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ヨルダン軍パイロット殺害か 映像が投稿
2月4日 2時35分

ヨルダン軍パイロット殺害か 映像が投稿
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イスラム過激派組織「イスラム国」に拘束されていたヨルダン軍のパイロットが殺害されたとみられる映像がインターネット上に投稿されました。ヨルダンのアブドラ国王は、パイロットが殺害されたことを確認するとともに、「われわれは遺族と共にいる」と述べて、国民に連帯を呼びかけました。

日本時間4日午前2時前、イスラム過激派組織「イスラム国」に拘束されていたヨルダン軍の戦闘機のパイロット、ムアーズ・カサースベさんが殺害されたとみられる映像がインターネット上に投稿されました。映像には、オレンジ色の服を着せられたムアーズさんが銃を持った覆面姿の男たちに囲まれ、その後、火を放たれて殺害される様子が映っています。
これを受けて、ヨルダンの国営テレビが速報でこの映像について伝えるとともに、アブドラ国王の緊急声明を放送し、国王は「大切なパイロットがひきょうなテロリストの手にかかり殺害された」と述べ、ムアーズさんが1か月前の先月3日に殺害されたことを確認しました。そのうえで、アブドラ国王は「われわれは遺族と共にいる」として、国民に連帯を呼びかけました。
これに先立って、ヨルダン政府も「『イスラム国』は残虐な殺人者であり、徹底して報復する」とする声明を出しました。
ムアーズさんは去年12月、アメリカ軍が主導するシリア北部での空爆作戦に参加中に乗っていた戦闘機が墜落し、「イスラム国」に拘束されました。「イスラム国」が後藤健二さんの解放と引き換えにヨルダンで収監されているイラク人の女の死刑囚の釈放を求めてきた際、ヨルダン政府は併せてムアーズさんも解放するよう求めていました。
ヨルダン政府は、ムアーズさんが生存している証拠が示されれば死刑囚を釈放する用意があるとしていましたが、「イスラム国」側はそうした証拠を示さないまま、後藤さんを殺害したとする映像を公開しました。ヨルダンの国民の間では、ムアーズさんの安否を心配する声が高まり、連日、救出を求める集会やデモが行われていました。

「そもそも交渉の意図なし」

「そもそも交渉の意図なし」

中東情勢に詳しい日本エネルギー経済研究所の保坂修司研究理事は「イスラム国側は、そもそもヨルダン政府と交渉するつもりはなく、自分たちの力を見せつけようという意図があったのではないか」と分析しています。そのうえで、投稿された映像で火を使っていることについて、保坂さんは「イスラム教の教えで殺害に火を使うことは、神以外が行ってはならない最も残虐な刑罰とされ、世界中のイスラム教徒から非難されかねない行為だ。イスラム国は支配地域が減少し、求心力を高めるために焦っているのではないか」と指摘しています。

「さらなる動揺を誘おうとしたか」

中東調査会の高岡豊上席研究員は、パイロットの安否を巡ってヨルダン国内で政府への批判も出ていたなか、さらなる動揺を誘おうとしたという見方を示しました。また、ヨルダン政府が、「ムアーズさんは先月3日に殺害された」としていることに関して、高岡さんは「日付が正しければ、解放を巡る交渉には全く応じる気がなかったということになる。一方、先月末くらいまで殺害されていなかったとしたら、水面下で解放を巡るやり取りがあったとは思うが、そうした交渉も長引かせるつもりはなかったということだ」と指摘しました。
そのうえで、「『イスラム国』は、イラクやシリアで軍事的な戦果をあげるのが難しくなっていて、去年12月ごろからは、組織内へのスパイの潜入や、戦闘員の脱走といった情報が増えている。このため、戦果をあげる道を探っていた『イスラム国』にとって、ヨルダンへの揺さぶりが1つの選択肢になったのではないか」と分析しています。

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