-
Acid Black Cherryはなぜ売れる? V系ロックのホントを分析
既存のロックと視点が違うセクシーさとは?好調なセールスを支える内なる魅力
-
この時代が生んだ「かけがえのない」音楽の形 fhánaインタビュー
バンドもボカロもアニソンも統合する、第一期fhánaの集大成が示した「憂鬱」
-
BOOM BOOM SATELLITES、残酷な運命から希望を描いた傑作
4度の脳腫瘍発症、残り2年の命を懸けてでも、音楽を作り続けた生き様を綴る
-
どこよりもわかりやすい、戦後美術のスター『高松次郎展』ガイド
会田誠が「誇るべき先輩」と語った、ミステリアスなアーティストの軌跡
-
『クリエイターのヒミツ基地』
Twitter、LINEで大ブレイク中、「にゃっちーず」の作者、かわベーコン登場
-
映像作家ひらのりょうと観る、鬼才画家・難波田史男の世界
美術館に収蔵されていた、知られざる「天才」の作品300点が一堂に展示
-
日本の巨匠・奈良原一高を知ってる? 宮沢章夫と観る強烈な写真展
サブカルチャー誕生とのシンクロニシティー、戦後世代たちの新しい空気感
-
あの人の音楽が生まれる部屋
レーベル移籍を経て、新たに輝くBOMIの誕生。変化を恐れない生き様を語る
-
プロはどうやって聴いている? 知って得する音楽リスニングガイド
ROY(THE BAWDIES)が語る音楽愛、なぜ彼らのロックは大衆に響く?
-
映画『イロイロ ぬくもりの記憶』から読み解くアジア映画の新世代
『カンヌ国際映画祭』でカメラ・ドールを受賞した映画に見るアジアの問題意識
-
小林エリカと観る、教科書で習ったのとは少し違う『ミレー展』
時代に翻弄されつつも、社会とのつながりを求めていた画家の本当の姿とは?
-
40年振りにやってきた巨匠画家『ウィレム・デ・クーニング展』
フリージャズピアニスト・スガダイローが、抽象絵画のスーパースターに挑む
-
新国立競技場問題で注目の建築家『ザハ・ハディド』展を見る
長い下積み時代を経て建築界のノーベル賞に輝いたザハを、光嶋裕介が語る
-
世界屈指の映画監督クリストファー・ノーランの創作の秘密
『ダークナイト』『インセプション』で世界を牽引した名匠のインディー精神
-
岸田繁(くるり)×加藤貞顕対談 音楽市場の変化をチャンスに転換
自由度の高いプラットフォーム・noteがクリエイターに提案する可能性とは?
-
スガシカオが語る、事務所からの独立とメジャー復帰の真意
メジャーの華やかさとインディーズの苦悩を経た男のネクストラウンドとは?
-
宇川直宏インタビュー 5年目を迎えたDOMMUNEの次なる目標
1000人以上のアーティストを切り取ったアーカイブがついに解放へ
-
45歳のおっさんが怒っててなにが悪い? 横山健の生き方に学ぶ
震災に変えられた観念、孤独と拒絶を背負って生きる人間のドキュメンタリー
-
初のアニメ監督に挑んだ岩井俊二が語る、トライ&エラーの楽しさ
アルバイトを通して描く成長物語。子どもが「ただの大人」になる瞬間とは
-
芸術とは何か? 美輪明宏、モノクロの社会を斬る
希代の歌い手は初音ミクやアイドルをどう見る?芸術を取り戻す者達へのエール
-
坂本龍一が想像する、新しい時代のアート、環境、ライフ
先進的なメディアアートセンターYCAMで、意識を拡張する作品を展示
Acid Black Cherryはなぜ売れる? V系ロックのホントを分析
- 文:阿部美香
- (2015/02/05)
日々、新しい音楽が生まれ続けている。それらの多くは既存のカテゴリーに類型化され、レコードショップの適切な棚に陳列されて、あるいはインターネットのリコメンド機能を通して、リスナーのもとに届けられる。音楽のみならず、ただでさえ情報量の多い今の世の中であるから、受け手は特定のジャンルに対して素通りしてしまうことも多い。しかしもし、自分が知らなかったその場所に、思わぬ発見や、驚くべきシンパシーがあったとしたら? 受け身でいても情報に不足しない今の時代だからこそ、「越境」や「多様化」という行為を自ら選び取ることで見えるものがあるのではないか。
Janne Da Arcのボーカリスト・yasuによるソロプロジェクト「Acid Black Cherry」(以下、ABC)も、一筋縄では理解できない濃さを持ったアーティストだ。ヴィジュアル系のエッセンスを耽美的に活かしながらも、耳なじみが良く、少し懐かしいような邦楽ロックを奏でる。さらにyasuのクリエイティビティーが存分に発揮されたアートワークやコンセプトアルバムの並々ならぬこだわりは、彼自身の気づきや疑問に満ちており、人柄の奥深さを垣間見せてくれる。オリコンチャートの常連であり、全国アリーナツアーを満員にするABCの本当の理由はどこにあるのか? 彼らの森に踏み込んでみたい。
Acid Black Cherry(あしっど ぶらっく ちぇりー)
