堀込泰三 - メンタル,健康,就職・転職 10:00 PM
有害な職場環境から心と体を守る方法
仕事が嫌いなだけでなく、職場に向かっていると体調が悪くなるあなた。仕事には必ず悪いところがあるものですが、それを補う長所がないのであれば、その職場は有害であると言えるでしょう。
有害な職場環境とは、仕事、雰囲気、人、またはそれらの組み合わせがあなたのやる気を削ぎ、後に残るほど深刻な混乱を招くような環境を指します。いえ、どんな仕事にも、嫌なことはあるでしょう。でも、有害な仕事の場合、些細な喜びすら見出すことができないのです。いい同僚も何人かはいるけれど、他はみんな、あなたを落ち込ませるばかり。会社のポリシーは抑圧的だし、上司はいちいち細かい。唯一の楽しみといえば、仕事を終えて帰ることぐらい。そんな状況なら、そろそろ対策をした方がよさそうです。辞めるという直接的な方法がいちばんですが、それができないのであれば、少なくとも自分の身だけは守りましょう。
理不尽なことにエネルギーを費やさない。辞めるときは辞める
その必要もないのに有害な環境に耐えている人が多すぎます。仕事が原因でどうしようもない精神的・肉対的ストレスを背負っているのであれば、できるだけ早く去りましょう。私はこれまでに、何の準備もせずに有害な仕事を辞めてしまう人を見てきました。でも、辞めるのであれば、新しい仕事を見つけておくか、何らかのセーフティネットは用意しておいた方がいいと思います。
留まるのであれば、自分を守る必要があります。ただし、根本的な原因が変わらないかぎり、事態が劇的に改善することはありません。根本的原因がすぐに変わると思える状況(嫌な上司またはあなた自身が異動になる)なら、耐えるのもいいかもしれません。その場合でも、変わる変わると言いながらぜんぜん変わらないという事態には要注意です。同じように、有害な仕事に自制心を吸い尽くされて、新しいことを探せなくなってしまわないように気をつけて。次の一歩は、前に進む一歩にしましょう。あるいは、元の場所に戻るとしても、違う壁になるようにするのです。
考えの近い同僚と徒党を組む
すぐに辞められない状況でも、短期的な対策はいくつかあります。何より重要なのが、あなたに味方してくれる同僚の存在。慢性的に全員が裏切り者のような職場では難しいかもしれませんが、少なくとも何人かの味方がいるのであれば、結託して根本的原因に立ち向かうのもいいアイデアです。たとえば、「社内に新しい制度が適用されそうだ」といった耳寄り情報を仕入れたら、それを共有して自分たちの身を守るのです。
これは、高校時代の昼休みと同じです。あなたの味方をしてくれる気の合う仲間か、少なくとも同じ境遇にある仲間とつるむのです。有害な職場環境は、あの頃の環境と不気味なほどによく似ています。だから、同じ方法で対策しましょう。逆に言えば、社内にすでに小さなグループがあるのは、職場環境が悪い証拠。それでも会社に残らざるをえないのであれば、1人でいるよりもグループの仲間入りをした方がよさそうです。仲間のことをよく知ったうえで、グループの中でひっそりと身を潜めているのがベストなこともあるでしょう。
すべてを記録に残す
「有害」というほどでなくても、すべてを記録に残しておくことを検討してください。記録を残すことは、過干渉な上司やミスの濡れ衣を着せる同僚のすべてから身を守れるわけではありませんが、ある程度の防御手段にはなります。以前、ワークダイアリーの有用性について紹介したことがあります。あのときは自己成長のためとして紹介しましたが、ワークダイアリーは今回のようなケースにも有効です。会社で働く人の場合、記録を残すということは、自分が関わっている全プロジェクトに関するメールをひとつ残らず整理して取っておく、会議や電話では必ずメモを取る、誰かの言ったこと・やったことを思い出すときにその人に聞きに行かないなどを意味します。とても骨の折れる作業ですが、自分のアリバイ作りには確実な方法です。
職場での良好な人間関係は、信頼のもとに成り立っています。職場で誰も信頼できないのであれば、自分に頼るしかありません。Evernoteなどのツールを使って書類を保存したり、プロジェクトをきれいに整理したり、受信ボックスをファイルキャビネットのように整理しましょう。あなたが関わる全てのこと・人に、フォルダーとラベルを付けるのです。そうすることで、誰かが意見を変えようとしても、以前のメールや書類を提示することができます。上司に社内規定についての嘘をつかれたら、社内規定が記された文書を見せてやるのです。
上にも書いたように、この方法は誰にでも効果を発揮するわけではありません。この程度の記録を、脅威と感じる相手もいれば、気にも留めない相手もいるでしょう。このテクニックが最も効果的なのは、人事部が根本的問題である場合や、グループ内というよりはグループ間の関係が悪い場合です。記録を付けながら慎重に歩みを進め、すべての戦いに挑むのではなく、選んで戦うようにしましょう。
個人的な問題かもしれないが、原因はあなたではない
