ら送迎の車やルームサービスも手配し、人事情報が漏洩(ろうえい)しないよう周到に計らった。
てっきり通常の打ち合わせだと足を運んだ安永氏は、突然の後継指名に「頭が真っ白になった」と振り返る。いったんは固辞したが、「天命と思って受けて欲しい」と諭され、覚悟を決めた。