ロックバンド・Janne Da Arcのボーカリストyasuのソロプロジェクトとして2007年始動。通称ABC。2007年シングル『SPELL MAGIC』でデビュー。現在までシングル19枚、オリジナルアルバム3枚、カバーアルバム3枚をリリース。 2012年3月21日にリリースした3枚目のアルバム「『2012』」では自身初のオリコンウィークリーチャート初登場1位を記録し20万枚を超える作品となった。収録曲でもある15枚目のシングル『イエス』は2012 年USEN 年間 J-POP リクエストランキングで1 位を獲得し、youtube の再生回数は865万回を超えるなど、ABCを一般層へと広げたきっかけの楽曲となる。2013年8月からは、「ABCの音楽を通して少しでも笑顔になってくれる人がいるならば、近くに行って唄いたい」という主旨で“Project『Shangri-la』” をスタート。全ての会場がSOLD OUTした全都道府県TOURと、追加公演として行われたアリーナTOURも含め自身最多の18万人を動員。
|||| Acid Black Cherry [ABC] Official Web Site ||||
ほぼ全てのオリジナル作品がオリコンチャート3位に食い込むのはなぜ? 明確なコンセプトを形にする豪華ミュージシャンの存在
Acid Black Cherry(以下、ABC)は、売れている。卓越した演奏テクニックに裏打ちされたヘビーな音作りで人気を誇るバンド、Janne Da Arcのボーカリスト・yasuが、2007年より始動したソロプロジェクトであり、2007年7月18日、1stシングル『SPELL MAGIC』でメジャーデビュー。これまでにシングル19枚、オリジナルアルバム3枚、カバーアルバム3枚をリリース。2012年3月に放った3rdアルバム「『2012』」はオリコンのウィークリーチャート1位を獲得し、売り上げ枚数20万枚を超えて話題を呼んだが、その他のアルバム、シングル共にほぼ全てのオリジナル作品をチャート3位以内に送り込んでいる。
曲作りにおいては、yasuが本名の「林保徳」名義で全ての楽曲の作詞・作曲を手がけ、キーボード&プログラミング、ギターのリフのアイデアなどのアレンジも行う、まぎれもない実力者である。
ABCというネーミングはまるでバンド名のように見えるが、yasuのソロプロジェクトのため、yasu以外、固定メンバーを設けていない。レコーディングもライブもバンドスタイルで行なってはいるが、その都度、yasuがやりたいことを最も具現化できると思うミュージシャンにオファー。ギターにΛuciferのYUKI、BREAKERZのAKIHIDEやLUNA SEAのSUGIZO、SIAM SHADEのDAITA、La'cryma ChristiのHIRO、ベースにはLa'cryma ChristiのSHUSE、ドラムにSIAM SHADEの淳士ら、ヴィジュアル系、HR / HM(ハードロック、へヴィメタル)界では屈指のテクニシャンが顔を揃える。確かな演奏に支えられ、ABCが奏でる楽曲は、ヘヴィネスと美しいメロディーが織りなすダイナミズムを体現し、女性ファンのみならず、ハード&ヘビーなメロディックロックを愛する男性ファンからも、熱い支持を得ているのだ。
ヒットメイカーが官能的なコンセプトを掲げる本当の理由
ABCは活動のスタート時から、一貫した1つのコンセプトを掲げている。そのコンセプトとは「エロ」。ちょっと鼻白む人もいるかもしれないが、yasuは単に目先の刺激やインパクトを狙ったわけではない。「エロ=性欲」は人間の本能が求める三大欲求=食欲、睡眠欲、性欲の1つだ。つまりABCの「エロ」は「人間が隠しきれない」ことや「本当に満たして欲しいもの」などの象徴だと言えよう。ABCにとっては、人間の本能を「音楽」という最も情動を揺さぶる表現行為を通して訴えることが、人間そのものの姿を浮き彫りにしていくことにつながるのだ。
余談かもしれないが、昔、ロックミュージシャンとロックファンの合い言葉は、まさに「セックス、ドラッグ、ロックンロール」だった。若者の憤り、やむにやまれぬ初期衝動を音楽として具現化したロックは、セックス&ドラッグとカルチャーとして強く結びつき、ロックは人間の本能としてセックスを歌った。yasuが己の表現に込めた「エロ」は、「ロックであること」への原点回帰と結びついているのだ。
阿部美香
北海道出身。音楽・芸能・ゲーム・アニメ・声優・デジタル玩具などエンタメ系分野で、フリーライターとして活動。『ダ・ヴィンチ』『デジモノステーション』『PATi PATi』『CAST-PRIX ZERO』『Quarterly pixiv』『DVD&ブルーレイ Station』、Web『日経トレンディネット』などの他、ゲーム系オフィシャルサイトでなど様々な媒体で執筆中。