「有害な職場環境は個人的な問題ではない」と言いたいところですが、実際は個人的な問題です。上司が自分の無能さのスケープゴートとして、あなたを利用しているのかもしれません。同僚が上司のご機嫌をうかがうために、あなたを標的にしているのかもしれません。あなたが新人であるという理由や、あなたの要旨や服装、もしくはキャリアが脅威になると感じているのかもしれません。なんにせよ、有害な職場環境は、あなたのせいでなくても、個人的な問題になりうることを覚えておいてください。ですから、負の渦に巻き込まれないよう、注意が必要です。
職場のゴシップには、できるだけ加担しないようにしましょう。今のあなたが会社にいる目的は、とにかく仕事を終わらせて帰ることです。だから、いさかいには首を突っ込まないこと。それでも、意に反して巻き込まれてしまった場合、引き下がらないでください。そこで引き下がると、今後ずっと標的にされたり、ミスを押し付けられたりしやすくなります。戦いは選ぶ必要がありますが、個人に対する侮辱や職場でのいじめ行為を見過ごすわけにはいきません。自己主張して、早い段階で彼らの行為を止めておきましょう。
今の職場に来て日が浅く、声を上げるのが怖いという理由で、我慢している人がたくさんいます。仕事を得られただけでラッキーと考えているため、先輩である上司や同僚を恐れてしまうのです。でも、あなたにとってチームが重要であるように、チームにとってあなたも重要でなければなりません。チームに必要とされていないと感じたら、その場を離れるべき。あなたを尊重しない職場に、毎日通い続ける理由はありません。
信念は崩さずに、選択の余地は残す
どんな決断をするにしても、選択の余地は残しておいてください。有害だと思っていたけれど、実は特定のトリガーに敏感になっていただけということもあります。その可能性があるなら、防御力を強化する方法を試してみてください。それでも、環境が本当に有害、あるいは、目を見張るほどに最悪な上司なら、我慢する必要はありません。新しい職場を探しましょう。
最後に、状況を変えることができなくても、学習の機会ととらえることはできるはずです。作家であり起業家でもあるAmy Rees Andersonさんは、Forbesにこう書いています。
他人の言葉や行動は変えられません。変えられるのは、自分の行動と反応だけなのです。これを事実として受け入れることで、心の健康を保つことができるでしょう。他人のネガティブな行動は無視して、自己研鑽に集中してください。そうすれば、ネガティブな環境でも自分を磨くことができ、晴れてそこを離れることになったときに、成長した自分でいられるのです。その成長が、今後の成功に役立つのは明らかです。
そして、現在の最悪の状況を、学習の機会に変えてしまいましょう。人生でいちばん成長するのは、人生でいちばん困難な状況を乗り越えたとき。有害な職場で働いているなら、その経験から得られる教訓に注目してください。それは、見習いたくない上司の性格を見つけることだったり、自分がマネジャーになったら絶対にしたくない上司のミスを知ることだったりします。どんな悪い状況でも、そこから学べる何かがあります。それを利用して、自分を磨きましょう。
彼女はまた、反撃するときは、誠実さを犠牲にせず王道を進むことを勧めています。つまり、「目には目を」と。これには心の底から賛成です。さらに、給料をもらっている限り、仕事にはベストを尽くす義務があるので、積極的に関与することも勧めていますが、その点については、少し意見が違います。なぜなら、毎日のように最悪の気分になってしまうほど職場環境が有害だと感じた時点で、すでに最高の仕事はできていないはずだから。やらなければならないことだけをこなして、努力をが認められないような職場にエネルギーを注ぐのはやめましょう。少し仕事との距離を置いて、余った時間とエネルギーを、もっといい環境探しに充てるのです。それは、別の部署への異動でもよし、転職でもよし。
いずれにしても、たかが仕事です。私たちは、生きるために働いているのであって、働くために生きているのではありません。給料をもらっているからといって、デスクに縛り付けられる必要はないのです。怒りのあまり誠実さを失ってはいけませんが、誰かに踏みにじられるのは勘弁です。有害な職場は、やって来ては去っていきます。そこから何かを学べるのであれば、それは素晴らしいこと。でも、そこに留まっている限り、警戒し、アリバイを作り、嵐がおさまるまで身を潜めておきましょう。それが難しければ、その場を去るのみです。
Alan Henry(原文/訳:堀込泰三)
Title photo by hxdbzxy (Shutterstock) and Ollyy (Shutterstock). Additional photos by R/DV/RS, Hugh Millward, Eric James Sarmiento, Ingrid Taylar, and Martin Fisch.
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